「統括安全衛生責任者って、結局なにをする人?」「うちの現場は10人未満だけど、必要なの?」
そんな疑問を感じたことはありませんか?
統括安全衛生責任者は、建設現場や製造現場などで労働災害を防ぐために、安全衛生活動を統括・管理する重要な役割を担う存在です。とはいえ、どの規模の工事から必要なのか、10人未満や50人未満の小規模な現場でも配置しなければならないのか、判断に迷うことも少なくありません。
本記事では、統括安全衛生責任者の役割・選任条件・人数規模による必要性の違い、関連する法的ポイントまで、やさしく解説します。小規模現場を含め、現場での判断材料を整理したい方はぜひ参考にしてください。
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
統括安全衛生責任者とは?【わかりやすく解説】

- 統括安全衛生責任者とは?
- 統括安全衛生責任者における一定規模の工事とは?10人未満・50人未満のケースは?
統括安全衛生責任者とは?
統括安全衛生責任者は、建設業または造船業の特定事業の現場において、一定規模以上の混在作業が発生する場合に元請企業より選任する者を指します。労働安全衛生法第15条では、一定規模以上の混在作業においては、労働災害防止のため、元方事業者が統括安全衛生責任者を、関係請負人が安全衛生責任者をそれぞれ選任する必要があると定められています。
第十五条一項労働安全衛生法 第15条1項
事業者で、一の場所において行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもの(当該事業の仕事の一部を請け負わせる契約が二以上あるため、その者が二以上あることとなるときは、当該請負契約のうちの最も先次の請負契約における注文者とする。以下「元方事業者」という。)のうち、建設業その他政令で定める業種に属する事業(以下「特定事業」という。)を行う者(以下「特定元方事業者」という。)は、その労働者及びその請負人(元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によつて行われるときは、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負契約の当事者である請負人を含む。以下「関係請負人」という。)の労働者が当該場所において作業を行うときは、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、第三十条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。ただし、これらの労働者の数が政令で定める数未満であるときは、この限りでない。
第十五条三項労働安全衛生法 第15条3項
第三十条第四項の場合において、同項のすべての労働者の数が政令で定める数以上であるときは、当該指名された事業者は、これらの労働者に関し、これらの労働者の作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため、統括安全衛生責任者を選任し、その者に元方安全衛生管理者の指揮をさせるとともに、同条第一項各号の事項を統括管理させなければならない。この場合においては、当該指名された事業者及び当該指名された事業者以外の事業者については、第一項の規定は、適用しない。

では、「一定規模」とはどのような工事をさすのでしょう?
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統括安全衛生責任者における一定規模の工事とは?10人未満・50人未満のケースは?
統括安全衛生責任者を配置しなければならないのは、同一の場所で元請・下請を合わせて常時50人以上の労働者が作業する一定規模の工事です。
この「50人以上」には、元請企業はもちろん、重層的な下請構造の末端まで含まれる全作業員がカウントされます。つまり、下請企業の作業員を含めて50人を超える場合、統括安全衛生責任者の配置は義務となります。
また、ずい道工事・圧気工事・橋梁の一部など、特定の工事では常時30人以上の労働者が従事する場合にも配置が必要となるため、工事の種類にも注意が必要です。
一方で、10人未満や50人未満の小規模工事では、法的には統括安全衛生責任者の配置義務は原則ありません。ただし、安全管理体制の一環として任意で配置されるケースもあります。





工事の種類・人数によって、元請から「統括安全衛生責任者」を、下請から「安全衛生責任者」を配置することになります。



今回は、統括安全衛生責任者と安全衛生責任者に着目して図式化しましたが、労働者数が要件以下の場合でも、「店社安全衛生管理者」という管理者が必要な場合もあるので、あわせて確認してください。
安全衛生推進者と衛生推進者の違いとは?資格要件・選任のポイントをわかりやすく解説また、統括安全衛生責任者を配置する場合は元請企業から「元方安全衛生管理者」も配置しなければなりません。統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者・安全衛生責任者・安全衛生推進者等と類似した言葉が多いので、別記事にて、解説しています。



統括安全衛生責任者は、「施工体系図」に記述する箇所があります。忘れずに明記するようにしてくださいね。
あわせて読みたい!各書類の書き方はコチラから!
統括安全衛生責任者の役割


統括安全衛生責任者の職務は、労働安全衛生法第三十条に記される以下の業務について、元方安全衛生管理者を指揮して次の事項について統括管理することです。
- 協議組織の設置及び運営
- 作業間の連絡及び調整
- 作業場所の巡視
- 関係請負人が行う労働者の安全衛生教育に対する指導及び援助
- 仕事の工程に関する計画、作業場所における機械、設備等の配置計画を作成及び当該機械、設備等を使用する作業に関し関係請負人が安衛法又はこれに基づく命令の規定に基づき講ずべき措置についての指導
- 1~5に掲げるもののほか、当該労働災害を防止するため必要な事項
※参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト」



③の作業場所の巡視については、労働安全衛生規則で「毎作業日に少なくとも一回、これを行なわなければならない。」と定められています。
具体的な措置としては、「作業前の点検実施」「作業計画の策定」「安全衛生教育の実施」「熱中症対策の実施」「健康診断の実施」「受動喫煙の防止対策」等、多岐にわたります。
統括安全衛生責任者の資格要件と選任条件


統括安全衛生責任者には、法律上の特別な資格や免許の要件は定められていません。 そのため、選任にあたって国家資格の取得が必須ということはなく、資格要件としては比較的ハードルが低いと言えます。
とはいえ、統括安全衛生責任者は現場全体の労働災害防止を目的とした安全衛生の統括管理・指揮を担う重要なポジションです。実際の現場では、統括的な視点と判断力が求められるため、所長や工事責任者といった経験豊富な現場管理者が選ばれるケースが多くなっています。
また、厚生労働省は「統括安全衛生管理に関する教育を受けた者のうちから選任するよう努めることが望ましい」と通知しています。 このため、明確な資格要件はないとはいえ、安全衛生に関する講習や教育を受けていることが実務上は推奨されています。
特に複数の業者・作業が混在する現場では、統括安全衛生責任者としての知識と判断力が安全体制の要となります。選任時には、資格ではなく経験・役職・教育歴などの総合的な条件を考慮することが重要です。
総括:統括安全衛生責任者の役割とは?10人未満・50人未満の現場でも必要なのかわかりやすく解説
統括安全衛生責任者は、建設現場における安全衛生管理の要であり、その役割は多岐にわたります。安全衛生計画の策定と実施、安全管理体制の構築と維持、関係者との連携など、多くの責任を担いながら、現場の安全を確保しています。必要な知識を持ち、実務経験を活かしながら、安全で健康な作業環境を作り上げる彼らの活動は、建設業において非常に重要なものです。今後も、統括安全衛生責任者の役割がさらに重視され、労働災害のない安全な現場が増えていくことを期待します。
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