現場での事故を防ぐカギは、作業者一人ひとりの「危険感受性」にあります。
これは、目に見える危険だけでなく、違和感や兆候を察知する力のこと。たとえマニュアル通りでも、危険を感じ取れなければ事故は起こります。
本記事では、「危険感受性」をテーマに、その意味や低い場合のリスク、感受性を磨く方法、安全教育での活用などを解説。安全意識を高めたい方必見の内容です。
記事のポイント
- 危険感受性とは
- 危険敢行性との違いとは?
- 危険感受性を高めるのに必要なこと
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
危険感受性を高めるには?

- 危険感受性とは?安全意識との違いと基本を理解しよう
- 危険敢行性との違いとは?“あえて危険を選ぶ”心理に注意
- 危険感受性が低いとどうなる?現場に潜むリスクと実例
- 自分の危険感受性を知ろう!チェックリスト&テストで自己診断
- 危険感受性を磨くには?日々の行動習慣と職場の工夫
- 危険感受性を高めるための安全教育・安全対策
危険感受性とは?安全意識との違いと基本を理解しよう
危険感受性とは、作業中に潜むリスクや異常の兆候を、直感的に察知する能力を指します。
足元の不安定さや機械の異音、周囲の空気の変化など、日常の小さな「異変」に敏感であることが、この感受性の高さを表します。
一方で、「安全意識」は危険を認識し、回避しようとする考え方や態度そのもの。つまり、危険感受性は“気づく力”、安全意識は“行動する力”とも言えるでしょう。両者が組み合わさって初めて、事故を未然に防ぐ「安全行動」が実現されます。
しかし近年、設備や環境の整備によって労働災害の件数自体は減少している一方で、危険を“肌で感じる”機会も減ってきています。とくに若手や未熟練労働者にとっては、「何が危険か」「どうなると危険になるのか」を体感的に理解する機会が少なく、感受性の低下が問題視されています。
厚生労働省の「第12次労働災害防止計画」でも、危険感受性の向上が重要なテーマとして明記されており、現場におけるノウハウの消失や1人作業の増加、就業形態の多様化などに対応するための対策が求められています。こうした背景から、感受性を高める教育や体験型訓練が今、改めて注目されているのです。
危険敢行性との違いとは?“あえて危険を選ぶ”心理に注意

危険感受性と混同されがちな言葉に「危険敢行性」があります。
危険感受性が「危険に気づけるかどうか」を示す能力なのに対し、危険敢行性は「危険と分かっていてもあえて実行してしまう傾向」を指します。つまり、感受性が高くても敢行性が高ければ、危険に気づいていながら対処せずに事故を招くことがあるのです。
たとえば、足場の端に手すりがないのを認識していても「今だけだから」と通ってしまう。ヘルメットを着用しないまま「ちょっとそこまでだから」と作業してしまう――これらは、まさに“危険敢行”の行動といえます。
厚生労働省の資料では、危険感受性と危険敢行性の組み合わせによって、労働者の安全行動を以下の4タイプに分類しています。
順番 | タイプ | 危険感受性 | 危険敢行性 | 特徴 |
1 | 安全確保型 | 高 | 低 | 最も望ましいタイプ 危険を敏感に感じ、危険を回避する傾向 |
2 | 限定的安全型 | 低 | 低 | 危険に鈍感だが、行動も抑制的で危険を回避する傾向 |
3 | 意図的敢行型 | 高 | 高 | 危険を知っていてもあえて避けようとしない傾向 |
4 | 無意図的敢行型 | 低 | 高 | 最も危険なタイプ 危険に鈍感で、且つ危険を避けようとしない傾向 |
特に現場経験が長い人ほど、「慣れ」や「過信」によって敢行性が高くなる傾向があります。「自分は大丈夫」という気の緩みが、かえって大きな事故を招くことも少なくありません。
現場の安全を守るためには、危険に気づけるだけでなく、「それを無視しない」行動意識を育てることが欠かせません。感受性とともに、敢行性の抑制も安全教育の大きなテーマです。
危険感受性が低いとどうなる?現場に潜むリスクと実例

危険感受性が低いと、作業中に潜むリスクや異常に気づけず、事故や災害に直結する可能性が高まります。
たとえば、以下のような状況に陥る場合もあるでしょう。
危険感受性が低い人が見落としやすい例
- 足元に電源コードが垂れていても気に留めずに作業を続ける
- 機械がいつもと違う音を立てていても異常と判断せず、そのまま操作を続ける
- 荷物の積み方が明らかに不安定でも、「大丈夫だろう」と見過ごしてしまう

ほんの小さな見逃しが重大災害につながることもあるのです。
実際の労働災害の多くは、特別な作業中ではなく、日常の作業中に起きています。見慣れた環境や繰り返し作業に慣れてしまうことで、ちょっとした異変やリスクの兆候に気づけなくなることがあるのです。特に若手や未経験の作業者は、「これくらいなら大丈夫」と油断してしまう傾向があります。
また、危険感受性が低い人は、目の前の状況だけに意識が向きがちで、「その先に何が起こりうるか」を想像する力が不足しがちです。たとえば、「床に垂れたコード→足に引っかかる可能性」「荷物が不安定→崩れて人や設備に当たる可能性」――こうした“次の危険”を読み取ることができなければ、事故の芽を摘むことはできません。
さらに、感受性の低い人が現場の中心にいると、注意喚起や声かけの文化が根づかず、安全確認が形骸化する恐れもあります。ヒューマンエラーが重なりやすい土壌ができてしまうのです。
危険感受性は経験だけで育つものではありません。日頃の訓練や意識づけによって高めることができるため、個人任せにせず、現場全体での取り組みが欠かせません。
自分の危険感受性を知ろう!チェックリスト&テストで自己診断
危険感受性を高めたいと思っても、自分にどれだけ備わっているのか分からなければ対策の取りようがありません。しかし残念ながら、個人が気軽に活用できる汎用的な「危険感受性チェックリスト」は現時点ではありません。
とはいえ、自分の傾向を把握するために、日々の行動を見直すことは可能です。たとえば、以下のような場面でどう反応しているかを振り返ってみてください。
こんな時、あなたはどのような対応をしていますか?
- 周囲の異音や違和感にすぐ気づけるか
- 「大丈夫だろう」で見過ごすクセはないか
- 違和感を発見した場合、同僚や上司にすぐ報告できるか
- 作業前に安全確認を習慣化しているか
- ヒヤリ・ハット経験をチームで共有しているか
こうした小さな意識や行動の積み重ねが、危険に対する“気づき”の差を生み、結果として感受性の高さにつながっていきます。
また、より本格的に診断したい場合は、企業向けに開発された危険感受性診断テストのような教材や映像訓練も活用されています。これは映像を見ながら危険の兆候に気づけるかを評価するテストで、現場教育などで導入が進んでいます。



自己診断は完璧でなくても、こうした振り返りを通じて“気づく力”を養っていくことが、危険感受性を磨く第一歩となります。
危険感受性を磨くには?日々の習慣で“気づく力”を育てよう


危険感受性を磨くには、特別なセンスや経験だけに頼るのではなく、日々の小さな行動や意識づけが重要です。現場での安全意識は、一朝一夕で身につくものではなく、日々の積み重ねで少しずつ育まれていきます。
たとえば、作業前に「今日はどんな危険がありそうか?」と自問するだけでも、危険へのアンテナが立ち始めます。いつもと違う音や足元の滑り、工具の置き方など、小さな違和感に敏感になることが第一歩です。
また、ヒヤリ・ハットを感じたらすぐに記録し、振り返る習慣をつけましょう。日報や朝礼などで共有することで、他人の気づきを自分の学びに変えることもできます。こうした積極的な意識は、危険感受性を自然と磨いてくれます。
危険感受性は、日々の習慣によって鍛えられる力です。「気づける自分」を目指して、日々の行動を少しだけ見直してみることから始めてみましょう。
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危険感受性を高めるための安全教育・安全対策


危険感受性は、個人の意識づけや行動習慣によって磨かれる一方で、職場全体としての取り組みも非常に重要です。現場の安全文化を育てるには、「気づく力」を全員が持ち、共有できる環境を組織的に整える必要があります。そのためには、知識の伝達だけでなく、見て・聞いて・感じて・振り返るといった体験型の教育や、職場全体での危険の“見える化”といった工夫が欠かせません。
ここでは、組織として危険感受性を向上させるために効果的な、安全教育や対策の具体例を紹介していきます。
VR体験:危険の“その瞬間”を想的に体感
建設現場や製造業では、近年VR(仮想現実)を活用した危険体験教育が進んでいます。
実際に足場から落ちそうになる、重機の死角に入ってしまうなどの“ヒヤリとする瞬間”を、リアルな映像と音で体感することで、頭ではなく“感覚”として危険を学ぶことができます。
特に若年層や現場未経験者への導入に効果的です。
実際の危険体験:疑似でも“体で知る”と忘れない
危険感受性を育てるうえで、最も強力なのが実体験に近い学習です。
たとえば、土のうを落とす墜落実験、フルハーネスをつけて宙づり体験、感電体験など…実際に体験することで、「この作業を甘く見るとどうなるか」が一瞬で理解できます。
頭で理解するだけでなく、恐怖や緊張感をともなって身体に刻まれるため、行動にも確実につながるでしょう。
最近では上記のような体験ができる施設もあり、会社の教育訓練として用いられる場合も多いようです。
危険の“見える化”:過去の災害事例を学ぶ
労働災害は、特別な作業中だけでなく、ごく日常的な業務の中でも発生します。だからこそ、過去の災害事例やヒヤリ・ハットの体験談を学ぶことは、見えにくいリスクへの理解を深めるうえで非常に有効です。「あのとき、こうしていれば」という当事者の声は、抽象的だった危険のイメージを具体化させ、「自分の現場でも起こりうること」として捉え直すきっかけになります。
さらに、危険感受性を高めるには、「気づける」環境づくりも重要です。安全パトロールで撮影した危険箇所の写真や、災害発生直前の現場写真、あるいはショッキングな事例のビジュアル資料などを活用する“見える化”の取り組みは、視覚的インパクトを与え、注意力を強く引き出す効果があります。
これらの資料をもとに、グループで「どこが危険か?」を考えるワークや危険発見力テストを実施することで、感受性の違いに気づき、チーム全体でリスクを補い合う意識が養われます。さらに、作業前に危険要因と対策を話し合うKY(危険予知)活動を日常的に行うことで、“危険に気づく目”を持続的に育てる習慣づけにもつながります。
危険予知活動について詳しくはこちら!
総括:【危険感受性を磨いて事故ゼロへ!】高めるには何が必要?危険感受性の基本から安全教育まで徹底解説
危険感受性は、特別な能力ではなく、日々の習慣と職場の取り組み次第で誰でも高められる力です。現場の変化に敏感になる訓練や、他者との情報共有、災害事例や体験談の学び、危険を“見える化”する工夫を積み重ねることで、自然と「気づける力」が育っていきます。
また、危険感受性が高くても、それを無視する「危険敢行性」が高い状態では意味がありません。気づく力と回避する意識、この両輪が揃ってこそ、安全行動は成り立ちます。
現場で事故を防ぐには、感受性を個人任せにせず、チーム全体で補い合う文化をつくることが重要です。危険を「察知して、避ける」行動が自然にできる職場づくりを、今日から少しずつ始めていきましょう。
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