メカニカルシール漏れはなぜ起きる?原因から応急処置・寿命の目安まで徹底解説

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ポンプや回転機械の運転に欠かせない部品のひとつが「メカニカルシール」です。軸から液体が漏れ出すのを防ぐ役割を担っていますが、現場では「メカニカルシールが漏れる」というトラブルが少なくありません。わずかな漏れなら問題ないのか、それともすぐに交換すべきなのか──判断に迷う場面も多いのではないでしょうか。

本記事では、メカニカルシールの基本構造から漏れの原因・応急処置・許容範囲、さらに寿命や交換の目安までを幅広く解説します。現場で対応に悩んだときの参考になるよう、実務目線で整理していますので、ぜひ最後までご覧ください。
記事のポイント
  • メカニカルシールとは
  • メカニカルシールから漏れる原因は
  • 漏れの許容範囲
  • 漏れた場合の対応方法
  • 予防・メンテナンスについて
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)


建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次

メカニカルシールの漏れの原因は?

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  1. メカニカルシールとは?仕組みと役割をわかりやすく解説
  2. 何故メカニカルシールは漏れるのか?原因とポンプへの影響
  3. メカニカルシールが漏れるとどうなる?放置したときのリスク
  4. 現場でできるメカニカルシール漏れの応急処置とは
  5. どこまで大丈夫?メカニカルシール漏れの許容範囲
  6. 自然に止まることはある?メカニカルシール漏れの実態
  7. メカニカルシールの寿命と交換タイミングの目安
  8. メカニカルシールの漏れを防ぐための予防メンテナンス

メカニカルシールとは?仕組みと役割をわかりやすく解説

出典:株式会社タンケンシールセイコウ 公式HP
メカニカルシールとは、ポンプや攪拌機などの回転機械において「軸部分から液体が漏れ出すのを防ぐ」ための密封装置です。機械の内部では液体や気体を扱うことが多く、そのままでは回転軸とケーシングのすき間から漏れが発生してしまいます。これを防ぐために使用されるのがメカニカルシールです。

基本構造は、回転する「回転リング」と固定される「固定リング」が密着し、その接触面を潤滑しながらシールを保つ仕組みになっています。これにより摩耗を抑えつつ、流体を外に漏らさないようにしています。ゴムパッキンやグランドパッキンなどと比べても、漏れを大幅に低減できるのが大きな特徴です。

主に水処理施設、化学プラント、食品工場など、液体の取り扱いが多い現場で広く採用されており、ポンプの信頼性を支える重要な部品といえます。メカニカルシールは、単なる消耗品ではなく、設備の安全性・効率性を左右するキーパーツなのです。

こうしたメカニカルシールを手がけるメーカーとしては、タンケンシールセーコウ(TANKEN SEAL SEIKO)や酉島製作所などが知られています。いずれも国内で長年の実績を持ち、用途や条件に応じた多様な製品を展開しており、現場の信頼を集めています。

何故メカニカルシールは漏れるのか?原因とポンプへの影響

メカニカルシールは他のパッキン類よりも漏れが少ないと上述しましたが、実際、メカニカルシールの漏れは、現場で最も多いトラブルの一つです。原因はさまざまですが、大きく分けると「機械的な不具合」と「使用環境の影響」に分類できます。

まず「機械的な不具合」とは、ポンプやシール自体の状態に起因するものです。
たとえば、ポンプの軸がわずかに振れていると、シール面に均等な力がかからず隙間が生じます。また、長年の使用でシールリングが摩耗すれば、本来の面圧が保てず液体がにじみ出ます。さらに、組付け不良(芯ずれや締付不足など)といった人為的な要因もという場合もあるでしょう。
機械的な不具合
  • 軸の振れ
  • シールリングの摩耗
  • 取付不良
一方「使用環境の影響」とは、運転条件や扱う液体の性質によるものです。
メカニカルシールは潤滑用の液膜によって摩擦を抑えていますが、液膜が不足すると摩擦熱が発生し、シール面が損傷します。また、液体に異物が混ざっていると接触面に傷をつけて漏れの原因になります。加えて、設計以上の高温・高圧で運転すれば、シール材が膨張・変形して密封性を失うこともあります。
使用環境の影響
  • 潤滑不足
  • 異物混入
  • 高温高圧条件での使用
  • 経年劣化
このように、メカニカルシールの漏れは機械的要因と環境的要因が複雑に絡み合って発生します。こうした要因によって発生した漏れは、ポンプの性能低下(吐出量の減少や圧力不足)につながり、場合によってはベアリングの損傷や機械全体の寿命短縮を招きます。

メカニカルシールが漏れるとどうなる?放置したときのリスク

メカニカルシールの漏れをそのままにしておくと、機械の性能や安全性に大きな影響を及ぼします。特にポンプでは、シール部からの液体漏れが続くことで内部圧力が安定せず、吐出量の低下や効率悪化を招きます。これにより、生産設備全体の稼働率が落ちることもあります。

さらに漏れた液体がベアリングやモーター内部に入り込むと、潤滑油が劣化し、焼付きや腐食が発生する恐れがあります。結果として修理コストは増大し、機械そのものの寿命を縮める原因になります。

また、漏れた液体が床面に広がれば作業員の滑り事故や感電事故につながりかねません。化学薬品を扱う現場では、環境汚染や法令違反といった重大なトラブルに直結する場合もあります。

このように、メカニカルシールの漏れは単なる「液体のにじみ」ではなく、機械の性能低下・修理コストの増大・安全リスクの上昇 という三重の問題を引き起こします。いつもと違うなと感じたら、放置せず、早めに原因を特定して対処することが重要です。

現場でできるメカニカルシール漏れの応急処置とは

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メカニカルシールに漏れが発生した場合、まず優先すべきは作業員の安全確保と周囲への注意喚起です。危険物を扱っている場合は、防護具の着用や立ち入り制限を行い、必要に応じて速やかに運転を停止する判断が求められます。

一方で、水など危険性の低い流体の場合、にじみ程度であれば直ちに大きな問題には至らないケースもあります。応急的にはシール部の締付け確認や養生材で漏れを受けるなど、状況に応じた対応が取られることもあります。

ただし注意すべきは、応急処置はあくまで延命策にすぎないという点です。根本的な解決には交換や修理が不可欠であり、放置すればトラブルのリスクは高まります。最終的な対応方針は、機械の種類や流体の性質によっても異なるため、ポンプ整備の専門家やメーカーの指示を仰ぐのが確実です。

どこまで大丈夫?メカニカルシール漏れの許容範囲

メカニカルシールは構造上、ごく薄い液膜で摩耗や焼付きを防いでいるため、完全に漏れをゼロにすることは難しいものです。そのため「にじみ程度」であれば正常範囲とされるケースもあります。

ただし、流体の種類や圧力・温度、軸径や回転速度、運転頻度などによって条件が大きく変化するため、「どこまでが許容か」を一律の数値で示すのは困難です。

一方で、国際規格である ISO 21049 / API 682 では、許容漏れ量を 5.6 g/h(≒5.6 cc/h) と定めており、国内メーカーでは、実務上の目安として3〜5cc/h程度としている場合もあります。

メカニカルシールの許容漏れは「規格値だけで決まるもの」ではなく、メーカーの基準や現場の運用ルール、さらに使用条件との兼ね合いで判断するものです。重要なのは数値そのものよりも、急激に漏れが増えていないか、床に液が垂れていないか という“変化”を見極めることにあります。

自然に止まることはある?メカニカルシール漏れの実態

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メカニカルシールの漏れに直面した際、「少しすれば止まるのでは」と期待する方もいます。しかし実際には、自然に止まるケースはあまりありません。

漏れの多くは、シール面の摩耗や変形、潤滑不足、異物の噛み込みといった要因によって発生します。これらは時間の経過で改善されるものではなく、むしろ運転を続けるほど摩耗や損傷が進み、漏れが悪化していく傾向があります。

一時的に漏れが少なくなったように見える場合もありますが、それは液体の粘度変化や運転条件による偶然の現象にすぎず、根本的に「治った」わけではありません。むしろそのまま使用を続けると、シール部の破損が拡大し、ポンプ停止や重大な故障につながるリスクが高まります。

したがって、メカニカルシールの漏れは自然に止まることはなく、早期に点検・交換するのが原則です。微量であっても「増えていないか」を定期的に観察し、異常の兆候を見逃さないことが、設備の安定稼働と安全確保につながります。

メカニカルシールの寿命と交換タイミングの目安

メカニカルシールは消耗部品であり、永続的に使えるものではありません。一般的な寿命は 数千時間〜数万時間の運転が目安とされますが、実際には使用条件によって大きく変動します。扱う流体の圧力や温度、固形物の混入状況、ポンプの発停頻度などが寿命を左右する主な要因です。

例えば、清水を扱う常温ポンプでは数年にわたり安定して使用できることもありますが、高温・高圧の薬液やスラリーを扱う設備では、数ヶ月程度で交換が必要になるケースも珍しくありません。また、頻繁な始動停止や、軸の振れが大きい環境下では、摩耗が早まり寿命が短くなります。

交換のタイミングを見極めるポイントとしては、漏れ量の増加が最も分かりやすいサインです。にじみ程度だったものが液だれに変わってきた場合は、交換を検討すべきです。さらに、異音や振動の増加、シール部の温度上昇なども寿命が近い兆候となります。

重要なのは、「使えるだけ使う」のではなく、計画的に交換時期を設定することです。定期点検や運転時間の記録を行い、シール寿命をデータとして把握しておくことで、突発的なトラブルやライン停止を防ぐことができます。

メカニカルシールの漏れを防ぐための予防メンテナンス

メカニカルシールは消耗品です。しかし、適切なメンテナンスを行うことで寿命を延ばし、トラブルを最小限に抑えることが可能です。
メカニカルシールの漏れを防ぐための予防メンテナンス
  • 運転条件を設計値内に保つ
  • 潤滑・冷却を確保する
  • 異物の混入を防止する
  • 定期点検と記録を徹底する
  • 計画的な交換を実施する
まず重要なのは、運転条件を設計値に収めることです。想定以上の圧力や温度で運転するとシール材が劣化しやすく、漏れが早期に発生します。設計値を超えないよう運転管理を徹底することが第一歩です。

次に、潤滑・冷却の確保です。シール端面は潤滑用の液膜により摩耗を抑えていますが、潤滑不足になると摩擦熱で損傷が進みます。冷却水やフラッシング液を正しく供給し、液膜が保たれるようにすることが欠かせません。

また、異物の混入を防ぐフィルタの設置も有効です。固形物がシール面に噛み込むと損傷が一気に進むため、流体の清浄度を維持することが長寿命化につながります。

定期点検と記録の徹底も忘れてはなりません。漏れ量の変化や運転時間を記録し、過去データと比較することで、異常の早期発見や交換時期の予測が可能になります。

予防メンテナンスは「漏れを完全に無くす」ためではなく、計画的にトラブルを防ぐための仕組みづくりです。小さな手間を積み重ねることで、突発的なライン停止や修理コストの増大を防ぎ、設備の安定稼働を実現できます。

総括:メカニカルシール漏れはなぜ起きる?原因から応急処置・寿命の目安まで徹底解説

メカニカルシールは、ポンプや回転機械の安定稼働を支える重要な部品です。原理的に「完全なゼロ漏れ」は難しく、微量のにじみは正常範囲とされることもあります。しかし、漏れが増加したり床に液だれするような状態は明らかな異常のサインです。

漏れの原因は、軸の振れや摩耗といった機械的要因だけでなく、流体の性質や圧力・温度などの使用環境によっても大きく左右されます。応急処置で一時的にしのぐことはできますが、メーカーの立場としては交換・修理が基本方針であり、早めの対応が欠かせません。

小さな漏れも油断せず、早めの点検と適切な対応を行うことが、現場の安全と設備の信頼性を守る最良の方法です。

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