建設業では、工事の分業化や専門化が進んでいるため、ひとつの現場に複数の下請業者が関わる「重層下請構造」になりやすい特徴があります。専門業者が加わることで効率的な施工が可能になる一方、管理の煩雑化や責任の所在が不明確になるリスクも抱えることになります。

こうした背景から、現場の施工体制を明確にするために必要なのが「下請負業者編成表」です。
しかし、「誰が作成するのか?」「いつまでに提出する?」「記載項目は?」と悩む場面も多いのではないでしょうか。
本記事では、下請負編成表の作成義務や書き方、実務上の注意点をわかりやすく解説します。
記事のポイント
- 下請負業者編成表とは?
- 誰が作成するか
- 下請負業者編成表の作成義務は?
- 下請負業者編成表の書き方
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
下請負業者編成表の作成義務とは?

- 下請負業者編成表とは?何のために必要?
- 下請負編成表は誰が作成する?
- 下請負編成表の作成義務と法的背景
下請負業者編成表とは?何のために必要?
下請負業者編成表とは、工事に関わるすべての下請負業者を一覧にまとめた書類で、元請業者が施工体制を明確にするために作成・提出するものです。一次下請からさらにその下の二次・三次下請まで含め、会社名や担当工事内容、工期などを整理することで、現場における責任の所在や安全衛生管理の体制を明確にする役割を果たします。
建設業では、専門業者による分業が一般的なため、現場が重層的な下請構造になりやすいという特徴があります。下請業者が多数関与することで、工事の効率化や品質向上が図れる一方、施工体制が不透明になり、トラブルや責任の所在があいまいになるケースも少なくありません。
そのため、安全書類の一環として、下請負業者編成表を提出することで、関係業者の全体像を把握し、安全管理や法令順守の徹底を図ることが求められています。
とくに一次下請業者は、現場に入るすべての協力業者の情報を適切に把握・管理する責任を担うことになります。
下請負編成表は誰が作成する?

下請負業者編成表は、一次下請負企業が作成し、元請企業に提出するのが原則です。
これは、実際に現場に入場する協力業者(再下請など)の情報を一次下請が取りまとめ、元請が施工体制を把握・管理するために必要な資料となるためです。
なお、二次下請以下の業者が自ら下請負編成表を作成することはありません。
あくまで一次下請が自社より下位の協力業者情報をとりまとめて、編成表を作成・提出します。
元請企業は、提出された下請負編成表をもとに施工体制台帳の一部である「施工体系図」を作成します。再下請負通知書との整合性も必要となるため、会社名や担当工事、工期などの記載は正確に行うことが求められます。
下請負編成表の作成義務と法的背景
下請負業者編成表は、単なる任意書類ではなく、建設業法に基づいて作成が義務づけられる「施工体制台帳」の一部を構成する重要な資料です。
施工体制台帳とは、一定規模以上の工事において元請業者が作成・現場に備え付けることが法律で定められているもので、その中に現場で働くすべての下請業者の情報を明記する必要があります。この台帳を正確に作るためには、一次下請から提出される下請負業者編成表が不可欠となるのです。
公共工事では、下請契約の有無に関わらず施工体制台帳の作成が必要とされており、民間工事においても、下請契約額の合計が5,000万円以上(建築一式は8,000万円以上)の場合には、施工体制台帳の作成が義務となります。
つまり、元請が法令に基づき提出・備え付けるために、一次下請による編成表の提出が実質的に“義務”となっているのが現場の運用実態です。この編成表がなければ、施工体系図の作成や安全体制の確認が行えず、現場運営に支障をきたすため、実務上は「提出必須書類」として扱われています。
令和7年に施工体制台帳の作成要件が変わっています。こちらの記事もあわせてチェック!
下請負編成表の書き方

それでは、下請負編成表の書き方について解説します。
下請編成表の書き方
- 工事
- 会社名
- 安全衛生責任者
- 主任技術者
- 専門技術者(担当工事内容)
- 工期
1.工事

工事名称ではなく、担当する工事の内容を記載します。
基本的には、再下請負通知書に記載された内容を転記します。
記載例
- 鉄筋工事
- 塗装工事
- 型枠工事
- 足場工事
2.会社名

一次下請企業である自社、二次下請負会社ともに、会社の正式名称を記載します。
3.安全衛生責任者
現場の安全衛生状況を把握し、指導をおこなう責任者の氏名を記入します。
建設業や造船業の特定事業に該当する現場において、元請企業と下請企業の従業員の合計が常時50人以上の現場では選任しなければなりません(工事の種類によっては30人以上の場合も)。
選任するにあたって必要となる資格は特にありませんが、職長・安全衛生責任者の特別教育を受講するよう求められるケースも多く、職長と安全衛生責任者を兼任するケースが一般的です。
再下請負通知書にも安全衛生責任者名を書く欄がありますので、差異が生じないよう注意して転記しましょう。
安全衛生責任者についての詳しい要件はコチラで解説しています!
4.主任技術者
主任技術者の名前を記載します。
建設業許可を受けた会社は、工事現場における施工の技術上の管理をつかさどる者として、「主任技術者」を配置しなければなりません。
軽微な建設作業=500万円未満の工事の場合は、原則として建設業許可が不要な為、主任技術者を配置する必要はありません。
建設業許可:有り | 建設業許可:無し | |
請負金額500万円以上 (建築一式工事の場合、1,500万円以上) | 必要 | 工事が不可 |
(建築一式工事の場合、1,500万円未満) | 請負金額500万円未満必要 | 不要 |
再下請負通知書にも安全衛生責任者名を書く欄がありますので、誤りがないよう注意して転記しましょう。
主任技術者についての詳しい要件はコチラで解説しています!
5.専門技術者
専門技術者名を記載します。
請け負った一式工事に含まれる自社施工の専門工事が500万円以上の場合、必要な技能や実績を持つ専門技術者を配置しなければなりません。資格は主任技術者と同じなので、主任技術者と兼任する場合が多いです。
再下請負通知書にも安全衛生責任者名を書く欄がありますので、誤りがないよう注意して転記しましょう。
6.担当工事内容
5.専門技術者が担当する工事について、具体的に書き込みます。
記載例
- 給排水設備工事
- 冷暖房設備工事
7.工期
請負った工事の工期を記入します。
元請業者が受注している工期全体ではなく、自社が担当する工事の期間を記入しますので注意してください。

自社情報を記載したら、二次三次・・・と同様に記載していきます。
編成表の整備
すべての下請負業者について記載しましたら、表を実践で繋いでいきます。


テンプレートはすべて点線になっているので、下請負業社を記述した場合は、罫線の設定で実線に編集してください。
総括:【安全書類】下請負業者編成表の作成義務とは?誰が作る?書き方と注意点まとめ
下請負編成表の書き方について解説しました。 一次下請負企業が作成した下請負編成表を元に、元請企業は施工体制図を作成することになります。 記入する内容はすべて再下請負通知書に記載しているので、転記ミスのないよう注意しながら進めてくださいね。



下請業者が増えれば増えるほどミスが多くなるので、
再下請負通知書と整合性が取れているか確認が必須です!
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