建設業の見積書や取引の中でよく見かける「NET価格」や「NET金額」という表現。なんとなく使っているものの、「正確な意味はよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。
とくに、掛け率や割引率などとの関係が絡んでくると、「この金額は税込?割引後?どこまでがNET価格なの?」と混乱しがちです。
この記事では、建設業界で使われるNET価格の意味や背景をはじめ、掛け率との関係性や見積書の読み解き方まで、初心者にもわかりやすく解説します。実務でのトラブルを避けたい方や、営業・見積担当の方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
記事のポイント
- NET金額とは
- NET金額はどういうときに用いられる?
- 掛け率・仕入れ価格・仕切り価格・グロス価格の意味
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
建設・建築業で使われるNET金額・NET価格とは

- 建設業の「NET金額」「NET価格」とはどういう意味?
- 「掛け率」ってなに?6掛け・7掛けの意味とは?
- NET金額はどんな場面で使う?目的や使われ方に注意
- NET金額の計算式|どうやって計算すればいい?
- 「仕切り価格」「仕入れ価格」「グロス価格」…似た言葉との違いを整理
建設業の「NET金額」「NET価格」とはどういう意味?
「NET金額(ネットきんがく)」「NET価格」とは、もともと英語の“NET PRICE”に由来し、「正価」=かけ値なしの価格というニュアンスです。建設業や建築業界でよく使われる言葉で、「①諸経費や利益を含まない原価」または「②値引き後の最終価格」という二種類の意味で使用されます。
NET金額の意味
- 諸経費や利益を含まない原価
- 値引き後の最終価格
どちらの意味かによって金額の解釈が変わるため、注意が必要です。

たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。
商品名 | 原価 | 積算掛率 | 見積価格 |
材料A | 1,000円 | 1.2 | 1,200円 |
材料B | 3,000円 | 1.2 | 3,600円 |
施工費 | 30,000円 | 30,000円 | |
値引き | △300円 | ||
合計 | 34,000円 ― ① | 34,500円 ― ② |
この場合、材料と施工費の合計原価①は34,000円になります。
材料費と施工費の合計見積価格は34,800円になり、ここから値引きを300円行った金額②は、34,500円。
この例からも分かるように、「NET金額」という言葉は、「商品やサービスの原価」を指す場合と、「値引き後の最終的な支払金額」を指す場合で意味が大きく異なります。どちらの意味で使っているかによって、金額の算出方法や見積書への記載内容が変わってくるため、注意が必要です。
双方で認識がずれていると、トラブルの原因になりかねませんので、不明な場合は確認することが大切です。
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「掛け率」ってなに?6掛け・7掛けの意味とは?


NET金額と並んで、「掛け率」という言葉の意味も覚えた方が良いかもしれません。この「掛け率」という言葉も、NET金額と同様に主に2つの使い方があります。
1つ目は、定価や原価に対する仕入価格の割合を示すものです。たとえば定価100,000円の材料を「6掛け」で仕入れる場合、実際の支払額は60,000円(100,000円 × 0.6)になります。資材の仕入れや積算時によく使われる表現です。
2つ目は、見積金額に対する値引き後金額の割合を示す意味で使われるケースです。たとえば見積金額500,000円に対し、値引き後のNET金額(②の意味)が450,000円であれば、「9掛け(90%)」と表現する場合もあります。
このように、同じ「掛け率」でも使う場面によって指している対象が異なるため、注意してください。
NET金額はどんな場面で使う?目的や使われ方に注意


NET金額とは、建設業界や商取引において「値引き後の最終価格」や「原価としての基準金額」を指す言葉で、目的によって使われ方が変わります。
たとえば、価格交渉の場面では「NETで57,000円まで対応可能です」と提示することで、「これ以上の値引きには応じられない」という限界価格(回答金額)を示す意味で使われます。複数の見積もりを取って比較する(相見積もり)際にも、他社の価格を根拠としてNET金額を再調整することもあります。
また、NET金額は見積金額の根拠を説明する際にも使われます。「定価の6掛けがNET金額で、そこに利益を10%上乗せして見積を出しています」といった形で、仕入価格に対する積算構成を説明する際の基準として用いられることもあります。これは、取引の透明性を示すうえで用いられます。
ただし通常の商談で「NET価格を教えてください」と直接尋ねるのは注意が必要です。文脈によっては「原価を教えてほしい」と受け取られ、信頼関係に影響する可能性もあります。NET金額は状況に応じて慎重に扱うのが望ましいでしょう。



お客さんから「NET価格教えてよ!」と言われることも
たまーにありますね…
NET金額の計算式|どうやって計算すればいい?


NET金額は、掛け率と元の金額(定価や見積金額)を使って算出することができます。
基本的な計算式は以下の通りです。
定価 × 掛け率 = NET金額
たとえば、ある資材の定価が100,000円で、掛け率が0.6(6掛け)の場合、NET金額は60,000円になります。
これは「仕入価格」として使われ、掛け率さえ分かっていれば誰でも計算可能です。
また、値引き後の金額から掛け率を逆算する場合には、次の式が使えます。
NET金額 ÷ 見積金額 = 掛け率
たとえば、見積金額500,000円の商品に対し、最終的なNET金額が450,000円であれば、掛け率は0.9(9掛け)ということになります。
建設業務においては、取引先との価格交渉や見積書の確認時にこれらの計算が必要になる場面も多いため、計算式を理解しておくことは重要です。
ただし注意したいのは、NET金額が単純に“仕入値”だけを指しているとは限らないという点です。
実務上では、仕入価格に加えて、直接経費や間接経費を含んだ「実質的な原価」としてNET金額を設定しているケースもあります。
そのため、自社でNET金額を算出する際には、「何を含めて計算するか」を社内ルールや積算基準に沿って整理しておくことが大切です。
見積金額の根拠として第三者に提示する場合も、「どの範囲のコストを含んだ金額か」を明確にできるようにしておくと、社内外での説明もスムーズに進みます。
「仕切り価格」「仕入れ価格」「グロス価格」…似た言葉との違いを整理


建設業界では、「NET金額」や「掛け率」だけでなく、「仕切り価格」や「グロス価格」など、似たような表現が多く登場します。これらの言葉は意味が重なる部分もありますが、実際には用途や立場によって異なる定義で使われます。
見積計算で使われる似た言葉
- 仕切り価格
- 仕入れ価格
- グロス価格
「仕切り価格」とは、メーカーが卸売業者や特定の得意先に提示する卸売基準価格のことです。基本的にはBtoB(企業間取引)限定で使われる用語で、定価よりも割安な“販売側の設定価格”といえます。
一方、「仕切り価格」と似た言葉で、「仕入れ価格」という言葉もあります。「仕入価格」は、買い手側が実際に支払う金額を指し、「仕切り価格」から値引きや諸費用(運賃、梱包費など)を加減した結果であることも少なくありません。仕切り価格が“提示額(売り手側)”であるのに対し、仕入れ価格は“実際の支払額(買い手側)”と覚えておくとわかりやすいかもしれません。
また、「グロス価格」は、税込・利益・諸経費などをすべて含んだ“総額表示”を指し、見積価格や契約金額として扱われるのが一般的です。
「グロス(gross)」とは本来「全体の」「総体の」という意味を持つ英語であり、ビジネスの現場ではグロス価格・グロス重量・グロス面積といった形で、合計値を表す言葉として幅広く使われています。
建設業界においても、グロス価格は顧客が実際に支払うべき金額=取引の最終金額を示しており、手数料(マージン)や管理費、税なども含めた総合的な価格設定を意味します。
一方、NET金額はそこから値引きや費用を差し引いた価格であるため、両者を混同しないように見積書上で明確に区別することが大切です。
それぞれの言葉が使われる立場や文脈が異なるため、言葉の定義と対象範囲を意識した使い分けが実務では求められます。
総括:【保存版】建設業のNET価格とは?掛け率との関係や見積金額の読み方も紹介
建設業界で日常的に使われる「NET金額」や「掛け率」といった用語は、見積作成・仕入交渉・契約金額の決定など、あらゆる業務に関わってきます。これらの言葉は、一見シンプルなようでいて、「原価」「値引き後価格」「最終回答金額」など、文脈や立場によって意味が異なることも少なくありません。
また、「仕切り価格」や「グロス価格」などの関連用語も併せて整理しておくことで、見積書や価格交渉における混乱を防ぐことができます。特にNET金額は原価の基準にもなりうるため、社内外で金額の意味をすり合わせる姿勢が重要です。
建設業の事務・経理担当者として、こうした基本用語の理解を深めておくことで、金額に関するやり取りの精度が上がり、業務効率や信頼関係の向上にもつながります。
「なんとなく」ではなく、「きちんと分かっている」状態を目指しておくと業務もスムーズになります。
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