安全衛生経費は何パーセントが妥当?見積書で困る前に知っておきたい!ポイントと計算方法

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「この現場の安全衛生経費、結局いくら計上すればいいの?」
見積作成中に、ふと手が止まってしまったことはありませんか?

現場代理人の方から、「安全対策費をこれくらい入れておいて」と頼まれたものの、いざ見積書に反映しようとすると、「そもそも何パーセントが適正なんだろう?」「根拠はどう説明すればいいの?」と悩む事務員さんは多いはずです。

今回は、建設業事務員の視点から、安全衛生経費の考え方と、迷わない計算方法を解説します!
記事のポイント
  • 安全衛生経費とは
  • 安全衛生費の項目は?
  • パーセントで計算していいの?
  • 安全衛生経費の義務化による現場の本音
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)


建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・HP作成・IT土方まで何でもやっています。
小学生の母。事務作業が少しでも楽になる情報を発信しながら、事務代行サポートも行っています。

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目次

安全衛生経費とは?なぜ「ケチってはいけない」のか

  1. 安全衛生費(安全衛生経費)とは?
  2. 法律における「安全衛生費」の位置づけ
  3. 安全衛生費に含まれる具体的な範囲
  4. 安全衛生費は何パーセントで計算する?正しい算出のルール
  5. 【超重要】「法定福利費(15〜17%)」と混ぜるのは絶対NG!
  6. 【実務のリアル】内訳明示がもたらす関係者への影響と「不当な値下げ防止」の効果
  7. 安全衛生経費は「いつから」明示すべき? 法改正後のリアルな現場事情

安全衛生費(安全衛生経費)とは?

現場の安全管理や見積書作成の際に目にする「安全衛生費(安全衛生経費)」。これは、労働者が安全かつ健康に働くことができる環境を整備し、労働災害(事故や病気)を未然に防止するために投入される費用の総称です。

単に「ヘルメットや安全看板を買うための費用」といった目に見える消耗品代だけを指す言葉ではありません。現場に関わるすべての人々の命と健康を守るための、ハードウェア・ソフトウェア両面の対策費用すべてが含まれます

法律における「安全衛生費」の位置づけ

安全衛生費は、単に「会社の裁量で支払う任意の経費」や「削ろうと思えば削れる予備費」ではありません。
以下の法律において、その確保と適切な支払いが厳格に義務付けられています。
  • 労働安全衛生法(第3条)における義務:事業主(会社)は「労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講じる義務」を負うと定められています。そのため、安全対策を講じるための実費(安全衛生費)は、雇用している事業主が全額を負担すべき性質のものです。
  • 建設業法(第19条の3)における位置づけ:労働災害防止対策に要する経費(安全衛生費)は、見積書や請負契約における「通常必要と認められる原価」に含まれるものと明記されています。元請負人と下請負人の双方が適切に負担・確保すべき共同の義務であり、この経費を削った金額で請負契約を結ぶことは法律で禁止されています。

安全衛生費に含まれる具体的な範囲

安全衛生費の対象となる項目は非常に幅広く、現場の施工に直接関わるものから、労働者の健康を管理するものまで多岐にわたります

出典:㈱建設産業振興センター 安全衛生経費確保のためのガイドブック

直接工事費(作業をするために、直接必要な安全設備)

工事を進める上で、作業員が乗ったり、作業したりする「設備そのもの」にかかる費用です。工事が終われば撤去される仮設物ですが、安全対策として不可欠なものがここに入ります
直接工事費(作業をするために、直接必要な安全設備)
  • 高所作業に欠かせない「足場」(枠組足場、単管足場、吊り足場など)
  • 型枠や構造物を支える「支保工」
  • 土砂崩れを防ぐための「土留め」(シートパイル、親杭横矢板など)
  • 機材を載せたり作業員が移動したりする「作業構台(ステージ)」

共通仮設費(現場全体を安全に維持し、第三者を守るための費用)

特定の作業だけでなく、「現場全体」を安全に運営するための設備や、周辺の住民・歩行者(公衆)に迷惑をかけないための対策費用です 。また、作業員全員が身につける保護具などもここに含まれます。
大分類中分類具体的な項目
安全費
(主にガードマンや個人の安全道具)
交通管理交通誘導員(ガードマン)の人件費、カラーコーン、バリケード、工事用看板や回転灯
監視・連絡列車見張員、誘導員、作業指揮者や安全衛生責任者の配置費用、構内電話・無線機
注意喚起各種注意標識、安全掲示板
保護具類ヘルメット、保護メガネ、防じんマスク、耳栓、フルハーネス(墜落制止用器具)、安全靴など
仮設費
(墜落防止や近隣対策などの設備)
墜落・飛来落下防止手すり、開口部(穴)の養生カバー、転落防止用の「安全ネット(落下防護ネット)」など
公衆災害防止(第三者を守る)現場を囲う「仮囲い」、防音パネルやシート、落下物を受ける「朝顔」など
環境・防災・その他消火器、避難誘導灯、作業現場の換気設備、熱中症対策のための冷却設備、敷鉄板など

現場管理費(「人」への安全教育や、健康管理にかかる費用)

機材や設備といったハード面ではなく、現場で働く作業員の「健康維持(衛生)」や「安全に対する知識を高める(教育)」など、ソフト面にかかる費用です。
現場管理費
  • 疾病・衛生対策費: 法律で義務付けられている一般健康診断や、有機溶剤などの特殊健康診断の実施費用
  • 安全訓練研修費:
    – 資格取得のための技能講習や、特別教育の受講料
    – 現場で実施する「新規入場者教育」や「送り出し教育」の費用
    – 避難・救護・消火訓練の実施費用
    – 安全パトロール、安全協議会や安全大会への参加・運営費用

安全衛生費は何パーセントで計算する?正しい算出のルール

それでは、この安全衛生費はどのように計算すればよいのでしょうか。
見積書を作成する際、多くの実務者が頭を悩ませるのが「安全衛生費は一体何パーセントで算出すればいいのか?」という疑問です。

ネット上の記事などでは「パーセントで計算するのは良くない」「基本は積み上げ方式で実費を計算すべきだ」と書かれていることも多く、混乱してしまいますよね。

結論からお伝えすると、「現場の条件に応じて実費を出せるものは『積み上げ計算』を大原則とし、個別の数量化が難しい項目は、率(パーセント)計算』を適用する」というのが、国土交通省の公式ガイドラインでも認められている最も正しいルールだそうです。

国土交通省が推奨する「3つの算出パターン」

国土交通省の「建設業の元請・下請ルールについて」という資料では、安全衛生費を適正に算出するために、現場の状況に合わせて以下の3つの計上方法から選択することを推奨しています。
出典:建設業の元請・下請ルールについて
  • 個別積み上げ計算(現場ごとに実費が計算できる仮設物や人件費など)
  • 経費率(パーセント)計算(現場ごとに細かく切り分けるのが困難なもの)
  • 積み上げ計算 + 経費率計算 の合算(最も推奨される方法)

ステップ1:実費がわかるものは「実費(積み上げ)」で計算する

現場の規模や工事期間に合わせて、金額をはっきりと割り出せる「大型の仮設設備」や「人件費」は、単価から実費を計算します。
  • 対象になるもの:仮囲い、防護柵、交通誘導員(ガードマン)の人件費など

安全衛生経費 = 単価(リース料金等)× 使用期間 × 施工数量

ステップ2:建設技能者にかかる費用(保護具等)を正しく計算する

ヘルメット、フルハーネス、安全靴、空調服などの「保護具等」については、国交省のガイドラインにおいて「積み上げ計算」または「率計算」のいずれか適した方法で算出するよう定められています。

パターンA:【積み上げ計算】(使用する人工と耐用日数から出す場合)

使用する人数(延べ人工数)と、それぞれの保護具の「耐用日数」を用いて、正確に実費を積み上げる方法です。

安全衛生経費 = 延べ人工数 × 単価 ÷ 耐用日数

パターンB:【率計算】(個別工事での積み上げが困難な場合)

個別現場ごとの割り出しが難しい場合、自社の「過去1年間の支出実績データ」をベースに経費率(パーセント)を算出し、今回の「工事金額」または「労務費」に掛けて算出します。
※この方法を使用する場合は、見積書に割合の算出根拠を明確にし、含まれる項目を明示する必要があります。

安全衛生経費率 =1年間の建設技能者用に購入した保護具等の総額 ÷1年間の売上高
安全衛生経費=個別工事の工事金額(値引き・法定福利費加算前)×安全衛生経費率

または

安全衛生経費率 =1年間の建設技能者用に購入した保護具等の総額 ÷ 技能者の年収
安全衛生経費=個別工事の工事金額(値引き・法定福利費加算前)×安全衛生経費率

ステップ3:すべての安全衛生費を「合算」する

最も信頼性が高く、元請や発注者からも文句の出ない見積書は、ステップ1(実費)とステップ2(パーセント計算)の合計額を記載する方法です。

    【超重要】「法定福利費(15〜17%)」と混ぜるのはNG!

    見積書に並べて書くことが多い「法定福利費(社会保険料)」と「安全衛生費(現場の安全費用)」は、目的もパーセントも全くの別物です。
    • 法定福利費の目安:労務費の約15〜17%(法律で定められた社会保険料の会社負担分)
    • 安全衛生費の目安:職種によるが、労務費の約8〜11%程度(とび工:10.23%など、現場の安全を守る実費)
    2025年12月の法改正により、公共工事の入札内訳書には、これら2つの費用をそれぞれ個別の項目として、根拠を持って別々に明記することが義務化されました。

    公共工事については「どちらもまとめて20%くらいでいいや」と大雑把に計算することはできなくなりましたので、必ず別々に計算しましょう。

    【実務のリアル】内訳明示がもたらす関係者への影響と「不当な値下げ防止」の効果

    安全衛生費の「見える化(内訳明示)」は、取引における不当な値下げを防止する効果が期待されています。しかしその一方で、実務の現場では、元請・下請の双方に新たな業務上の負担(面倒さ)が生じているのもリアルな実態です。

    元請(発注側)の本音:ブラックボックスは防げるが、チェックの手間は激増

    これまで曖昧になりがちだった安全費の内訳が「ガードマンに〇万円、ネット設置に〇万円」と明示されることで、実際のコスト根拠が明確になり、納得のいく発注ができるようになります。

    しかしその反面、下請から提出された多種多様な細かい内訳書(確認表や標準見積書)を1枚ずつ精査し、社内の管理システムに再登録する作業は、実務において非常に大きな手間となっています。

    それでも、この確認を怠って下請に不当な低価格を強要すれば、改正建設業法における「著しく低い請負代金での契約(第19条の3)」や、通常必要な額を著しく下回る「見積・変更要求(第20条第6項)」に抵触し、国土交通大臣等から勧告・公表や行政処分(指示処分や営業停止)を受けるリスクがあります。そのため、どんなにチェックが面倒であっても、ルール通りに確認を行うことが自社のコンプライアンスを守る上で「結局は一番安全な防衛策」となっています。

    下請の本音:積算と証明の手間は増えるが、不当な値引きを防ぐ「最強の盾」に

    下請側にとっては、これまで「諸経費一式(〇%)」の1行で済んでいた見積書を、事前に対策項目を確認した上でガードマンの人工や足場の期間を細かく計算し分ける作業が発生するため、事務負担が明らかに増えています。さらに、実際に健康診断を受けさせた実績データや、特別教育の修了証などのエビデンスが必要になるため、どんぶり勘定での「ごまかし」も通用しなくなりました。

    しかし、この事務手間の増加と引き換えに、下請は「不当な値引き要求を完全に防止できる最強の防衛盾」を手に入れることができます

    元請から無茶な値引きを要求された際、「では、このガードマンを減らしますか? それとも転落ネットを外しますか? ただし、それを削ると安全配慮義務違反や建設業法違反になります」と、合理的な積算根拠を盾にして、相手が絶対に「YES」と言えない交渉カードを使えるようになっています。
    事務員たなか

    まぁ、実際はあまり強気に出れない会社も多いですよね…

    安全衛生経費は「いつから」明示すべき? 法改正後のリアルな現場事情

    『公共工事の見積書の内訳明示って、いつから義務になったの?』そんな疑問を耳にしますが、答えは『今すぐ』です。

    国土交通省による改正建設業法の施行に伴い、適正な経費や労務費の内訳明示は、単なる事務処理ではなく「適正な取引を行っていること」を証明するための必須スキルへと変化しました。

    2025年12月以降、国による適正な工期や経費支払いのチェックは厳格化しています。民間工事においては現時点で努力義務にとどまるものの、コンプライアンス意識の高い大手元請企業ほど、すでにこうした書類関係を厳格に整備している印象を受けます。

    総括:安全衛生経費は何パーセントが妥当?見積書で困る前に知っておきたい!ポイントと計算方法

    安全衛生経費をしっかりと計算し、適正に見積もることは、下請負人の正当な権利です。
    最初は発注側・受注側の双方にとって「手続きが増えて面倒だ」と感じる部分もありますが、ルールに沿って「積み上げ」と「パーセント(率)」を正しく使い分けることで、結果的にお互いを不当な値下げ(ダンピング)や法令違反、契約トラブルから守ることに繋がっています。
    2025年12月改正に適合した「根拠のある見積書」をお互いに作り、健全で対等な契約取引を実現しましょう。

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