建設業を運営する上で、労働者の安全と労働環境の適正な管理は非常に重要です。その中で、「雇用管理責任者」という役職が設けられています。しかし、「そもそも雇用管理責任者とは何か?」「社長が雇用管理責任者になることは可能なのか?」「資格や講習の義務はあるのか?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。特に建設業では、適切な雇用管理が求められており、しっかりと理解しておくことが大切です。
本記事では、雇用管理責任者の役割や必要性、資格要件、そして社長がその役割を担えるのかについて詳しく解説していきます。
記事のポイント
- 雇用管理責任者とは
- 雇用管理責任者の配置は義務か
- 雇用管理責任者は誰がなる?社長も可能?
- 雇用管理責任者に資格は必要?講習は受けなければならない?
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
社長が雇用管理責任者になるのは可能か

- 雇用管理責任者とは
- 【建設業】雇用管理責任者は不要?
- 【建設業】雇用管理責任者の届出は必要か?
- 社長がなっても良い?雇用管理責任者になるための資格要件
- 雇用管理責任者の講習は義務?
雇用管理責任者とは
雇用管理責任者とは、労働者の雇用環境を適切に管理し、安全で健全な職場を維持する責任者です。労働時間・残業管理、社会保険・労災保険の加入管理・外国人労働者の適正な雇用管理・定期的な労働環境の見直しなど多岐にわたります。
建設業では、労働環境が過酷になりやすいため、特に雇用管理責任者の役割が重要視されています。未払い残業や社会保険未加入、労災問題などが発生しやすいため、適切な管理が求められるのです。
雇用管理責任者は、会社の規模や業種によってその役割が変わることもありますが、基本的には会社が法令を遵守し、適正な雇用環境を維持するための重要な役割を担います。
【建設業】雇用管理責任者は不要?

雇用管理責任者の選任は、すべての事業所に義務付けられているわけではありませんが、建設業では「建設労働者の雇用の改善等に関する法律」に基づき、選任が義務化されています。この法律の第5条では、事業主は事業所ごとに雇用管理責任者を選び、建設労働者の募集や雇入れ、技能向上、職場環境の整備などの管理を行わせる必要があると定められています。さらに、選任後はその氏名を事業所内に掲示することや、適切な研修を受けさせる努力義務も課されています。
(雇用管理責任者)建設労働者の雇用の改善等に関する法律
第五条 事業主は、建設事業(建設労働者を雇用して行うものに限る。第八条において同じ。)を行う事業所ごとに、次に掲げる事項のうち当該事業所において処理すべき事項を管理させるため、雇用管理責任者を選任しなければならない。
一 建設労働者の募集、雇入れ及び配置に関すること。
二 建設労働者の技能の向上に関すること。
三 建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、建設労働者に係る雇用管理に関する事項で厚生労働省令で定めるもの
2 事業主は、雇用管理責任者を選任したときは、当該雇用管理責任者の氏名を当該事業所に掲示する等により当該事業所の建設労働者に周知させるように努めなければならない。
3 事業主は、雇用管理責任者について、必要な研修を受けさせる等第一項各号に掲げる事項を管理するための知識の習得及び向上を図るように努めなければならない。
つまり、建設業において労働者を雇用する場合は、雇用管理責任者の選任しなければなりません。 事業規模の大小にかかわらず、適正な雇用管理を行い、労働者の職場環境を整備することは、事業主の責務とされています。


施工体制台帳や再下請負通知書にも
「雇用管理責任者名」を記載するところが設けられていますね!
再下請負通知書の書き方についてはコチラ!
【建設業】雇用管理責任者の届出は必要か?
雇用管理責任者を選任した場合、特別な届出は必要ありません。
ただし、雇用管理責任者を選任した際には、その氏名を事業所内に掲示し、労働者に周知することが推奨されています。これは努力義務であり、掲示しなかった場合に直ちに罰則があるわけではありません。しかし、労働者が自社の雇用管理責任者を把握できるようにすることで、労働環境の透明性が確保され、相談しやすい環境が整うため、実施することが望ましいでしょう。
また、事業主は、雇用管理責任者に対して必要な研修を受講させるよう努めなければならないとされています。これも努力義務ではありますが、雇用管理の適正化や法令遵守を徹底するためには、定期的な研修を受けさせ、最新の労務管理の知識を習得させることが重要です。
社長がなっても良い?雇用管理責任者になるための資格要件


雇用管理責任者の選任にあたり、特別な資格要件は法令上定められていません。 そのため、社長や事業主自身がこの役割を担うことも可能です。 特に小規模な事業所では、事業主が自ら雇用管理責任者として職務を遂行するケースも多いです。
雇用管理責任者には、建設労働者の募集・雇入れ・配置、技能向上、職業生活上の環境整備など、多岐にわたる雇用管理業務を適切に管理する責任があります。
資格不要とはいえ、労務管理に関する知識や経験が求められます。事業主は、雇用管理責任者に対して必要な研修を受講させるなど、知識の習得と向上を図るよう努めることが推奨されています。
適切な雇用管理を実現するためには、雇用管理責任者としての役割を十分に理解し、必要な知識とスキルを備えた人物を選任することが重要です。社長が自らその役割を担う場合でも、労務管理に関する最新の情報を学び、適切な対応ができるよう努めることが求められます。
雇用管理責任者の講習は義務?
雇用管理責任者の講習受講は義務ではありませんが、受講が推奨されています。 法律上、建設業では雇用管理責任者の選任は義務付けられていますが、講習の受講自体に法的な強制力はありません。しかし、適正な雇用管理を行うためには、最新の労働法令や安全管理の知識が不可欠であり、厚生労働省が実施する研修を受講することで、より適切な雇用管理が可能になります。
厚生労働省は、建設業における適正な雇用管理の推進を目的として、雇用管理責任者向けの「雇用管理研修」を無料で実施しています。この研修では、労働法令の遵守、労働者の雇用管理、安全管理、社会保険手続き、外国人労働者の適正な雇用管理など、雇用管理責任者として必要な知識を学ぶことができます。
令和6年度の研修は、オンラインと各都道府県の会場で開催されましたが、すでに受付は締め切られています。 現時点では、令和7年度の研修についての通知は発表されていないため、次回の案内を待つ必要があります。最新情報は、厚生労働省の公式サイトで随時更新されるため、今後の研修を希望する方は定期的にチェックすることをおすすめします。
総括:【義務?】雇用管理責任者は社長でもOK?資格要件や講習・届出は不要か徹底解説!
雇用管理責任者は、建設業における労働者の雇用環境を適切に管理し、安全で健全な職場を維持するために必要な役職です。特に、建設業では長時間労働や社会保険未加入などの問題が発生しやすいため、労務管理の専門的な役割を担う人材が不可欠となります。
法律上、建設業で労働者を雇用する場合は、必ず雇用管理責任者を選任する必要があると定められています。特別な資格は必要ありませんが、労働法規や社会保険の知識を有し、適切な労務管理ができることが求められます。また、事業主自身が雇用管理責任者となることも可能ですが、その場合でも、必要な研修を受講し、最新の知識を身につけることが推奨されます。
適切な雇用管理を実施することで、労働環境の改善だけでなく、企業の信頼性向上やトラブルの未然防止にもつながります。事業主としての責任を果たし、法令を遵守した適正な労務管理を徹底していきましょう。
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