建設業では、工事の規模が大きくなれば大きくなる程、多くの下請企業と一緒に仕事をすることが多いです。専門的な仕事を必要とする工事も多く、どうしても重層下請構造になりやすい特性を持っています。
多くの業者が出入りする現場で責任と役割分担を明確にするために、各下請負業者の施工分担関係が一目でわかるようにした図を施工体系図と呼びます。
今回は、施工体制台帳のひとつである施工体系図について、書き方を含めて解説します。
この記事を書いた人
事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
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目次
施工体制図とは
施工体系図とは、特定の条件が揃った工事において、施工体制台帳と一緒に作成することが義務付けられている書類です。施工体制台帳に基づいて、工事に携わる業者の施工分担関係が一目でわかるよう、図で表したものです。発注者から工事を請け負った元請負企業が作成します。
施工体制図はどんな場合に作成する?
施工体制図、及び施工体制台帳は特定の条件がそろった場合に作成する義務が生じます。
公共工事の場合、発注者から直接建設工事を請け負った元請企業(特定建設業者)が、下請負契約を締結した際に作成します。
民間工事の場合、発注者から直接請け負った元請企業(特定建設業者)が、工事を施工するために締結した下請契約の請負代⾦の総額が4,500万円(建築⼀式⼯事︓7,000万円)以上になるときに作成することが義務づけられています。
事務員たなか
うーん…文字だけだとすんなり入ってこない…
下記のフローチャートを参考に、
自社が施工体系図を作成すべきかどうか判断してみてくださいね!
建設業法施行令の一部を改正する政令(令和4年政令第353号)により、施工体制台帳及び施工体系図の作成を義務付ける下請代金の額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)に引き上げられました。令和5年1月1日から施行されていますので、注意してください。
施工体系図の目的
施工体系図は、主に以下の3点を目的として作成されています。
施工体系図の目的
- 下請け業者も含めたすべての工事関係者が建設工事の施工体制を把握するため
- 建設工事の施工に対する責任と工事現場における役割分担を明確にするため
- 技術者の適正な配置確認のため
施工体系図の掲示場所と掲示方法
施工体系図は、書類を作成・提出して終わりではなく、掲示する必要があります。
施工体系図の掲示場所と掲示方法
- 公共工事の場合
工事関係者が見やすい場所と公衆が見やすい場所に掲示しなければならない
(公共工事入札契約適正化法第15条第1項) - 民間工事の場合
工事関係者が見やすい場所に掲示しなければならない(法第24条8第4項)
公共工事の場合と民間工事の場合で、
掲示方法が変わりますので注意してください。
施工体系図の書き方
施工体系図の概要が分かったところで、書き方について解説します。
施工体系図は、工事に携わる建設業者がどのような分担で施工するのかを樹形図の形で記載します。
いつもどおり、「法令上、記載しなければならない事項が網羅されていれば、様式はどういった形であっても建設業法上、問題ございません」方式なので、今回は国土交通省様式に基づいて解説したいと思います。
いい加減、統一してくれ!
(100万回言ってる)
施工体系図枠外の書き方
発注者名
工事を発注した会社名を記入します。
工事名称
元請会社が担当する工事名称または工事内容を記入します。
工事名称例
- 〇〇ビル新築工事
- 〇〇街路築造工事
工期
元請会社が契約をした工事に必要な工期を記入します。「自」には工事開始日、「至」には工事終了日を記入します。
施工体系図左側の書き方
元請名・事業者ID
元請会社名を記入します。
建設キャリアップシステムに登録している場合は、「事業者ID」も記入します。事業者IDは14桁の番号です。建設キャリアアップシステムにて事業者登録した際に、ハガキやメールで通知が来ていると思うので、確認してください。
監督員名
下請企業を監督するために監督員を置く場合は、監督員の氏名を記入します。
監理技術者・主任技術者名
監理技術者または主任技術者の氏名を記入します。
主任技術者、管理技術者の設置要件
- 主任技術者
建設業者(許可業者)は、請負⾦額や元請・下請に関わらず、必ず主任技術者を設置しなければならない。 - 監理技術者
発注者から直接⼯事を請け負い(元請)、かつ4,500万円(建築⼀式⼯事の場合は7,000万円)以上を下請契約して施⼯する特定建設業者にあっては、主任技術者に代えて監理技術者を設置しなければならない。
つまり、民間工事で施工体系図を作成しなければいけない時点で
監理技術者を設置しなければならないってことか…
主任技術者や監理技術者になるには、
特定の資格や実務経験を有していないといけないから大変だなぁ…
監理技術者補佐名
監理技術者補佐の氏名を記入します。
一定の条件を満たし、監理技術者が複数の現場を兼務する場合には、監理技術者補佐を配置することで兼務が可能となる場合もあります。発注者によって、監理技術者補佐を配置できる条件が細かく定められている場合もあるので注意が必要です。
専門技術者名・担当工事内容
専門技術者を配置する場合は、専門技術者の名前と、専門工事の内容を記入します。
「土木一式工事」又は「建築一式工事」を受注し、その中で専門工事も自社で施工する場合は、専門技術者の配置が必要になります。
統括安全衛生責任者
統括安全衛生責任者の氏名を記入します。
下請負業者を含めて、常時50人(ずい道建設、橋梁建設など特定の仕事では30人)以上の労働者が就労する作業所で選任する義務があります。(労働安全衛生法第15条、同法施行令第7条)
副会長
元請業者以外の下請けから選出された者の名前を記入します。
共同企業体では、企業体を形成している事業者の名前を記入します。
元方安全衛生責任者
元方安全衛生責任者の氏名を記入します。
元方安全衛生管理者とは、統括安全衛生責任者が選任される事業所において、技術的事項の管理、統括安全衛生責任者の補佐業務をおこなう人を指します(労働安全衛生法第15条の2)。
施工体系図左側の書き方
工事内容
表の縦書欄〇〇工事には、担当する工事内容を記入します。
記載例
- 鉄筋工事
- 塗装工事
- 型枠工事
- 足場工事
会社名・事業者ID
右側の一番左の列は、元請会社と下請契約を結んだ一次下請会社名を記入します。
建設キャリアップシステムに登録している場合は、「事業者ID」も記入します。事業者IDは14桁の番号です。建設キャリアアップシステムにて事業者登録した際に、ハガキやメールで通知が来ていると思うので、確認してください。
一次会社を記入した一番左の列から、右に行く毎に二次会社・三次会社と続きます。
記入する項目は、どの下請企業も同一です。
代表者名
代表者名を記入します。
許可番号
建設業許可の許可番号を記入します。
一般 / 特定の別
建設業許可の「一般建設業」「特定建設業」のどちらかを選択します。
安全衛生責任者
安全責任者名を記入します。
安全衛生責任者とは、労働安全衛生法に定められている事業所での安全を管理する人のことです。資格は特に必要ありませんが、建設業や造船業の特定事業に該当する混在作業においては、元請企業と下請企業の従業員の合計が常時50人以上の場合、現場に常駐している必要があります。建設業では、職長や現場代理人・主任技術者と安全衛生責任者を兼任するケースが一般的です。
主任技術者・特定専門工事の該当
主任技術者の名前を記入します。
建設業者(許可業者)は、請負⾦額や元請・下請に関わらず、必ず主任技術者を設置しなければなりません。
また、公共性のある重要な建設工事(元請業者との請負金額が4,000万(建築一式工事の場合は8,000万)円を超える請負工事のうち戸建住宅を除くほとんどの工事のこと)の場合は、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していなければなりません。(=専任)
上記に該当する場合は、「特定専門工事の該当」項目の「有」を選択します。
専門技術者・担当工事内容
専門技術者を配置する場合は、専門技術者の名前と、担当工事の内容を記入します。
「土木一式工事」又は「建築一式工事」を受注し、その中で専門工事も自社で施工する場合は、「現場ごと」「担当する業種ごと」に専門技術者の配置が必要になります。
工期
建設工事の契約書に記載された工期を記入します。
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まとめ
施工体系図について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
配置しなければならない技術者や責任者の種類が多く混乱してしまうこともありますが、下請負企業から提出される安全書類(下請負編成表)を元に作成することができるので、確認しながら転記する作業となります。
ただし、下請負企業も記入の仕方が怪しいところがありますので、要点はしっかり確認したほうが良いかもしれません。特に配置が義務付けられている役職については、しっかり確認してくださいね。
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