近年、社会の変化や働き方の多様化に伴い、年少者(18歳未満)の就労がさまざまな業界で注目されるようになってきました。とくにアルバイトやインターン、職業体験など、若年層が早い段階で働く機会が増えています。
しかし、年少者の就労には法律で厳しいルールが定められており、安全管理が不可欠です。その一環として、事業者が提出する書類のひとつが「年少者就労報告書」です。
この記事では、年少者に関する法律や手続きの概要を踏まえながら、年少者就労報告書の具体的な内容から記入例までをわかりやすく解説していきます。企業や事業主の方だけでなく、年少者を雇用する可能性がある方や保護者の方にとっても役立つ情報ですので、最後までぜひご覧ください。
記事のポイント
- 年少者とは
- 年少者就労報告書とは
- 年少者就労報告書の提出は義務?
- 年少者就労報告書の書き方
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
年少者について

- 年少者とは
- 年少者の就労制限とは?
年少者とは
労働基準法では、満18歳未満の未成年者を「年少者」と呼びます。特に満15歳未満の子ども(児童)は、基本的に働くことが禁止されており、成長や学業に影響を与える仕事は厳しく制限されています。
一方、15歳以上18歳未満の年少者は、働くことはできますが、大人と同じように働けるわけではありません。深夜勤務や危険な作業は禁止されており、特に建設業では、高所作業や重いものを扱う仕事など、18歳未満ではできない業務が多くあります。
年少者は身体も心も成長の途中なので、長時間労働や夜間の仕事、強いストレスがかかる業務は避けるべきとされています。そのため、会社は年少者が安全に働ける環境を整え、学業に支障が出ないようにする責任があります。
特に建設現場では、年少者がどのような仕事ができるのか、どんな書類が必要なのかを事前にしっかり確認し、適切な働き方を考えることが大切です。
年少者の就労制限とは?
建設業における年少者の雇用を考えるうえで、避けて通れないのが「就労制限」です。労働基準法や労働安全衛生法などの関連法令では、年少者の健康と安全を守るため、いくつかの就労制限が設けられています。
以下に、特に注意すべき代表的な制限を紹介します。
年少者の就労制限
- 年齢による使用禁止
- 労働時間・休日制限
- 深夜業の禁止
- 危険有害業務への就労禁止
年齢による使用禁止
労働基準法では、満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまでの児童を原則として雇用できないと定めています。これは心身の健全な成長や学業を保護する趣旨に基づくものであり、映画・演劇など一部の特殊業務を除いて、たとえ短時間でも労働させることは法律違反となります。また違反が認められた場合、使用者には厳しい罰則が科される可能性があります。
(最低年齢)労働基準法 第五十六条
第五十六条 使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。
② 前項の規定にかかわらず、別表第一第一号から第五号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満十三歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満十三歳に満たない児童についても、同様とする。
労働時間・休日制限
年少者は、時間外労働や休日労働は禁止されています。 また、変形労働時間も原則禁止とされております。例外として、週40時間内で1日の労働を4時間以内に短縮する日を設け、他の日を最大10時間まで延長する方法や、1週48時間・1日8時間を上限とする1か月または1年単位の変形労働時間制が認められる場合もありますが、法令違反には厳しい罰則が伴うため、必ず遵守する必要があります。 参考:労働基準法 第六十条
深夜業の禁止
満18歳未満の場合、原則として午後10時から午前5時までの深夜業に就かせてはなりません。
(深夜業)労働基準法 第六十一条
第六十一条 使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満十六才以上の男性については、この限りでない。
危険有害業務への就労禁止

建設業において特に注意すべきは、危険有害業務への就労禁止です。
危険物を扱う作業や、高所作業、重量物の取り扱いなど、成人でも注意が必要な業務を年少者にさせることを制限するものです。建設現場では、高所に設置された足場の組み立てやアーク溶接などが典型的な危険作業として該当します。もし年少者がそうした作業に従事していることが発覚すれば、労働基準監督署から厳しい是正指導や、罰則が科されることがあります。
危険有害業務の就業制限又は禁止業務
- 重量物の取扱い業務
- 運転中の機械等の掃除、検査、修理等の業務
- ボイラー、クレーン、2トン以上の大型トラック等の運転又は取扱いの業務
- 深さが5メートル以上の地穴又は土砂崩壊のおそれのある場所における業務
- 高さが5メートル以上で墜落のおそれのある場所における業務
- 足場の組立等の業務
- 大型丸のこ盤又は大型帯のこ盤に木材を送給する業務
- 感電の危険性が高い業務
- 有害物又は危険物を取り扱う業務
- 著しくじんあい等を飛散する場所、又は有害物のガス、蒸気若しくは粉じん等を
- 悲惨する場所又は有害放射線にさらされる場所における業務
- 著しく高温若しくは低温な場所又は異常気圧の場所における業務
- 酒席に侍する業務
- 特殊の遊興的接客業(バー、キャバレー、クラブ等)における業務
- 坑内における労働
etc
(危険有害業務の就業制限)労働基準法 第六十二条、六十三条
第六十二条 使用者は、満十八才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
② 使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
③ 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
(坑内労働の禁止)
第六十三条 使用者は、満十八才に満たない者を坑内で労働させてはならない。

その他、賃金の支払や年齢証明書等の備付け等、年少者を雇う場合の既定がありますので、労働基準法を確認してください。
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年少者就労報告書について


- 年少者就労報告書とは
- 年少者就労報告書は義務?添付書類に注意!
- 年少者就労報告書の記入例を紹介
年少者就労報告書とは
年少者就労報告書とは、安全書類の一部として、満18歳未満の労働者(年少者)を現場に入場させる際に、その年齢や就労内容を整理し、責任の所在を明確化する目的で作成される書類です。
基本的に、氏名や生年月日・住所等を明記するものですが、元請企業によっては誓約書への同意・緊急連絡先・親権者後見人の情報記載が求められる場合もあります。
年少者就労報告書は義務?添付書類に注意!
年少者就労報告書は、労働基準法上は明確な規定がなく、いわゆる「提出義務書類」には当たりません。
しかしながら、建設現場では安全衛生管理を徹底するため、こうした書式を整備する企業や元請会社が多く、報告書によって年少者の就労条件や危険業務からの除外などを可視化し、事故を未然に防ぐねらいがあります。全建統一様式においては、様式4-2として整備されていますので、必要に応じてご確認ください。
なお、労働基準法第57条により、満18歳に満たない者については、その年齢を証明する戸籍証明書(住民票記載事項証明書)を事業場に備え付ける義務があります。これは現場でも同様に適用されますので、必ず提出するようにしましょう。
(年少者の証明書)労働基準法 第五十七条
第五十七条 使用者は、満十八才に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。
② 使用者は、前条第二項の規定によつて使用する児童については、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければならない。
年少者就労報告書の記入例を紹介


ここでは、年少者就労報告書の一般的な記入例を示しながら、作成時に押さえておきたい基本的なポイントを解説します。実際には現場の安全管理体制や元請会社の指示によって、求められる書式や記入項目が異なる場合がありますが、以下の記載例を参考に、必要事項を整理しておくことで手続きをスムーズに進められるでしょう。
テンプレートが統一されているわけではありませんので、現場の要件や実情に合わせて、柔軟にカスタマイズして作成してください。
工事名称
工事名称には、工事を実施する事業所の名称もしくは工事の名称を記入します。
記入例
- 〇〇〇管内 道路改良工事
- △△△ビル 新築工事
- ×××浄水場 ポンプ分解整備
所長名
所長名には、元請会社の現場代理人を記載します。



作業所名と所長名は、元請会社の情報を記載する部分なので、
元請企業から書類渡された時点で、既に記入されている場合も多いです。
会社名
自社の会社名を記入します。
事業者IDを入力する欄がある場合は、建設キャリアアップシステムの事業者IDを記載します。
事業者IDは14桁の番号です。建設キャリアアップシステムにて事業者登録した際に、ハガキやメールで通知が来ていると思うので、確認してください。
登録していない場合は、記載不要です。
代表者名
自社の代表者の名前を記入します。



ここから下は、年少者の情報を記入する欄です。
氏名・生年月日・年齢
18歳未満の作業員の氏名・生年月日・年齢(満)を記入します。
職種
「電気工事工」「機械工」「型枠大工」など、その作業員の役割を記入します。
作業内容
具体的な作業内容を記入します。
上述した通り、危険有害業務に該当する作業は厳しく制限されていますので、就労前に必ず確認してください。



書式によって、緊急連絡先の記入や誓約書への同意確認が行われる場合もありますが、特段難しい内容の書類ではありませんのでご安心を。
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総括:【記入例あり】年少者就労報告書とは?就労制限や提出義務についてわかりやすく解説!
建設業における年少者の雇用は、人材不足の解消だけでなく、将来を担う若い世代に現場の魅力を伝える貴重な機会となります。しかし、その一方で高所作業や重機の扱いなど、危険有害業務が多いことから、他産業以上に厳格な法律や手続きの順守が求められます。
年少者を安心・安全な状態で就労させることが、企業イメージを高めるだけでなく、若者の将来的なキャリア形成にも大きく寄与できるのです。
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