【建設業の熱中症対策】WBGT値31℃・35℃は作業中止レベル?!暑さ指数の計算方法や安全管理を徹底解説!

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夏の建設現場では、作業員の命を守るために「暑さ指数(WBGT)」の管理が欠かせません。しかし、暑さ指数についてよくわからないという方も多いのではないでしょうか?
WBGTが31℃を超える状況では、熱中症の危険性が飛躍的に高まり、対策を怠れば労災にもつながりかねません。

この記事では、「暑さ指数とは何か」から、建設業での測定・対応方法、測定器の選び方まで、現場に役立つ情報をわかりやすくまとめています。実務に即した内容で、すぐに現場に活かせる内容になっていますので是非ご活用ください。
記事のポイント
  • 暑さ指数とは
  • WGBTとは
  • WGBTの計算方法
  • 作業中止レベルはどれくらい?
  • 労災リスクを減らすために重要な記録
  • おすすめの熱中症対策グッズ
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)


建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次

【建設現場の完全ガイド】WBGTの基礎から作業中止基準まで

  1. 暑さ指数(WBGT)とは?建設業でなぜ重要なのか
  2. 暑さ指数の31℃はどれだけ危険?数値別リスク解説
  3. 暑さ指数の計算方法とは?専用測定器やWBGT値早見表を活用してもOK
  4. 暑さ指数はいつ測る?タイミングの正解とは
  5. 【35℃は中止レベル】暑さ指数と作業中止の基準は?建設業における対応例
  6. プロポーザル方式とは?随意契約との違い&関係性

暑さ指数(WBGT)とは?建設業でなぜ重要なのか

「暑さ指数(WBGT)」とは、Wet Bulb Globe Temperatureの略で、日本語では「湿球黒球温度」と訳されます。これは単なる気温とは異なり、人体が受ける暑さの影響を総合的に表す指標です。気温に加え、「湿度」「輻射熱(日差しの強さ)」「風通し」などを含めて計算されるため、体感的な暑さをより正確に反映できます。

建設業の現場では、炎天下のコンクリート舗装、鉄骨構造物の施工など、輻射熱を強く受ける作業が多く、湿度も高くなりがちです。こうした現場では、気温がそれほど高くなくても、暑さ指数が高まることがあります。

厚生労働省や環境省でも、熱中症対策として暑さ指数の測定を推奨しており、多くの元請企業ではWBGTの測定と記録が「重要視」されています

実際、厚労省が公表した2024年の熱中症による死亡災害30件のうち、26件でWBGTの把握が確認できなかったという報告もあります。このことからも、WBGTの測定を行わないまま作業を続けることが、熱中症リスクを見落とす要因となり得ることがわかります。
※参考:厚生労働省「職場でおこる熱中症 2024年の熱中症による死亡災害の事例」

WBGTは単なる数字ではなく、作業継続の可否・水分補給の判断・装備の見直しなど、命を守るための判断材料です。現場では「気温」ではなく「暑さ指数」で動く意識が必要です。
事務員たなか

WGBTも単位℃で表します。

暑さ指数の31℃はどれだけ危険?数値別リスク解説

建設現場での暑さ指数(WBGT)の管理において、特に注意すべき数値が31℃です。この数値は、熱中症の発生リスクが極めて高い状態を示しており、実際に日本生気象学会の指針でも「31℃以上は原則として外出をなるべく避けるレベル」とされています。

この31℃がどれほど危険な数値なのか。WBGTは以下のような基準で分類されています。
WBGT による温度基準域注意すべき生活活動の目安注意事項
危険
31℃以上
すべての生活活動でおこる危険性高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい.外出はなるべく避け,涼しい室内に移動する.
厳重警戒
28℃以上 31℃未満
外出時は炎天下を避け,室内では室温の上昇に注意する.
警戒
25℃以上 28℃未満
中等度以上の生活活動でおこる危険性運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる.
注意
25℃未満
強い生活活動でおこる危険性一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある.
出典:日本生気象学会 日常生活における熱中症予防指針 Ver.4, 2022「日常生活における熱中症予防指針」 2025.5.1
暑さ指数(WBGT)の数値の中でも、31℃は特に注意すべき危険なラインなのです。
31℃はすでに作業を中止すべき水準であり、35℃に達する頃には、たとえ日陰で安静にしていたとしても熱中症を発症するリスクが高く、作業継続は極めて危険と判断できるでしょう。

そもそもこの基準は、日常生活を前提としたものです。したがって、重労働や屋外作業を伴う建設現場では、より慎重な対応が必要になります。

実際、厚生労働省がまとめた2024年の熱中症による死亡災害30件のWBGTの範囲は、27〜33℃となっています。つまり、31℃を超えた状態での作業は、死亡災害が起こる可能性がある“危険域”に入っていると見て間違いないでしょう。※参考:厚生労働省「職場でおこる熱中症 2024年の熱中症による死亡災害の事例」

ただし、現場の実情はさまざまで、暑さ指数が31℃を超えていても、空調服の着用や30分ごとの休憩を条件に作業を継続するケースも多く見られます。この判断は、元請企業の方針や現場管理者の裁量によって分かれる部分です。

このように、暑さ指数(WBGT)はあくまで目安であり、作業員の体調や年齢、持病の有無、熱に順化しているか、着用している服装などによっても熱中症のリスクは変化します。たとえWBGTが29であっても、個人差や現場環境によっては実質的に「危険水準」となっている場合もありますので、慎重に判断してください。

暑さ指数の計算方法とは?専用測定器やWBGT値早見表を活用してもOK

「暑さ指数(WBGT)」は、熱中症の発症に深く関わる温熱環境要素(気温・湿度・気流・輻射熱)を総合的に評価するための指標であることがわかりました。それでは、そのWBGTはどのような計算で算出されるのでしょうか?

実際のWBGTは、3つの要素をもとに算出され、以下の計算式に基づいて算出されます。
(国際標準規格 ISO 7243:2017/日本産業規格 JIS Z8504:2021 に準拠)
WBGT算出の計算式
  • 日射がある場合:
     WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
  • 日射がない場合:
     WBGT = 0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
  • 湿球温度(自然湿球温度):蒸発による冷却効果を反映し、湿度の影響を強く受けます。
  • 黒球温度:太陽光や照り返しなど、周囲からの輻射熱を含む温度です。
  • 乾球温度:いわゆる通常の気温で、温度計で測れるものです。
このように、WBGTは湿球温度(湿度と蒸発冷却の影響)を主に、黒球温度(放射熱)や乾球温度(気温)も加味した方法で求められます。乾湿計や黒球温度計を使用するのが基本とされています。

しかし、これら3要素をそれぞれ測定し、計算式で算出するのは現実的ではなく、現在ではWBGT測定器の使用が一般的です。特に建設業などの屋外現場では、コンパクトで持ち運びやすく、リアルタイムで表示されるタイプが多く使われています。

また、WBGTと気温・相対湿度の関係を示す簡易推定表もあり、測定器がない場合でも「おおよそのWBGT値」を把握する参考になります。
出典:厚生労働省「職場における熱中症予防対策」
たとえば、気温30℃・湿度70%でWBGTが約29℃程度になるといった目安が示されています。

ただし、この推定図はあくまで目安であり、風の影響や直射日光など、実際の環境を反映しきれないため、正確な管理にはやはり専用測定器の使用が良いでしょう。

東京都など都市部では、夏の平均湿度が70〜80%に達する日が多く、気温が30℃を超えるとWBGT値も一気に「厳重警戒」や「危険」レベルに達する可能性が高まります。近年は地球温暖化の影響で猛暑日が続くことも多く、もはや「たまたま暑い日がある」では済まされない状況です。そうした背景からも、現場では正確なWBGT測定と、日々の数値の記録・管理がますます重要となっています。

暑さ指数はいつ測る?タイミングの正解とは

暑さ指数(WBGT)は、朝だけでなく、正午前後や作業中にも測定するのが理想的です。特に気温・湿度・輻射熱が同時に高まる昼前後は、WBGTが急上昇する傾向があります。

また、建設現場のように環境差が大きい場所では、日向・日陰・足場上など、作業エリアごとに測定することも重要です。同じ現場でもWBGTが1〜2℃以上異なる場合もあります。

WBGTは「測定→判断→記録」が基本。1日3回(朝・昼・午後)の測定を習慣化し、数値を安全書類にも記録しておくことが、熱中症予防と万が一の備えにつながります。

【35℃は中止レベル】暑さ指数と作業中止の基準は?建設業における対応例

環境省が示す「休憩・作業中止の目安」は、現場ルールを考える上で非常に参考になります。これらの基準は、暑熱順化できている人とできていない人で基準値が分かれています。
出典:環境省「熱中症環境保健マニュアル 2022」
事務員たなか

そしてこの「基準値」をもとに、WBGTがどれだけ超過したかに応じて休憩や作業中止の判断が求められています。

  • WBGTが基準値程度~1程度超過:1時間当たり15分以上の休憩
  • WBGTが2℃程度超過:30分以上の休憩
  • WBGTが3℃程度超過:45分以上の休憩
  • WBGTが4℃以上超過:作業中止
たとえば「中等度の作業」であれば、暑熱順化できている人の基準値は28℃なので、WBGTが32℃を超えた時点で“作業中止レベル”に達することになります。安静にしていた場合でも、35℃を超えると作業中止レベルに達する為、これが35℃が危険ラインと言われる理由のひとつとなっています。
※参考:環境省「熱中症環境保健マニュアル 2022」


こうした中で、大成建設でもWBGT値に基づいた独自の熱中症対策を実施しています。なお、同社では明確な「作業中止基準」の数値は公表されていませんが、現場のWBGT値に応じた柔軟な対応が取られています。
作業環境の改善策
  • 送風機の設置
  • ミスト冷却装置の活用
  • 空調ファン付き作業服の配布
さらに、作業員の健康管理にも配慮し、以下のような取り組みを行っています。
作業員の健康管理
  • 暑さに慣れていない作業員には、7日間程度を目安に段階的に作業に慣らす「暑熱順化」を実施
  • 作業前の水分・塩分摂取の推奨
  • 作業中もこまめな補給を徹底
これらの取り組みは、国立環境研究所の「気候変動適応情報プラットフォーム」でも事例として紹介されているので、是非参考になさってください。
参考:気候変動適応情報プラットフォーム「夏季の熱中症対策」

このように、業界標準のガイドラインと、現場ごとの判断を柔軟に組み合わせた運用が求められています。
暑さ指数は単なる数字ではなく、作業の可否や命を守る判断に直結する“現場の生命線”です。事例に学びながら、自社現場に即したルールの策定と運用が何より重要です。

もしもの労災リスクに備える!暑さ指数(WGBT)を記録する重要性

WBGTの測定とあわせて記録を残すことは、労災リスク管理において非常に重要です。熱中症による搬送や労災申請が発生した際、「当時の暑さ指数を記録していたかどうか」が問われるケースもあり、安全管理体制の証明材料になります。

近年では、日報やKYシートなどにWBGT値をを記録する現場も増え、作業中止や休憩判断の根拠として活用されています。冒頭でも述べましたが、「いつ、どこで、何度だったか」という客観的な記録があることで、元請や関係機関への説明もしやすくなります。

また、記録を習慣化することで現場全体の意識も高まり、熱中症予防の精度も向上します。
このように、WBGTは「測るだけ」で終わらせず、記録する・活かす・証明できる状態にしておくことが、労災リスクを回避し、安全文化を根づかせるための大きな一歩となります。

WBGTを測って備える!建設現場向け暑さ対策おすすめグッズ

  1. 【現場向け】おすすめ測定器
  2. 暑さ対策グッズと服装の工夫
  3. その他、現場で活躍する熱中症対策グッズ

【現場向け】おすすめ測定器

暑さ指数(WBGT)を現場で管理するには、測定器の選び方が安全管理の質に直結します。特に屋外作業が多い建設現場では、耐久性・視認性・アラート機能が備わったものが理想的です。

以下のような機能を備えたモデルが現場向けとしておすすめです:
  • 防塵・防水仕様:突然の雨や粉じんに対応
  • 大きめの液晶表示:作業員が一目で確認できる視認性
  • 警報ブザー機能:WBGTの基準値を超えると即座に警告
  • 記録・ログ機能:日々の数値を保存して安全書類に活用可能
代表的なメーカーにはタニタ、佐藤計量器製作所、ドリテックなどがあり、1万円前後の簡易モデルから、本格モデルまでラインアップが揃っています。

なお、最近はスマホ連携型のモデルも登場しており、測定データをアプリで管理できるなど、記録業務の効率化にも役立ちます。

現場の規模や用途に応じて、「続けやすい・わかりやすい」測定器を選ぶことが、熱中症対策の第一歩となります。

暑さ対策グッズと服装の工夫

暑さ指数(WBGT)は環境の暑さを数値化するものですが、作業員が実際に感じる「体感温度」は、装備や服装によって大きく変わります。建設現場では、数値だけでなく“感じる暑さ”を下げる工夫が重要です。

以下では、現場で活用されている暑さ対策グッズを紹介します。

空調服(ファン付き作業着)

今や現場の定番ともいえるアイテム。バッテリー駆動の小型ファンが作業服内に風を送り込み、汗を効率よく気化させることで熱を放出し、体温上昇を抑えます。真夏の屋外作業でも疲労感を大きく軽減できます。
事務員たなか

弊社でも3年前から活用し、
めちゃくちゃ快適なようです。

冷感タオル・ネッククーラー

首元を冷やすことで、全身の温度感覚が下がる効果があります。水で濡らして使用するタイプや、保冷剤を入れるタイプが主流でしたが、今は電動のネッククーラーなどが人気です。軽作業時にも使いやすいのが特徴です。

遮熱ヘルメットカバー・インナーキャップ

頭部は熱がこもりやすいため、直射日光を反射するカバーや、通気性の高いインナーキャップを併用することで、頭の熱ダレや不快感を軽減できます。特に屋根上・鉄骨上など照り返しの強い現場で有効です。

保冷ベスト・冷却腕カバー

保冷剤を入れて使用するタイプのベストや腕カバーは、身体の一部を重点的に冷却できるため、短時間の作業や待機中の冷却にも効果的です。空調服との併用で、より高い冷却効果を得ることも可能です。

作業着の色・素材の見直し

濃色の服は輻射熱を吸収しやすいため、白やベージュなどの明るい色の服装が推奨されます。加えて、吸汗速乾性や通気性の高い素材を選ぶことで、汗による不快感や体温上昇を抑えることができます。
このように、暑さ指数そのものは変えられなくても、体感温度は“装備と工夫”で下げることが可能です。現場の条件や作業内容に合わせて、適切なグッズや服装を選ぶことが、熱中症のリスク低減につながります。

その他、現場で活躍する熱中症対策グッズ

塩分補給タブレット・経口補水液

水分だけでなく塩分も補うことが熱中症予防のポイント。個包装されたタブレットやゼリー飲料は持ち運びやすく、作業の合間に手軽に補給できます。

クールスプレー(冷却スプレー)

衣類に吹きかけることで瞬間的な冷却感を得られるスプレータイプ。朝礼前や休憩明けのリフレッシュに最適です。

スポットクーラー(簡易冷風機)

日陰の休憩場所に設置すれば、熱がこもった作業服の放熱や体温調整が効率よく行えるアイテム。移動式タイプが多く、レンタルも可能です。

総括:【建設業の熱中症対策】WBGT値31℃・35℃は作業中止レベル?!暑さ指数の計算方法や安全管理を徹底解説!

建設現場における熱中症対策は、「暑さ指数(WBGT)」を正しく測り、活用することから始まります。WBGTが31℃を超える状況は、作業中止を検討すべき危険水準であり、現場全体で数値を共有しながら対応策を講じることが求められます。

厚生労働省や建災防が示す休憩・作業中止の目安を参考に、暑熱順化の有無や現場条件を考慮した柔軟な運用が大切です。また、大成建設などの事例に見るように、数値による判断だけでなく、作業環境の改善や健康管理も対策の柱となります。

暑さは自然現象で避けられませんが、その影響を「数値化・可視化」し、「対応策を準備・実行」することで、リスクは確実に下げることができます。

WBGTの測定と記録、装備の工夫、情報の活用——どれも「命を守る行動」です。今日からできる対策を、現場単位でぜひ見直してみてください。

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