施工体系図の掲示は義務?作成ルールと現場で求められる対応・是正指導リスクも解説

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建設業では、工事の規模が大きくなるほど、多くの下請企業と協力して作業を進める必要があります。専門性の高い工種も多く、必然的に重層下請構造になりやすいという特性があります。

このような複雑な体制の中で、各業者の責任や役割分担を明確にすることは、円滑な工事運営や安全管理のうえで非常に重要です。そこで活用されるのが、施工体制台帳の一部である「施工体系図」です。
施工体系図は、元請から下請・孫請までの施工分担関係を一目で把握できる図であり、現場での情報共有や法令遵守にも欠かせません。

本記事では、施工体系図の掲示義務の有無や作成ルールを整理しながら、現場で求められる対応や記載方法のポイントについて、わかりやすく解説します。

現場管理や安全書類の作成を担当されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)


建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次

施工体系図とは?目的と役割をわかりやすく解説

  1. 施工体系図はどんな場合に作成する?対象工事と記載タイミング
  2. なぜ必要?施工体系図の目的と現場での役割とは
  3. 施工体系図の掲示は義務?作成が必要なケースと法的根拠
施工体系図とは、特定の条件が揃った工事において、施工体制台帳と一緒に作成することが義務付けられている書類です。施工体制台帳に基づいて、工事に携わる業者の施工分担関係が一目でわかるよう、図で表したものです。

発注者から工事を請け負った元請負企業が作成します。

施工体系図はどんな場合に作成する?対象工事と記載タイミング

施工体制図、及び施工体制台帳は特定の条件がそろった場合に作成する義務が生じます。
公共工事の場合、発注者から直接建設工事を請け負った元請企業(特定建設業者)が、下請負契約を締結した際に作成します。
民間工事の場合、発注者から直接請け負った元請企業(特定建設業者)が、工事を施工するために締結した下請契約の請負代⾦の総額が5,000万円(建築⼀式⼯事︓8,000万円)以上になるときに作成することが義務づけられています。※建設業法改訂により、令和7年2月1日、4,500万円(7,000万円)から引き上げられました。
事務員たなか

うーん…文字だけだとすんなり入ってこない…

事務員たなか

下記のフローチャートを参考に、
自社が施工体系図を作成すべきかどうか判断してみてくださいね!

令和7年2月に施行された「建設業法施工令及び国立大学法人法施行令の一部を改正する政令」により、施工体制台帳及び施工体系図の作成を義務付ける下請代金の額が4,500万円(建築一式工事の場合は7,000万円)から5,000万円建築⼀式⼯事︓8,000万円)に引き上げられました。

令和7年の改正内容について詳しくはコチラ!

事務員たなか

民間工事で下請代金の額が高額でない場合

なぜ必要?施工体系図の目的と現場での役割とは

施工体系図は、単なる形式的な書類ではなく、現場に関わるすべての関係者が施工体制を正しく理解し、安全かつ円滑に工事を進めるために重要な役割を担っています。主に、以下の3つの目的で作成されます。
施工体系図の目的
  • 下請け業者も含めたすべての工事関係者が建設工事の施工体制を把握するため
  • 建設工事の施工に対する責任と工事現場における役割分担を明確にするため
  • 技術者の適正な配置確認のため
このように、施工体系図は単なる掲示物ではなく、現場の安全管理や法令遵守を支える基礎資料として機能しています。現場で働くすべての人が、施工体制や責任関係を一目で確認できる状態を整えておくことが、トラブルの未然防止や円滑な工事運営につながります

そのため、掲示義務の有無にかかわらず、実務上は常に見やすい場所への掲示と、正確な情報の記載が求められると言えるでしょう。

施工体系図の掲示は義務?作成が必要なケースと法的根拠

施工体系図は、安全書類として作成・提出するだけで完了ではなく、現場に掲示することが求められます
掲示の義務については、公共工事と民間工事で要件が異なります。
施工体系図の掲示場所と掲示方法
  • 公共工事の場合
    工事関係者が見やすい場所と公衆が見やすい場所に掲示しなければならない
    公共工事入札契約適正化法第15条第1項)
  • 民間工事の場合
    工事関係者が見やすい場所に掲示しなければならない(法第24条8第4項)
これらの掲示義務を怠ると、発注者や監督署から是正指導や行政指導を受ける可能性があります。
特に公共工事では、公衆への可視化が求められるため、現場ゲート付近や掲示板への掲出が徹底されているかを確認しておくことが重要です。
事務員たなか

公共工事の場合と民間工事の場合で、
掲示義務が変わりますので注意してください。

施工体系図の書き方|記載内容・作成ルールを解説

施工体系図の概要や目的が分かったところで、次は具体的な書き方について解説します。
施工体系図は、工事に関わる建設業者の関係性や施工の分担状況を、樹形図の形式で表した図面です。

なお、建設業法では「法令上記載すべき事項が網羅されていれば、書式は任意」とされています。
そのため、実務では企業ごとに若干の違いがありますが、今回は代表的な形式として、国土交通省が示す標準様式に沿って記載方法を紹介していきます。
事務員たなか

いい加減、統一してくれ!
(100万回言ってる)

施工体系図枠外の書き方

発注者名

工事を発注した会社名を記入します。

工事名称

元請会社が担当する工事名称または工事内容を記入します。
工事名称例
  • 〇〇ビル新築工事
  • 〇〇街路築造工事

工期

元請会社が契約をした工事に必要な工期を記入します。「自」には工事開始日、「至」には工事終了日を記入します。

施工体系図左側の書き方

元請名・事業者ID

元請会社名を記入します。
建設キャリアップシステムに登録している場合は、「事業者ID」も記入します。事業者IDは14桁の番号です。建設キャリアアップシステムにて事業者登録した際に、ハガキやメールで通知が来ていると思うので、確認してください。

監督員名

下請企業を監督するために監督員を置く場合は、監督員の氏名を記入します。

監理技術者・主任技術者名

監理技術者または主任技術者の氏名を記入します。
主任技術者、管理技術者の設置要件
  • 主任技術者
    建設業者(許可業者)は、請負⾦額や元請・下請に関わらず、必ず主任技術者を設置しなければならない。
  • 監理技術者
    発注者から直接⼯事を請け負い(元請)、かつ5,000万円(建築⼀式⼯事の場合は8,000万円)以上を下請契約して施⼯する特定建設業者にあっては、主任技術者に代えて監理技術者を設置しなければならない。
事務員たなか

つまり、民間工事で施工体系図を作成しなければいけない時点で
監理技術者を設置しなければならないってことか…

事務員たなか

主任技術者や監理技術者になるには、
特定の資格や実務経験を有していないといけない
から大変だなぁ…

主任技術者・監理技術者について、詳しくはコチラ!

監理技術者補佐名

監理技術者補佐の氏名を記入します。
一定の条件を満たし、監理技術者が複数の現場を兼務する場合には、監理技術者補佐を配置することで兼務が可能となる場合もあります。発注者によって、監理技術者補佐を配置できる条件が細かく定められている場合もあるので注意が必要です。

専門技術者名・担当工事内容

専門技術者を配置する場合は、専門技術者の名前と、専門工事の内容を記入します。
「土木一式工事」又は「建築一式工事」を受注し、その中で専門工事も自社で施工する場合は、専門技術者の配置が必要になります。

統括安全衛生責任者

統括安全衛生責任者の氏名を記入します。
下請負業者を含めて、常時50人(ずい道建設、橋梁建設など特定の仕事では30人)以上の労働者が就労する作業所で選任する義務があります。(労働安全衛生法第15条、同法施行令第7条)

統括安全衛生責任者について、詳しくはコチラ!

副会長

元請業者以外の下請けから選出された者の名前を記入します。
共同企業体では、企業体を形成している事業者の名前を記入します。

元方安全衛生責任者

元方安全衛生責任者の氏名を記入します。
元方安全衛生管理者とは、統括安全衛生責任者が選任される事業所において、技術的事項の管理、統括安全衛生責任者の補佐業務をおこなう人を指します(労働安全衛生法第15条の2)。

施工体系図右側の書き方

工事内容

表の縦書欄〇〇工事には、担当する工事内容を記入します。
記載例
  • 鉄筋工事
  • 塗装工事
  • 型枠工事
  • 足場工事

会社名・事業者ID

右側の一番左の列は、元請会社と下請契約を結んだ一次下請会社名を記入します。
建設キャリアップシステムに登録している場合は、「事業者ID」も記入します。事業者IDは14桁の番号です。建設キャリアアップシステムにて事業者登録した際に、ハガキやメールで通知が来ていると思うので、確認してください。

一次会社を記入した一番左の列から、右に行く毎に二次会社・三次会社と続きます。
記入する項目は、どの下請企業も同一です。

代表者名

代表者名を記入します。

許可番号

建設業許可の許可番号を記入します。

一般 / 特定の別

建設業許可の「一般建設業」「特定建設業」のどちらかを選択します。

安全衛生責任者

安全責任者名を記入します。
安全衛生責任者とは、労働安全衛生法に定められている事業所での安全を管理する人のことです。資格は特に必要ありませんが、建設業や造船業の特定事業に該当する混在作業においては、元請企業と下請企業の従業員の合計が常時50人以上の場合、現場に常駐している必要があります。

建設業では、職長や現場代理人・主任技術者と安全衛生責任者を兼任するケースが一般的です。

安全衛生責任者について詳しくはコチラ!

主任技術者・特定専門工事の該当

主任技術者の名前を記入します。
建設業者(許可業者)は、請負⾦額や元請・下請に関わらず、必ず主任技術者を設置しなければなりません。

また、公共性のある重要な建設工事(元請業者との請負金額が4,500万(建築一式工事の場合は9,000万)円を超える請負工事のうち戸建住宅を除くほとんどの工事のこと)の場合は、他の工事現場に係る職務を兼務せず、常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事していなければなりません。(=専任)
※建設業法改訂により、令和7年2月1日、4,000万円(8,000万円)から引き上げられました。

また、特定専門工事とは、下請代金の合計額が4,500万円未満の「鉄筋工事」または「大工工事又はとび・土工・コンクリート工事のうち、コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事」に該当する工事です。
該当する場合は「有」、それ以外は「無」を選択します。
※建設業法改訂により、令和7年2月1日、4,000万円から引き上げられました。
(特定専門工事の対象となる建設工事)
第三十一条 法第二十六条の三第二項の政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 大工工事又はとび・土工・コンクリート工事のうち、コンクリートの打設に用いる型枠の組立てに関する工事
二 鉄筋工事
2 法第二十六条の三第二項の政令で定める金額は、四千五百万円とする。
建設業法施行令 「第三十一条」

専門技術者・担当工事内容

専門技術者を配置する場合は、専門技術者の名前と、担当工事の内容を記入します。
「土木一式工事」又は「建築一式工事」を受注し、その中で専門工事も自社で施工する場合は、「現場ごと」「担当する業種ごと」に専門技術者の配置が必要になります。

工期

建設工事の契約書に記載された工期を記入します。

総括:施工体系図の掲示は義務?作成ルールと現場で求められる対応・是正指導リスクも解説

施工体系図について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
配置しなければならない技術者や責任者の種類が多く混乱してしまうこともありますが、下請負企業から提出される安全書類(下請負編成表)を元に作成することができるので、確認しながら転記する作業となります。

ただし、下請負企業も記入の仕方が怪しいところがありますので、要点はしっかり確認したほうが良いかもしれません。特に配置が義務付けられている役職については、しっかり確認してくださいね。

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