技能者登録数155万人を超え、徐々に浸透してきた建設キャリアアップシステム(CCUS)。しかし能力評価について詳しく知っている方は少ないのではないでしょうか。
CCUSは、経験や資格に応じた能力評価制度と連動することにより、キャリアアップカードがレベルアップしていく仕組みです。なかでもゴールドカードは、高い技術力を持つ技能者の証とされ、待遇アップや昇給につながる重要な指標となることもあります。
とはいえ、「ゴールドカードを取るとどんなメリットがあるの?」「取得するための条件は?」と疑問を持つ方も多いでしょう。本記事では、CCUSのゴールドカードの特徴や取得方法、メリットを分かりやすく解説します。
記事のポイント
- 建設キャリアアップシステムの能力評価とは
- ゴールドカードのメリット-技能者側・事業者側-
- ゴールドカードの取得方法
- 建設キャリアアップシステムや能力評価は無駄なのか?
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
建設キャリアアップシステムのゴールドカードとは

- 建設キャリアアップシステムの能力評価とは?
- ゴールドカードのメリットとは?
- CCUSが「無駄」と言われる理由
- 建設キャリアアップシステムの本当の狙いとは?
建設キャリアアップシステムの能力評価とは?
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の保有資格や社会保険加入状況、現場での就業履歴を登録・蓄積し、技能者の経歴やスキルを一元管理する制度です。登録情報を活用した「能力評価制度」と連動することで、客観的なデータを基に適正な評価を受けられ、技能者の処遇改善やキャリアパスの明確化につながっています。これらの仕組みを通じて、業界全体の適正な評価と労働環境の向上を目指しています。
能力評価制度では、登録された技能者の経験年数や取得資格に基づき、評価が行われます。評価結果に応じて、「キャリアアップカード」の色が変わる仕組みとなっており、レベル1=ホワイト、レベル2=ブルー、レベル3=シルバー、レベル=4ゴールドの順にランクアップしていきます。
特にゴールドカードは、10年以上の実務経験を持ち、高度な技術を有する技能者であることを示すものです。これにより、現場での役割が広がるだけでなく、昇給や待遇向上にもつながる可能性が高まります。

CCUSの能力評価は、企業の経営事項審査にも影響します。例えば、レベル3やレベル4の技能者数に応じた評点の加算や、技能者のスキルアップを促進する取り組みに対する評価が行われます。
このように、CCUSは技能者のキャリア形成だけでなく、企業の競争力向上にもつながる制度として、ますます重要性を増しています。
ゴールドカードのメリットとは?

建設キャリアアップシステムのゴールドカードは、高い技術力と豊富な経験を持つ技能者の証となる重要な資格です。取得することで、技能者個人のキャリアや収入に大きく影響を与えるだけでなく、企業にとっても競争力向上につながるメリットがあります。
ここでは、ゴールドカードを取得することで得られる具体的なメリットを、技能者と事業者それぞれの視点から解説します。
技能者のメリット

技能者のメリット
- 賃金アップと適正な評価
- キャリアの可視化と転職時のアピール
ゴールドカードを取得することで、技能者は自身のスキルが正式に評価され、待遇やキャリアアップのチャンスが広がります。
まず、最も大きなメリットは賃金アップです。ゴールドカードは、長年の実務経験と高度な技能を持つことを証明するため、企業側もその価値を認めざるを得ません。
実際に、ゴールドカード取得後に給与が上がったケースは多く、国土交通省が公表している建設キャリアアップシステムのレベル別年収によると、レベル1からレベル4へと上がることで、年収が約200万~500万円増加するという指標が示されています。この試算は、公共工事設計労務単価の算定と同等に必要な費用を反映し、週休2日を確保した労働日数をもとに算出されたものであり、技能者の経験や資格が適正に評価された場合の賃金水準を示しています。
さらに、大手建設企業の中には、CCUSのレベル判定を自社の評価制度に組み込み、技能者の能力や経験に応じた賃金体系や手当を設定しているケースもあります。これにより、ゴールドカードを取得した技能者は、企業内での評価が高まり、さらなる収入増加やキャリアアップの機会が広がる可能性があります。

転職や独立の際のアピールポイントとしての価値もあります。ゴールドカードを持っていることは、企業にとって「即戦力」として認められる要素となるため、転職市場でも評価されやすくなります。また、将来的に独立を考えている場合でも、自分の実績を証明する手段として信頼性が高く、元請け企業や取引先の信頼を得やすくなるのが特徴です。
こうした点から、ゴールドカードの取得は単なる資格ではなく、技能者のキャリア全体を底上げする大きな要素となっています。
事業者のメリット

事業者のメリット
- 入札評価の加点と競争力向上
- 施工能力のアピールと受注拡大
- 出面管理の効率化
- 優秀な人材の確保と育成
企業にとっても、ゴールドカードを持つ技能者が増えることは、業績や競争力の向上につながる大きなメリットがあります。
経営事項審査では、ゴールドカード保有者の数が【技術職員数】の評価ポイントとして反映されます。加えて、企業内の技能者が一定の割合でレベルアップすると、【W10:知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況】において加点が得られるため、企業全体の評価が向上し、より有利な条件での入札が可能になります。
また、ゴールドカードを持つ技能者が多い企業は、施工能力の高さを証明できるため、元請け企業や発注者からの信頼を得やすくなります。これは、民間工事でも同様で、技術力の高い技能者を確保していることが、他社との差別化につながります。その結果、受注機会の拡大や、より単価の高い案件を獲得する可能性が高まるでしょう。
さらに、企業にとっては人材育成の効率化も大きなメリットです。ゴールドカードを取得することで、技能者のスキルや経験が明確になり、適正な人材配置が可能になります。これにより、各技能者の得意分野を活かした業務割り振りができ、作業の効率化や現場の生産性向上につながります。
ゴールドカードの取得方法

ゴールドカードを取得するには、CCUSに技能者登録を行い、能力評価を受ける必要があります。技能者登録で、「簡易型登録」を選択した方は能力評価を受けることができませんのでご注意ください。
なお、能力評価はCCUSを運営している建設業振興基金が直接行うのではなく、各職種ごとの評価実施団体が主となって実施しています。そのため、申請の際は、自分の職種がどの団体で評価されるのかを確認し、適切な申請先に問い合わせることが重要です。詳しくは、国土交通省が提示している「CCUS職種コードと能力評価対象職種の対応表(外部リンク)」を参照してください。
ゴールドカードの主な取得条件
- 10年以上(2,150日以上)の建設業での就業経験
- 登録基幹技能者、その他職種ごとに定められたレベル2やレベル3に該当する資格を取得している
- 3年以上(645日以上)の職長経験
職種毎に細かい資格条件等は異なりますが、おおまかには10年以上の実務経験・高度な資格保有・3年以上の職長経験が必要とされています。実務経験や職長経験は、事業者の証明によって行える期限が決められていますので、早めの対応をおすすめします。
ゴールドカードを取得できるのは、CCUSで定められた42の分野(2024年2月現在)に該当する技能者です。電気工事、左官、鉄筋、型枠、とび、防水施工、建築大工、解体工事、計装工事等が該当し、現在対象外の分野も追加の検討を進めているようです。

CCUSで登録した職種コード(小分類)によって、能力評価における分野が変わります。詳しくは、国土交通省の能力評価対象職種一覧をご確認ください。
キャリアアップシステムのカード色変更とは?スムーズにレベルアップするコツ


建設キャリアアップシステムのキャリアアップカードは、技能者の経験や資格に応じて4段階のレベルに分かれており、ホワイト(登録のみ)からゴールド(職長・管理者クラス)へとステップアップします。
カードの色を変更(レベルアップ)するには、上述した通り、能力評価が必要です。
レベル | カードの色 | どんな人? |
レベル1 | 白 | 基本登録のみの初級技能者 |
レベル2 | 青 | 一定の実務経験を持つ中堅技能者 |
レベル3 | シルバー | 職長として現場に従事できる中級技術者 |
レベル4 | ゴールド | 高度なマネジメント能力を有する職長・管理者クラス |
CCUSでは、複数の職種で能力評価を受けることが可能ですが、カードは1枚のみ発行され、最も高いレベルの色が適用されます。そのため、評価を受ける順番によっては無駄な費用が発生する可能性があります。
能力評価の申請には手数料が必要で、評価手数料3,000円+カード発行手数料1,000円=合計4,000円がかかりますが、最初にレベルの高い分野で評価を受け、その後に別の分野を申請すれば、追加のカード発行手数料を節約できます。例えば、先にレベル4の評価を受け、その後にレベル2の評価を受けた場合、カードの色はすでにゴールドのため、新たなカード発行費用は不要というわけです。
逆に、先にレベル2の評価を受けてからレベル4の評価を受けると、カード発行手数料1,000円が2回分かかってしまい、余計な費用が発生することになります。



評価の順序を工夫することで、無駄なコストを抑えることができます。
建設キャリアアップシステムや能力評価は無駄なのか?
一部の技能者からは、「CCUSも能力評価も無駄では?」という声が上がっています。登録や更新に手間がかかりすぎる、企業によってはまだ十分に活用されていない、制度が発展途上でメリットを感じにくいという意見も多いです。弊社でも数年間CCUSを運用していますが、少しずつ普及してきたとはいえ、実際に活用されているのは全工事のごく一部にとどまっています。
しかし、CCUSは義務化をうたっている制度のため、今後業界にどのような影響を与えるかは未知数です。そのため、「メリットを感じるから登録する」というよりも、「今後どうなるか分からないから、とりあえず登録しておいた方が良い」という認識が一般的かもしれません。
もちろん、CCUSが広く普及することで、技能者の適正な評価や待遇改善が進むことも期待されています。
CCUSは本当に無駄なのか?というテーマについては、関連記事で詳しく解説しています。無駄と言われる理由や、CCUSの本当の目的について、私見も交えて紹介しているので、ぜひご覧ください。
無駄なのか?という疑問について、徹底解説記事はコチラ!
総括:【CCUS】建設キャリアアップシステムのゴールドカードのメリットとは?技能者・事業者双方の利点を解説!
建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の経験や資格を可視化し、適正な評価を受けられる環境を整える制度です。特にゴールドカードは、技能者のキャリアを証明し、賃金アップや昇進のチャンスを広げる重要なステップとなります。企業にとっても、経営事項審査の評点向上や施工体制の強化に役立つため、今後さらに普及が進むことが予想されます。
登録や更新の手間を負担に感じる声もありますが、将来的なことを考えると、早めの登録と適切なレベル判定の取得が有利になるでしょう。CCUSを活用し、自身のスキルやキャリアを最大限に活かしていくことが、今後の建設業界での成長につながるはずです。
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