【原則必要?】随時契約で違法にならないために!見積合わせの重要性と随時契約の概要

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一見すると「自由に業者を選べる便利な契約方法」に見える随意契約。
しかし、公共事業の現場では例外的な扱いであり、運用を誤ると違法とされるリスクすら伴います。

特に注意すべきは、「見積合わせ」を行わずに契約を進めてしまうケース。手続きを怠ることで、透明性や公平性が欠けたものとみなされ、契約の有効性が問われる可能性もあります。

この記事では、随意契約の基本的な位置づけから、見積合わせの実務上の重要性、さらに注意すべきポイントまでを、実例や法令を交えてわかりやすく解説します。自治体の契約担当者はもちろん、公共調達に関わる方や、取引先となる製造業・建設業などの事業者にとっても、押さえておきたいポイントを網羅しています。ぜひ参考にしてください。
記事のポイント
  • 随時規約とは
  • 随時契約を行うための条件
  • 見積合わせの重要性
  • 随時契約で違法にならないために
  • 随時契約の具体例
  • プロポーザル方式とは
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)


建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次

【見積合わせは必要?】随時契約について

  1. 随意契約とは?|基本と地方自治法での位置づけ
  2. 「予定価格が一定額を超えない」の一定額とは?随意契約の金額上限と注意点
  3. 随意契約が認められる理由とその具体例
  4. 【原則必要!】随意契約を行うときは複数社の見積合わせを
  5. 随意契約が「違法」とされるケースとリスク
  6. プロポーザル方式とは?随意契約との違い&関係性

随意契約とは?|基本と地方自治法での位置づけ

随意契約とは、本来行われるべき「競争入札」を省略し、発注者が特定の業者を指名して直接契約を結ぶ方式を指します。簡単に言えば「特定の相手と直接契約する方法」ですが、もちろん発注者が自由に業者を選べるわけではありません。

特に、公共工事や地方自治体の業務委託など、公費が使われる事業では、原則として「一般競争入札」や「指名競争入札」が求められており、随意契約はあくまで“例外的な手続き”として認められるにすぎません
そのため、契約理由の明確化や公表、適切な手続きを行うことが強く求められます。

法的には、地方公営企業法施行令第21条の13および、地方自治法施行令第167条の2で規定されています。下記は、法令をかみ砕いた9つの条件です。
下記に該当する場合は、例外として随時契約を行うことができる
  1. 売買,貸借,請負その他の契約でその予定価格が一定額を超えないものをするとき。
  2. 不動産の買入れ又は借入れ,普通地方公共団体が必要とする物品の製造,修理,加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。
  3. 特定の施設等から物品を買入れ又は役務の提供を受ける契約をするとき。
  4. 新規事業分野のベンチャー企業から新商品を買い入れる契約をするとき。
  5. 緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
  6. 競争入札に付することが不利と認められるとき。
  7. 時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。
  8. 競争入札に付し入札者がないとき,又は再度の入札に付し落札者がないとき。
  9. 落札者が契約を締結しないとき。
このように、随意契約は「例外」として、法令で厳格に要件が定められています。特に公共機関では、「なぜ随意契約にしたのか」という合理的な理由づけが常に求められます。

(随意契約)
第二十一条の十三 随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。
一 売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあつては、予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第一の上欄に掲げる契約の種類に応じ同表の下欄に定める額の範囲内において管理規程で定める額を超えないものをするとき。
二 不動産の買入れ又は借入れ、地方公営企業が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき。

・・・・・

引用:e-gov 地方公営企業法施行令 第二十一条の十三 
事務員たなか

実際の法令について詳しくは、
引用元のリンクをご確認ください。

「予定価格が一定額を超えない」の一定額とは?随意契約の金額上限と注意点

地方自治法施行令第167条の2第1項第1号に基づき、随意契約が可能な「予定価格が一定額を超えないもの」の金額上限は、契約の種類や地方公共団体の規則によって異なります。​

例えば、大阪府大阪市、埼玉県上尾市の「随意契約ガイドライン」では、以下のような上限が定められています
契約の種類・内容大阪府大阪市
予定価格(税込)
埼玉県上尾市
予定価格(税込)
工事又は製造の請負
(建設工事・印刷製本等)
250万円以下200万円以下
財産の買入れ
(不動産、動産の買い入れ)
160万円以下150万円以下
物件の借入れ
(不動産、動産の借り入れ)
80万円以下80万円以下
財産の売払い
(不動産、動産の売り払い)
50万円以下50万円以下
物件の貸付け
(不動産、動産の貸付)
30万円以下30万円以下
上記以外のもの
(清掃・警備業務等)
10万円以下100万円以下

※引用:大阪市「大阪市随時契約ガイドライン」上尾市「上尾市随時契約ガイドライン」

このように、随意契約が可能な予定価格の上限は、地方公共団体ごとに異なるため、各自治体の財務規則や契約規則を確認することが重要です。不明点がある場合は、各自治体の契約担当部署に確認することをお勧めします。
事務員たなか

物価高の影響を受け、
金額上限が上がっている自治体も多いようなので
是非ご確認ください。

随意契約が認められる理由とその具体例

出典:品川区「地方自治法施行令第167条の2第1項第3号による随意契約 令和6年度実績」
随意契約は、適切な理由がある場合に限り、例外的に認められる契約方式です。
たとえば、次のようなケースが代表的です。
随時契約が認められるケース例
  • 予定価格が少額のため競争入札を行わない(例:物品購入で130万円以下)
  • 既存システムの継続保守(別業者では対応困難な場合)
  • 災害発生に伴う応急復旧工事(緊急性により入札手続きが困難)
  • 指定管理者との施設運営契約(継続性が必要なため)
なお、随意契約を実施する際は、理由を明確に記録し、適切な手続きを踏む必要があります。地方自治体ごとに「随意契約理由一覧表」「随意契約理由書」などを作成して公表しているため、実際にどのような理由で認められているのか、確認してみると参考になります。各自治体が公表している「随意契約理由一覧」「随意契約理由書」等から、実際にどのような場面で使われているかが把握することができます

【原則必要!】随意契約を行うときは複数社の見積合わせを

随意契約は、競争入札を経ずに特定の業者と直接契約を締結できる制度ですが、その性質上、恣意的な選定と捉えられるリスクがあります。そのため、透明性と公正性を担保する手段として「見積合わせ」が行われます

見積合わせとは、契約前に複数の業者から見積書を徴収し、価格や条件の妥当性を比較・検討するプロセスです。これにより、特定業者との契約であっても合理的な理由を持って決定されたことを示すことができます。

また、多くの自治体では、「市内事業者の優先」や「中小企業への配慮」といった地域経済への貢献を目的とした方針を掲げており、見積先の選定においてもその影響が強く反映されます。特に市内企業を優先することで、災害時の即応性の確保や地元雇用の維持、経済循環の促進といった副次的な効果が期待されます。

随意契約であっても、見積合わせを通じて競争性と公平性を担保することが、公共契約における信頼性の確保につながります。形式的な実施にとどまらず、実質的な比較・検証を行うことが重要です。

随意契約が「違法」とされるケースとリスク

随意契約は、本来例外的にのみ認められる契約方式であり、法的根拠や手続きを欠いた契約は「違法」とみなされる可能性があります。地方自治法施行令等で定められた9つの要件に該当しないにもかかわらず随意契約を行った場合、契約そのものが無効とされるので注意してください。

また、手続きに問題があるだけでなく、社会的な視点から見た「不透明さ」も大きなリスクです。なぜその事業者が選ばれたのか、選定理由が曖昧なままでは、癒着や贈収賄などの不正を疑われることになります。過去には、特定の業者と繰り返し契約を結ぶ中で、担当職員と業者の間に癒着が発覚した事例も存在します。

さらに、随意契約が多くなると、企業の健全な競争が阻害されるという問題もあります。競争が行われなければ、事業の質の低下やコスト高を招く可能性もあります。

また、実績の少ない新規参入企業にとっては門戸が狭くなり、公平性が損なわれることにもつながります。

このように、随意契約の不適切な運用は、単なる手続き違反にとどまらず、行政不信・公正性の欠如・市場原理の阻害といった、深刻な問題を引き起こしかねません。

プロポーザル方式とは?随意契約との違い&関係性

随意契約に関連して、よく耳にするのが「プロポーザル方式」という言葉です。

プロポーザル方式とは、業務内容に対する企画提案を事業者に求め、その提案内容を比較・評価して最も適した業者を選定する契約方式です。価格だけでなく、技術力・提案力・実績などを総合的に審査し、契約の相手方を決定する点が特徴です。

通常の一般競争入札では「最も低い価格を提示した業者」が落札者となるため、どうしても価格が重視されます。しかし、プロポーザル方式では価格だけでなく、提案の中身そのものに重点を置いた選定が行われます。設計業務や調査・コンサルティングなど、成果物の質が重視される分野で多く採用されています。

さて、ここで注意したいのが、プロポーザル方式と随意契約の関係です。
一見すると別の仕組みのように思われがちですが、プロポーザル方式は随意契約の一形態として位置づけられています

たとえば、公募型プロポーザル方式は、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号に定められた「その性質または目的が競争入札に適しないもの」に該当する場合に適用されます。つまり、価格重視の競争入札を行わず、最も優れた提案をした事業者と契約を結ぶ=随意契約という位置づけになるのです。

このように、プロポーザル方式は「質の高い成果を確保するための合理的な選定方法」でありつつも、随意契約の枠組みで行われる契約方式であることから、運用にはより一層の慎重さと透明性が求められます。選定基準の明示、評価委員の適切な選任、選定理由の公表といったプロセスを通じて、公正な事業者選定が行われることが重要です。

総括:【原則必要?】随時契約で違法にならないために!見積合わせの重要性と随時契約の概要

随意契約は、本来「競争入札を行わない例外的な契約方法」として、条件に該当する場合に限り認められます。合理的な理由と適正な手続きが求められ、契約内容・業者選定の公表義務も課されています。

近年では、自治体が随意契約の内容や理由を公表するなど、透明性の確保が一層重視されています。制度を適切に理解し、公平性・公正性を保ちながら事業者選定を行うことが、行政にとっても、事業者にとっても重要なポイントです。

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