【今さら聞けない】作業主任者とは?主任技術者との違いから有機溶剤作業主任者廃止の行方まで解説

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「作業主任者」と聞いて、すぐにその役割を説明できる方は意外と少ないかもしれません。
しかし建設現場や製造業など、安全が求められる職場では欠かせない重要な存在です。労働災害を防止するために、法令で配置が義務付けられている場面も多く、知っておくべき基本知識の一つです。
事務員たなか

安全書類作成時にもよく耳にしますよね!


また近年では、「有機溶剤作業主任者が廃止された?」といった情報も話題になっており、誤解の多いテーマでもあります。

この記事では、「作業主任者とは何か?」をわかりやすく解説しつつ、よくある疑問や制度変更の背景についても丁寧にご紹介します。現場に携わる方はもちろん、これから業界に入る方もぜひご覧ください。
記事のポイント
  • 作業主任者とは
  • 主任技術者との違い
  • 作業主任者一覧と各資格・講習の合格率
  • 有機溶剤作業主任者は廃止になる?
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)


建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次

作業主任者についてわかりやすく解説

  1. 作業主任者とは?わかりやすく解説
  2. 主任技術者との違いとは?混同しやすい用語を整理
  3. 作業主任者の資格一覧と合格率
  4. 【作業してはいけない?】作業主任者が必要な作業と仕事内容
  5. 「有機溶剤作業主任者」は廃止された?今後どうなる?

作業主任者とは?わかりやすく解説

「作業主任者」とは、労働安全衛生法に基づき、特定の危険または有害な作業を行う際に、安全を確保するために現場に選任される責任者のことです。厚生労働省が定めた作業区分ごとに、専門的な知識を持ち、一定の技能講習を修了した者や免許を取得した者が作業主任者として認定されます。

たとえば「足場の組立て等作業」や「酸素欠乏危険作業」などは、法律で作業主任者の配置が義務付けられています。これは、現場での事故や健康被害を未然に防ぐための措置であり、作業主任者は“現場の安全リーダー”とも言える存在です。

名前からは「肩書き」的な印象を受けるかもしれませんが、実際には作業現場での安全確保に直結する重要な役割を担っています。
作業主任者の主な役割
  • 作業の直接指揮:作業手順に従って、作業者を現場で具体的に指導・監督する。
  • 使用する機械・保護具等の点検:作業に用いる設備の状態を確認し、正常に作動するかを確認する。
  • 異常時の対応措置:作業中に機械等に異常を認めた場合は、直ちに作業を中止させ、必要な措置を講じる。
  • 作業中の監視と安全管理:作業が安全に行われているか、冶具や工具の使用状況を含め、監視する。
作業主任者の職務は安全衛生規則等に示されていますが、多くは、①作業の直接指揮、②使用する機械・保護具等の点検、③異常時の対応措置、④作業中の監視と安全管理です。

これらの職務を確実に遂行させるため、作業主任者を選任した場合には、その氏名と職務内容を作業場の見やすい場所に掲示するか、腕章や特別な帽子などで識別できるようにすることが義務付けられています
(作業主任者)
第十四条 事業者は、高圧室内作業その他の労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者又は都道府県労働局長の登録を受けた者が行う技能講習を修了した者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該作業の区分に応じて、作業主任者を選任し、その者に当該作業に従事する労働者の指揮その他の厚生労働省令で定める事項を行わせなければならない。
労働安全衛生法 第十四条

主任技術者との違いとは?混同しやすい用語を整理

「作業主任者」と「主任技術者」は、どちらも“現場で重要な役割を担う人”という共通点がありますが、名前も似ており紛らわしいと感じている方も多いのではないでしょうか。

これらふたつは、法的根拠・目的・対象業務が大きく異なります。現場では混同されやすいため、違いをしっかり理解しておくことが大切です。
項目作業主任者主任技術者
法的根拠労働安全衛生法建設業法
主な目的危険・有害作業の安全監督工事全体の品質・工程・安全の管理
資格要件技能講習修了・免許施工管理技士などの国家資格+実務経験
管理範囲特定作業における安全対策・指導現場全体の工程・品質・安全・下請管理
配置の法的義務作業の種類ごとに義務建設業許可業者は義務
作業主任者は、足場の組立てや有機溶剤を扱う作業など、特定の危険・有害作業に対して、安全管理を専門に担う立場にあります。作業手順の指導、保護具の使用状況の確認、設備の点検など、安全確保のための実務的な指導・監督が主な役割です。

一方、主任技術者は“現場監督”に近い立場で、工事全体の品質・工程・安全を総合的に管理します。施工計画の作成や下請業者の指導、発注者や元請会社との調整など、より広い視点で現場全体を動かす責任を担っています。

主任技術者として現場に配置されるには、施工管理技士などの国家資格や一定以上の実務経験が必要です。また、建設業許可を取得している業者には、すべての請負工事現場で主任技術者の配置が義務付けられており、違反した場合は建設業法に基づく指導や行政処分の対象となります。

このように、両者はともに現場の安全と品質を支える重要な存在ですが、管理する範囲や求められる資格も異なります。それぞれの役割を正しく理解し、現場での円滑な連携に活かすことが、トラブルの防止や効率的な施工管理につながります。

 主任技術者について詳しくはコチラ!

作業主任者の資格一覧と合格率

作業主任者は、特定の危険または有害な作業において、安全確保のために配置が義務付けられている資格者です。担当する作業の種類ごとに、必要となる作業主任者の資格も異なります。

どの作業にどの主任者が必要かは、労働安全衛生法施行令第6条に明記されており、現場管理者や事業者はその内容を正しく把握しておく必要があります。

以下に、作業主任者の種類と対象となる作業、講習の合格率などをまとめた一覧表をご紹介します。
作業主任者名称資格種類合格率
高圧室内作業主任者免許80.5%
ガス溶接作業主任者免許73.7%
林業架線作業主任者免許65.4%
ボイラー取扱作業主任者ボイラー技士免許等29.5%~53.8%
エックス線作業主任者免許45.1%
ガンマ線透過写真撮影作業主任者免許71.4%
木材加工用機械作業主任者技能講習ほぼ100%
プレス機械作業主任者技能講習ほぼ100%
乾燥設備作業主任者技能講習95%
コンクリート破砕器作業主任者技能講習ほぼ100%
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習ほぼ100%
ずい道等の掘削等作業主任者技能講習97%
ずい道等の覆工作業主任者技能講習97%
採石のための掘削作業主任者技能講習ほぼ100%
はい作業主任者技能講習ほぼ100%
船内荷役作業主任者技能講習ほぼ100%
型枠支保工組立て等作業主任者技能講習ほぼ100%
足場の組立て等作業主任者技能講習ほぼ100%
建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者技能講習ほぼ100%
鋼橋架設等作業主任者技能講習ほぼ100%
木造建築物の組立て等
作業主任者
技能講習ほぼ100%
コンクリート造の工作物の解体等作業主任者技能講習ほぼ100%
コンクリート橋架設等作業主任者技能講習ほぼ100%
第一種圧力容器取扱作業主任者ボイラー技士免許
or 技能講習
29.5%~53.8%
ほぼ100%
特定化学物質作業主任者技能講習95%
鉛作業主任者技能講習97%
四アルキル鉛等作業主任者技能講習95%
酸素欠乏危険作業主任者(第 1 種)技能講習ほぼ100%
酸素欠乏危険作業主任者(第 2 種)技能講習ほぼ100%
有機溶剤作業主任者技能講習95%
石綿作業主任者技能講習ほぼ100%
なお、表中に記載した免許等の合格率は、令和6年度における一般社団法人 安全衛生技術試験協会の公表資料を参考にしています。

一方、技能講習に関しては合格率が公式に公開されていないため、正確な数値は不明ですが、修了試験の内容は講習で学んだ内容をそのまま確認する形式となっており、講習をきちんと受講すれば、ほぼ100%に近い合格率で修了できると言われています

また、作業主任者の選任が義務付けられる条件や対象作業の詳細については、厚生労働省の公式ホームページにて最新の法令・通達をご確認いただくことをおすすめします。実際の現場での対応において、法的な要件を正確に理解しておくことが、安全管理体制の構築において欠かせません。

【作業してはいけない?】作業主任者が必要な作業と仕事内容

前述したとおり、作業主任者は、すべての現場に必要というわけではありません。労働安全衛生法施行令第6条に明記された、「一定の危険または有害作業」に該当するとされる作業において、配置が義務付けられています。
主な配置義務のある作業例
  • つり足場、張出し足場又は高さが5メートル以上の構造の足場の組立て解体又は変更の作業
  • 特定化学物質等を製造し、又は取り扱う作業
  • 鉛業務に係る作業
  • 四アルキル鉛等業務に係る作業
  • 木材加工用機械を5台以上有する事業場において行う当該機械による作業
作業主任者の選任が義務付けられている作業において、作業主任者を配置しない場合、労働安全衛生法第14条等に違反することとなり、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

また、作業主任者が自ら作業に従事すること自体は禁止されていませんが、作業の直接指揮や安全管理などの職務を適切に遂行することが求められます。作業に従事することで、これらの職務が疎かになるような場合は、法令違反となる可能性もあるので注意しましょう。

「有機溶剤作業主任者」は廃止された?今後どうなる?

「有機溶剤作業主任者が廃止されたらしい」という話を、風の噂で耳にした方もいるかもしれません
しかし結論から言えば、現時点で資格そのものが完全に廃止されたわけではありません。
事務員たなか

何が起こっているのか順番に確認していきましょう。

背景:化学物質規制の大幅見直し

2021年、厚生労働省は「化学物質の自律的な管理」を基本方針とする制度改革を発表しました。
現在国内で輸入・製造・使用されている化学物質は数万種類に上りますが、その中には、危険性や有害性が十分に明らかになっていない物質も多く、年間450件程度発生している労働災害のうち、約8割が法令で規制されていない物質に起因しているという実態があります。
事務員たなか

特化則等に使用していた物質が追加されると、危険性・有害性を十分に確認しないまま規制対象外の物質に変更し、安全性が確保できない状況で使用しているところもあったようです。

このような背景をふまえ、有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)など、個別の化学物質ごとに規制をかける方式から、「危険性・有害性が確認されたすべての物質」に対し、一定の管理基準の達成を求める方式への転換が進められています。

つまり、国が目標水準(管理基準)は示すものの、その達成方法は事業者の裁量に委ねる「自律的管理方式」へと大きく舵を切る内容となりました。

有機溶剤主任者は今後どうなる?

化学物質の自律的な管理については何となくわかったけど、「有機溶剤作業主任者の廃止と関係あるの?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。

化学物質の自律的な管理への移行の一環として、2024年4月からリスクアセスメント対象物を製造・取扱・譲渡提供をする事業場ごとに「化学物質管理者」の選任が義務化され、事業者が主体的にリスクアセスメントを行い、安全管理を構築する制度への移行が始まりました。
出典:厚生労働省「新たな化学物質管理」
この流れの中で、従来は有機溶剤作業主任者が一手に担っていた安全管理業務が、「化学物質管理者」・「保護具着用管理責任者」・「職長」に分担され、より明確に役割責任を分けて管理する方向性が示され、結果的に「有機溶剤作業主任者」が廃止されるのでは?といった議論がされているわけです。

実際、2025年時点では、制度の廃止や技能講習の終了は、正式に決まっていません
制度の完全な移行や講習の統廃合については、2026年を目途に検討が進められている段階です。
今後の議論の結果によっては、「有機溶剤作業主任者」という名称や、そのための技能講習が廃止・再編される可能性もありますので、現行制度の理解と遵守を継続しつつ、新制度の動向にも注目しておくことが大切です。

総括:【今さら聞けない】作業主任者とは?主任技術者との違いから有機溶剤作業主任者廃止の行方まで解説

作業主任者とは、特定の危険・有害作業に対して安全を確保するため、現場に配置が義務付けられている“安全のリーダー”です。労働安全衛生法に基づき、足場の組立てや有機溶剤の取扱いなど、一定の作業では法令により選任が求められます。

一方で、現場全体の管理を担う主任技術者とは、その役割も必要な資格も大きく異なります。主任技術者には国家資格や実務経験が必要で、建設業許可業者ではすべての工事現場に配置が義務づけられていますので、それぞれの役割について正しい理解が必要です。

また、「有機溶剤作業主任者の廃止」といった情報も見られますが、正確には制度の見直し段階で正式に廃止が決定されたわけではありません。2026年を目途に化学物質の取り扱い制度が大きく変わる可能性もありますので、注視していきましょう。

いずれにせよ、現場での事故防止と円滑な施工には、作業主任者の適切な配置と役割理解が不可欠です。制度の変化にも柔軟に対応しながら、安全で確実な現場運営を目指していきましょう。

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