ベアリングにグリスを入れすぎるとどうなる?!寿命を縮めないためのグリスアップの基礎知識

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ベアリングのグリスアップは、機械設備や建設機器のメンテナンスにおいて欠かせない作業です。
「とりあえずグリスをしっかり入れておけば安心」というイメージを持たれている方も多いかもしれませんが、実際にはどれくらい入れるべきか、どのタイミングで注入するべきかといった“適正な基準”に迷う方も少なくありません。

そもそもベアリングとはどのような役割を持った部品で、なぜグリスアップが必要なのか?
まずはベアリングの基本から整理し、そのうえでグリスアップの頻度・入れ方・グリス量の目安、そしてグリスの入れすぎで起こりやすいトラブルについて順番に解説していきます。
記事のポイント
  • ベアリングとは
  • ベアリングのグリスアップの基本
  • グリスを入れすぎるとどうなる?よくあるトラブル
  • おすすめのグリス
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)


建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次

ベアリングの基礎知識からグリスの入れすぎトラブル事例まで解説

  1. ベアリングとは?基本構造と潤滑が必要な理由をわかりやすく解説
  2. 主なベアリングメーカーと代表的な企業
  3. ベアリングのグリスアップの基本|グリスアップ頻度と正しい入れ方
  4. ベアリングへのグリス入れすぎによるトラブル|よくある失敗と対処法
  5. ベアリング潤滑油おすすめタイプ|用途別に選び方を解説

ベアリングとは?基本構造と潤滑が必要な理由をわかりやすく解説

イメージ
ベアリングとは、機械や装置に使われる“回転部分を支える部品”のことで、軸がスムーズに回転するための受け皿のような役割を持ちます。

建設機械であれば、ローラーやモーター、送風機、ポンプなど、回転運動が発生する箇所のほとんどにベアリングが使われていると言ってよいほど重要な部品です。また建設機械に限らずとも、自動車やエアコンのファン、家庭用の洗濯機や扇風機など、実は私たちの身の回りの製品にも数多く使われています。

ベアリングの内部には「内輪」「外輪」「転動体(ボールやローラー)」と呼ばれる部品があり、転動体が内輪・外輪の間を転がることで、摩擦抵抗を極力少なくしながら軸を支える構造になっています。

この“転がり運動”をスムーズに保つために必要なのが潤滑(グリスアップ)です。潤滑が不足すると転動体が金属同士で擦れ合い、摩耗・焼き付き・発熱などのトラブルに直結します。

逆に、グリスを正しく補充しておけば、摩擦や熱を抑えながら長期間安定した回転を維持することができます。

主なベアリングメーカーと代表的な企業

出典:NTN株式会社 公式HP
ベアリングは日本が世界的に強みを持つ分野のひとつであり、国内には複数の大手メーカーが存在します。
代表的なのが NSK(日本精工)、NTN、JTEKT(旧・光洋精工)、そして精密小型ベアリングに強みを持つ ミネベアミツミ です。これらのメーカーは自動車や産業機械、建設機械、さらには航空宇宙分野まで幅広い産業に高品質な製品を供給しており、耐久性と精度の高さから世界市場でも高いシェアを誇ります。とくに日本メーカーは、自動車分野におけるホイール用ベアリングやエンジン部品、また精密機器向けの小型ベアリングで優れた技術を持っているのが特徴です。
代表的な国内ベアリングメーカー
  • NTN
  • 日本精工
  • ジェイテクト
  • ミネベアミツミ
  • 不二越
一方、海外メーカーとしては世界トップシェアのスウェーデンのSKF、アメリカの TIMKEN(ティムケン) が有名で、長年にわたり重工業や鉄道、風力発電などの分野で信頼を築いてきました。SKFはグローバル展開に強く、各地域のニーズに応じた製品ラインナップを持ち、TIMKENは特に高負荷環境や特殊用途に強みを発揮しています。

ベアリングのグリスアップの基本|グリスアップ頻度と正しい入れ方

ベアリングは回転を続けることで内部のグリスが徐々に劣化・消耗していくため、定期的にグリスを補給(グリスアップ)することが必要です。

よく参考値として「半年〜1年に1回くらい」が挙げられることがありますが、実際の補給間隔は軸受形式・寸法・回転速度・軸受温度・グリースの種類・使用環境によって大きく異なります

特に粉じんが多い場所や高温環境で使用されるベアリングはグリスの劣化が早く、標準的な目安よりも短いサイクルでグリスアップが必要になる場合もあります。そのため、正確な補給間隔を知りたい場合は、使用しているベアリングの型番をもとに製造メーカーのカタログや技術資料を参照するのが確実です。

また、グリスの補給方法も装置の種類や使用環境によって異なります。
建設機械・重負荷かつ粉じん環境では、内部の古いグリスや汚れを取り除くために分解洗浄+所定量の再給脂が推奨されることが多いです。構造上、分解整備・分解洗浄が難しい機械の場合は、既存グリスを押し出しながら補給する方法をとられるケースもあります。

最適な補給方法やグリス量は使用する機械によって異なるため、ぜひ確認してから作業を進めてください。

ベアリングへのグリス入れすぎによるトラブル|よくある失敗と対処法

定期的なグリスの補給はもちろん必要ですが、「ベアリングにグリスを多めに入れておけば安心!」というわけでもありません。グリスを入れすぎること自体がトラブルの原因になるケースは非常に多くあります

本来、ベアリング内部は転動体がスムーズに回転できるように“空間”が確保されており、そこに必要以上のグリスが充填されると、内部圧力が上昇し回転抵抗が大きくなってしまいます。
グリスの入れすぎによるトラブル
  • ベアリングが異常発熱する
  • シールが破損してグリスが漏れる
  • 転動体が正常に回転できず、摩耗を早める
グリスを入れすぎた場合、内部圧力が上がって転動体の回転が阻害され、発熱・摩耗・シールの破損といったトラブルが発生することがあります。

特に高回転域で使用している軸受では、過剰なグリスが「攪拌(かくはん)抵抗」となって急激に温度が上昇し、最悪の場合には焼き付きにつながってしまいます。

一方でグリス量が少なすぎると、今度は潤滑不足によって金属同士が直接擦れ合い、焼き付きや早期破損を招く恐れがあるため、“適正量”を守ることが重要です。
よくある失敗
  • 「念のため」と毎回グリスを多めに注入してしまう
  • 古いグリスを抜かずに新しいグリスをひたすら押し込む
  • ベアリングの形式や使用条件を無視して一律で同じ量を補給する
このような失敗をしてしまった場合の対処方法としては、まず適正量を大きく超えて充填されているグリスを取り除き、規定量まで減らすことが基本となります。

すでにベアリングが発熱している場合には、一旦機械を停止して内部を冷却・清掃したうえで、あらためて規定量のグリスを再充填するという手順が良いでしょう。
事務員たなか

前章で解説したように、実際は型番をもとにメーカーが提示する充てん量(g)を確認するのが最も確実な方法になります。

ベアリング潤滑油おすすめタイプ|用途別に選び方を解説

一口に「ベアリング潤滑油」と言っても、用途や環境に応じてさまざまな種類があります。
グリースと同じように「どれを使っても良い」わけではなく、使用条件に合ったタイプを選ばないと潤滑性能が発揮されません。

以下は代表的な潤滑油(グリース)の種類と、よく使われる場面の例です。
潤滑油の種類特長主な用途
リチウムグリース汎用性が高く、耐水・耐酸化性にも優れる搬送装置、家庭用機器、自動車
モリブデングリース極圧性に優れ、耐荷重性に優れる重荷重の軸受
ウレアグリース耐熱性と耐水性に優れる高温モーター、鋳造設備
シリコングリース耐熱性と耐寒性も優れ、硬くなりにくい自動車、パソコン、おもちゃ
たとえば建設機械など高負荷・衝撃荷重がかかる機械では「モリブデングリース」がよく使われています。一方、一般的なモーターや工場設備、さらには自動車のホイールハブや自転車・バイクの軸受にも、汎用性の高い「リチウムグリース」が広く採用されています。

市販されている一般消費者向けのグリス製品(車両用・汎用グリス)も、このリチウムグリースをベースにしたタイプが主流です。
なお、専用グリースが手元にない場合や軽整備レベルで対応したい場合は、高粘着潤滑スプレーのような汎用潤滑剤を使う方法も一つの選択肢です。

このタイプは自動車のドアヒンジやオートバイのスタンド、コンベア・チェーン・ワイヤロープ・ベアリングなど幅広い金属部に使用でき、耐水性・耐熱性にも優れるため、ベアリング部にも使いやすい汎用潤滑剤として実務上よく使われています。

総括:ベアリングにグリスを入れすぎるとどうなる?!寿命を縮めないためのグリスアップの基礎知識

ベアリングは“回転部分を支える重要部品”であり、適切なグリスアップによって寿命や性能が大きく変わります。
ただし、グリスは多すぎても少なすぎてもトラブルの原因になる点に注意が必要です。

グリスを入れすぎた場合、内部圧力が上がって摩擦や発熱を招き、シール破損・早期摩耗などにつながることがあります。「とりあえず多めに入れておけば安心」という考え方は逆効果になることもあるため、軸受形式・使用環境に合わせた“適正量”を守ることが大切です。

メーカーが公表している潤滑指針や推奨グリースを確認しながら、“機械にとってベストなメンテナンス”を行うことが結果的に長寿命化につながります。

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