「建設業は若者が寄りつかない」「若者が辞めるのは当たり前」——。
ネットや現場でそんな声を耳にすることが増えてきました。実際、SNSなどでも「建設業の若者離れ」が話題になるほど、業界全体の深刻な課題として広く認識されています。
私自身、建設業事務員として5年以上働いてきましたが、「若者が定着しない理由」は、肌で感じるほど明白です。労働環境、上下関係、将来性……表面的な問題だけでなく、根底にある“業界の体質”が若者離れを加速させていると痛感します。
本記事では、実際に現場で見てきたリアルな体験や、ネット上の声、そして統計データをもとに、「なぜ若者が離れていくのか」を掘り下げていきます。
記事のポイント
- 建設業の実態
- 建設業で若者離れが深刻化する理由
- 若者離れが当たり前にならないための対策
- 10年後の建設業とは
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
何故、建設業の若者離れは当たり前といわれるのか

- 建設業の若者離れの実態
- 若者が建設業を去る理由──若者離れが当たり前となった9つの理由
- 10年後の建設業はどうなる?若者がいない未来の現実
- 若者離れにどう向き合うか?これからの建設業ができること
建設業の若者離れの実態

「最近、若い子、見ないよね」——建設現場でそんな会話が出るのは、もう珍しいことではありません。
それもそのはず。総務省の労働力調査をもとに国土交通省が作成したグラフによれば、建設業就業者のうち29歳以下はわずか11.6%。一方、55歳以上は36.6%と、3人に1人以上がシニア世代という異常な構成です。
それに加え、総務省が発表した2025年4月時点の推計によると、日本の子どもの数(14歳以下)は1366万人。前年より35万人減り、1982年から44年連続の減少です。子どもが総人口に占める割合も11.1%と過去最低を更新。今後、若年層の労働力が自然と“増える”ことは、ほぼ期待できない中、全産業と比較しても、高齢者が多く若年層が少ないという結果に愕然とせざるを得ない状況です。
若者が入ってこない、そしてそもそも若者の数自体が減っている——。
この“二重の人手不足”が進行している今、「なぜ若者が来ないのか」だけではなく「今いる若者がどうすれば長く続けられるか」に目を向けなければ、業界そのものが立ち行かなくなります。
5年間、建設業界の事務として現場の動きを見続けてきた私には、この危機が“静かに、でも確実に”進んでいるのがうかがえます。未来の建設業は、「人さえいれば成り立つ」という前提すら崩れつつあるのです。
若者が建設業を去る理由──若者離れが当たり前となった9つの理由
建設業で若者の離職が相次いでいるのは、決して個人の甘えや適性だけが原因ではありません。
業界全体に共通する“続きにくい構造”が、若年層の定着を阻んでいるのです。以下では、実際に現場で見えてきた、若者が建設業を離れていく9つの要因を紹介します。
若者離れが当たり前となった9つの理由
- 教育体制と職場文化が古く、成長を感じにくい
- 給与水準が労働の割に見合っていない
- 労働時間と休みの少なさ
- 現場が遠く、通勤が過酷
- 転職しやすい時代背景
- 業界のデジタル化が遅れ、若者とのギャップが拡大
- 「汚い」「危険」「きつい」3Kというイメージが払拭されていない
- ネガティブな体験談だけが一人歩きしている
教育体制と職場文化が古く、成長を感じにくい

建設業、とくに中小・零細企業では、未経験で入社しても「見て覚えろ」が当たり前という職場が依然として多く見られます。業務マニュアルや体系的な研修制度が整っている企業は少数派で、右も左もわからないまま現場に放り込まれるようなケースも少なくありません。
大手ゼネコンのような企業では、施工管理職などにおいて研修体制がしっかりしている場合もありますが、弊社のような下請け企業で、実際に手を動かす作業員として働く場合は、とにかく現場に出て、先輩社員の動きを見ながら感覚で覚えるというのが実情です。
確かに、経験がものをいう世界であることは事実です。しかし、その“先輩方”自身も、昭和の時代に怒鳴られながら仕事を身につけてきた世代。腕前は確かでも、「教える」というスキルはまた別物です。
そのため、現場には質問しづらい雰囲気があり、必要以上にプレッシャーを感じてしまう若者も少なくありません。
成長の実感が得られず、評価もあいまいな環境では、自分の未来を描きにくくなり、やりがいや希望を見出せなくなっていきます。結果として、それが早期離職につながってしまうのです。
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給与水準が労働の割に見合っていない

建設業は体力的な負担が大きく、暑さ・寒さ・危険と常に隣り合わせの仕事です。にもかかわらず、他業種と比べて初任給が特別高いわけではなく、昇給ペースもゆるやかな企業が多いのが現実です。
たとえ現場経験を重ね、資格を取得しても、給与にしっかりと反映されるとは限りません。特に中小企業では、評価制度が整っておらず、経営者の裁量で給与や賞与が決まるケースも多く見られます。
その結果、「これだけ働いているのに、なぜこれしかもらえないのか」と感じ、報酬と労力のバランスに疑問を抱く若者は少なくありません。
高収入を得ている人も中にはいますが、それはごく一部の例外です。
多くの若手社員は、日々のきつい労働に対して得られる対価が見合っていないと感じ、将来への希望が持てなくなった時点で、転職や離職を選ぶというのが実態です。
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労働時間と休みの少なさ

建設業界では、早朝出勤、残業、土曜出勤など、不規則な勤務体系が一般的であり、週5日勤務・週2日休みの一般的な働き方とは大きく異なる場合が多くあります。
このような勤務形態により、「休みが取れない」「家族や友人と予定が合わない」「心身が休まらない」といった声が多く聞かれ、生活の質そのものが低下していることに不安を感じる若者も少なくありません。特に現代の若年層は、給与よりもワークライフバランスを重視する傾向が強く、過酷な働き方は敬遠される傾向にあります。
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。この規制により、時間外労働は原則として月45時間、年360時間以内とされ、臨時的・特別な事情がある場合でも、特別条項付き36協定を締結することで、月100時間未満(休日労働含む)、2~6か月平均で80時間以内、年間720時間以内といった上限が設けられています。
しかし、実際の現場では、これらの規制が十分に守られていないケースも見受けられます。見込み残業として処理されたり、休日出勤が常態化していたりと、労働基準法的にグレーな働き方を強いられているという声もあります。
ある中小企業の経営者は、36協定に否定的な立場を取り、「働きたい人、稼ぎたい人が稼げなくなる」と述べていました。確かにその考えも一理ありますが、こうした考え方は、労働者の健康や生活の質を守るという法律の趣旨を理解していないとも言えます。
現場が遠く、通勤が過酷

建設業は現場ごとに勤務地が異なるため、通勤時間や移動距離が日によって大きく変わるという特徴があります。
中には、会社に一度出勤したあと、片道2~3時間以上を車で移動して現場に向かうケースもあり、「毎日の移動だけで体力を奪われる」と感じる人も少なくありません。
現場では朝の朝礼から1日が始まるため、それに間に合わせるには会社をかなり早い時間に出発しなければならず、生活リズムへの負担は大きくなります。加えて、建設業者自体が減少していることもあり、会社から遠方の現場へ配属されるケースも増えているのが実情です。
特に若手や新入社員にとっては、集合時間が早く、帰宅も遅い生活が長期的に続くこと自体が大きなストレスとなり、結果的に現場への通勤条件そのものが離職理由につながることもあります。
転職しやすい時代背景

現代の若者は、ひとつの業界や企業に縛られる価値観を持っていません。未経験からでも始められる職種が増え、より条件の良い職場にすぐに移れる柔軟な環境が整っています。
それは他業種に限らず、同じ建設業界の中でも、コンプライアンスや待遇が整った大手企業へ転職するという選択肢にもつながっています。
「建設業で働きたい」という意思を持っていたとしても、「この職場では長く続けられない」と感じた時点で、より働きやすい企業に移ることが合理的な判断とされる時代です。かつては「辞める=根性なし」と見られがちでしたが、今では“より良い選択をすること”が正当化される価値観が広まりつつあります。
そもそも、現代は終身雇用でもなければ年功序列でもない時代です。
たとえ大手企業であっても、40代で年収1000万円、50代で部長職といった“人生のレール”が約束されているわけではなく、むしろ早期退職を求められるケースも増えてきています。そうした中で、「ひとつの会社で粘り強く頑張ることが本当に正解なのか?」と疑問を持ち、自分の価値を見極めながら柔軟にキャリアを選ぶ若者が増えるのも、当然の流れと言えるでしょう。
さらに、若者そのものが貴重な戦力とされる時代にもなっています。
2025年3月時点の厚生労働省データによれば、有効求人倍率は約1.26倍。これは、求職者1人に対して1.26件の求人があるという意味であり、企業側の“人材確保の競争”が続いていることを示しています。
とくに人手不足が深刻な業界では、若手人材の確保が企業存続の鍵にもなっており、今や“若者の取り合い”と言っても過言ではありません。
このような時代背景を踏まえれば、企業は「若者が自然と定着する」ことを期待するのではなく、“選ばれる企業”として、働きやすさ・教育体制・待遇の改善に本気で向き合う必要があるのです。

我らリーマンショック世代とは大違い・・・
業界のデジタル化が遅れ、若者とのギャップが拡大


今もなおFAX、紙の図面、電話での連絡が主流の会社もあり、スマートフォンやチャットツール、クラウド共有といった現代的な業務手法の導入は、いまだ遅れているケースが多く見られます。
こうした環境は、デジタルに慣れた若者にとっては大きなフラストレーションにつながります。
非効率なやり取りや情報の断絶が日常化しており、「こんな時代遅れの仕事は続けられない」と感じてしまうことも少なくありません。
もちろん、中小企業にとってはすぐに最新技術を導入するのが難しい面もあるでしょう。しかし、「新卒で入社したIT企業で10年以上前に使っていた技術を、いまようやく導入している」といったことを目の当たりにし、業界全体としての遅れが目立っていると思わざるを得ませんでした。
とはいえ、ここ数年で建設業にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は着実に訪れつつあります。電子帳簿保存法やインボイス制度の導入を契機として、安全書類のWEB提出やクラウド管理の普及など、デジタル化への動きが少しずつ加速しています。
ただし、その変化に現場の人材が追いついていないケースも多く、「若者だからデジタルに強いだろう」といった理由で、ツールの設定や周囲のサポートまで押し付けられてしまう状況も見受けられます。結果として、若手の時間と労力が搾取される構造ができあがってしまうこともあるため、注意が必要です。
デジタル化の遅れは、単なる業務効率の問題にとどまらず、「働きがい」や「職場としての魅力」にも直結する重要な課題であると言えるでしょう。
「汚い」「危険」「きつい」3Kというイメージが払拭されていない


建設現場は、泥・ホコリ・騒音・重機といった要素に囲まれた環境であることから、衛生面や安全面で敬遠されやすい側面があります。実際には、安全対策や現場整備が年々進み、衛生管理や危険への意識も高まりつつあるのですが、世間一般の認識はそこまで追いついていないのが実情です。
特に若年層にとっては、「汚い・きつい・危険」のいわゆる“3K”のイメージが根強く残っており、その結果として“そもそも興味を持たれない”という構造的な問題が生じています。どれだけ働き方改革が進み、制度が整備されてきたとしても、他の業界と比べると、依然としてネガティブな印象が強く残っているのは否めません。
実際、建設業では重労働が多く、熱中症による死亡事例が毎年報告されているなど、完全に払拭しきれていない実態もあります。そのため、今後は「安全になった」「働きやすくなった」と言葉で伝えるだけでなく、実際の現場環境や労働条件を見える形で改善・発信していくことが求められています。
こうしたイメージのギャップをいかに埋めていくかが、今後の建設業界の大きな課題だと言えるでしょう。
ネガティブな体験談だけが一人歩きしている
SNSや掲示板では、「建設業は地獄だった」「パワハラで辞めた」といった強烈な体験談が拡散されやすく、ネガティブな印象ばかりが目につくのが現状です。確かに、過酷な現場や理不尽な人間関係が存在するのは事実ですが、それがあたかも業界全体の常識であるかのように受け取られ、新しい人材が挑戦する機会すら失われていることが問題です。
実際には、建設業の働きやすさは“業界全体の問題”というより、「会社による」「人による」ところが非常に大きいと感じています。これはどの仕事にも言えますが、同じ職種でも、先輩社員や上司、同僚の姿勢、そして社風によって、働きやすさには大きな差があるのが現実です。
一方で、現場でやりがいや達成感を持って働いている人の声は、なかなか外に出てきません。
ポジティブな経験談は可視化されにくく、拡散もされにくいため、ネガティブな印象だけが独り歩きする構造になってしまっています。
さらに、SNSで他人の評価が可視化される時代背景も、建設業を避ける動機の一因となっています。
「建設業で働いていると周りからどう見られるか?」「同級生がオフィスワークしてるのに、自分だけ泥だらけ?」といった社会的評価を気にする若者の心理も無視できません。本人にとっては合っていたかもしれない仕事であっても、“選択したこと自体が評価される”今の時代では、外部の視線が意思決定に影響するのです。
結果として、「建設業=やばい」「辞めたほうがいい」といった先入観が固定化され、マッチするはずだった職場との出会いの可能性すら閉ざされていることは、業界にとっても大きな損失だと言えるでしょう。
10年後の建設業はどうなる?若者がいない未来の現実


建設業界では、若者の定着が難しく、入職者数も減少傾向にあります。このままの状態が続けば、10年後には主力層が60〜70代に突入し、物理的に働ける人材が不足するのは避けられません。また、技術の継承が進まず、熟練者の持つ“感覚”や“段取り”が引き継がれないまま消えていく可能性もあります。結果として、現場の安全性・施工品質・工期管理など、あらゆる面で支障が出る未来が予想されます。
さらに、2024年の建設業の倒産件数は1,932件に達し、前年度より10.5%増加。従業員の転退職による「人手不足倒産」も全業種の中で建設業が一番多い結果となっています。
※参考:帝国データバンク「倒産集計 2024年度報(2024年4月~2025年3月)」
このような状況下で、若者の採用・定着が難しい企業から順に淘汰されていくことが予測されます。現場が回らなくなれば、受注を断念せざるを得ず、そのまま廃業に追い込まれる――そんな連鎖が起きても不思議ではありません。建設業は、人々の生活に欠かせない社会インフラを支える仕事です。その業界が機能不全に陥れば、私たちの暮らしそのものに深刻な影響が及ぶことになります。
とはいえ、建設業の未来が全て暗い訳ではありません。すでに外国人技能実習生や特定技能人材の受け入れが進んでおり、多くの現場では彼らが欠かせない戦力となっています。今後も、国籍を問わず多様な人材が建設業に参入し、“人材の国際化”が進むことで一定の労働力不足は補われる可能性があります。
また、若手人材が希少になるにつれ、技術力のある職人や施工管理者の市場価値は確実に高まるでしょう。施工の全体像を理解し、安全と品質を担保できる技術者は、単なる作業者ではなく“稼げる専門職”として再評価される未来も十分にあり得ます。
つまり、若者が減るという事実の先には、「誰でもできる仕事」ではなく、“やれる人が評価される仕事”へと建設業の立ち位置が変わっていく可能性があるのです。
もちろん、全体としてはまだ課題が多く、厳しい現実があるのは事実です。しかし、建設業が“変わろうとしている”こともまた事実。DX化の推進、安全基準の厳格化、労働環境の改善といった変化の芽が確実に広がっています。
10年後、建設業が「やってよかった」と胸を張れる職業であるためには、今ここで、企業・業界・社会がそれぞれの立場から本気で変わっていく必要があるのです。
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若者離れにどう向き合うか?これからの建設業ができること


若者の建設業離れは、「仕方がない」では済まされない問題です。
しかし見方を変えれば、それは“選ばれない理由”がはっきりしているということでもあります。
だからこそ、今のうちにひとつひとつの課題に向き合い、「若者が働きたいと思える業界」へ変えていく努力が求められています。
建設業ができること
- 育成方法と現場文化の見直し
- キャリアの“見える化”と将来像の提示
- ワークライフバランスの本気改善
- デジタル化は「便利」より「ムダのない仕事」へ
- 社会に向けたポジティブな情報発信
育成方法と現場文化の見直し
「見て覚えろ」「怒鳴って教える」といった昭和的な教育スタイルからの脱却は、若者離れを防ぐうえで最も重要な課題のひとつです。昔ながらのやり方で一人前になってきたベテランにとっては「自分もそうだった」という思いがあるかもしれませんが、時代が変われば、人材育成の在り方も変わっていく必要があります。
若手が安心して学び、着実に成長できるようにするには、業務マニュアルの整備や、指導担当となる“メンター制度”の導入、定期的なフィードバックや目標設定の共有といった、仕組みの整備が欠かせません。属人的な指導や気分に左右される教育ではなく、体系化された“教える文化”を現場に根付かせることが、長期的な若手定着のカギになるのではないでしょうか。
さらに見落とされがちなのが、「教える側」への教育です。
どれだけ制度を作っても、教える立場にある年配社員や上司がその重要性を理解していなければ、現場は変わりません。そのため、外部の研修や人材育成セミナーへの参加、コミュニケーションスキルやコーチング手法を学ぶ機会を設けるなど、“教える力”そのものを育てる取り組みも今後ますます求められていくでしょう。
キャリアの“見える化”と将来像の提示
若者が長く働く上で重要なのは、「この先に何があるのか」という将来のビジョンが描けるかどうかです。
建設業では「とにかく現場で頑張ればいつかは一人前」といった曖昧な評価基準が多く、若者は努力が正しく評価されているのか、自分が今どこにいるのか分からず、不安を抱えたまま働いているケースも少なくありません。
そのため、業務スキルの習得段階や資格取得の目標、昇給・昇格のモデルケースなど、キャリアのステップを“見える化”することが欠かせません。たとえば「入社3年目で○○の資格取得」「5年目でリーダー職に昇格」「施工管理技士の取得で年収UP」など、明確な指標と報酬の連動があることで、若手は自分の努力に意味を見出しやすくなります。
キャリアの可視化は、安心感やモチベーションの維持にも直結する施策です。「頑張った先に自分の未来がある」と実感できる環境づくりこそが、若手の離職を防ぐための大きな柱になります。
ワークライフバランスの本気改善
「体力勝負」「長時間労働が当たり前」という働き方は、今の若者には受け入れられにくいのが現実です。
特に若年層は、給与や昇進以上に“自分の時間を持てること”を重視する傾向があり、生活の質が確保できなければ、どれだけ仕事にやりがいがあっても定着しません。
建設業にも2024年から36協定が適用され、労働時間の上限が法的に定められるようになりました。しかし現場では、見込み残業や休日出勤の常態化など、“法令上はグレー”な働き方が未だに散見されるのが実情です。
制度を形だけで終わらせず、休暇取得の奨励・残業削減の取り組み・工程の見直しなど、経営層が本気で改革に取り組む姿勢が問われます。「安心して休める現場」「家族や自分の時間も大切にできる会社」として評価されることが、今後の人材確保に直結していくでしょう。
デジタル化は「便利」より「ムダのない仕事」へ
現代の若者は、業務効率や時間の使い方に対して非常に敏感です。
「何のためにやるのか分からない作業」「誰のためでもない形式的な手続き」など、意味のない時間にストレスを感じやすい傾向があります。いわゆる“タイパ”(タイムパフォーマンス)を重視する価値観が浸透している今、働く環境そのものが合理的かどうかが、職場選びにおける大きな基準となっているかもしれません。
こうした背景から、デジタル化は単なる業務効率化だけではなく、“若手がストレスなく働ける職場”をつくるための手段として捉えることもできます。現場での写真報告、日報作成、勤怠管理、図面の確認など、スマホ1台で完結できる業務を積極的に整備することで、作業そのものの手間や移動時間も減らせます。必然的に会社全体の効率も上がります。
デジタル化は、“スマートに働ける職場”を実現するための手段。その先には、「この会社は自分の時間や思考を尊重してくれる」と感じてもらえる、新しい世代に選ばれる建設業の姿が見えてくるはずです。
社会に向けたポジティブな情報発信
現在、ネット上には「建設業=ブラック」「怒鳴られる」といったネガティブな体験談が目立ちますが、実際にはやりがいを感じて働く若手や、親身に教えてくれる先輩がいる職場も存在します。ただ、そうしたポジティブな声は可視化されにくく、業界全体への誤解が払拭されないのが現状です。
だからこそ、企業自身がSNSやホームページを活用し、社員の働き方や成長の様子を発信することが重要です。実際、私の勤め先も「ホームページなんて必要ない」という考えでしたが、開設後は若者の応募が増え、平均年齢50歳超だった職場が30歳前後にまで若返りました。
まずは「存在を認識してもらうこと」。それが、若者に選ばれる建設業の第一歩だと実感しています。
総括:【危機!】なぜ建設業の若者離れは当たり前になったのか?9つの構造的要因を徹底解説
建設業の若者離れは、構造的な課題と時代の価値観の変化が複雑に絡み合った結果です。
「見て覚えろ」「長時間労働は当たり前」といった古い文化や、給与・評価制度の曖昧さ、非効率な業務体制が、若手の離職や忌避感を生んでいます。
しかし同時に、若者の価値観に合わせて変化できた企業は、確実に成果を出し始めています。
現場文化の見直しや、キャリアの見える化、デジタルの活用、SNSによる発信など、できることから着手することで、若者に「ここで働きたい」と思ってもらえる職場づくりは可能です。
外国人労働者の増加や、技術者の価値上昇といった変化の兆しもあり、悲観するだけではなく、“今こそ変われるチャンス”が到来しているとも言えます。
建設業が「若者に選ばれる業界」として再評価される未来のために、今できることに一つずつ取り組んでいきましょう。
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