職場の安全管理において重要な役割を果たす元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者。この二つの役職は、現場全体の安全確保を担う上で欠かせない存在です。しかし、どちらも似たような印象を持たれがちで、その違いが明確に理解されていないことが多いのではないでしょうか。
本記事では、元方安全衛生管理者の役割や資格要件、必要となる場面を具体的に解説し、安全管理に関する知識を深めるお手伝いをします。この記事を読むことで、現場における安全衛生管理の全体像をより明確に把握できるでしょう。
記事のポイント
- 元方安全衛生管理者とは
- 統括安全衛生責任者とは
- 資格要件・配置要件の確認
- 元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者の違い
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
【わかりやすく】元方安全衛生管理者について


違いを比較する前に、
まずは元方安全衛生管理者について解説します!
- 元方安全衛生管理者とは
- 元方安全衛生管理者の資格要件
- 元方安全衛生管理者が不要なケースは?
元方安全衛生管理者とは
元方安全衛生管理者とは、建設業その他政令で定める業種の現場で、安全衛生管理を技術的・具体的に担当する責任者を指します。労働安全衛生法第15条の2に基づき、統括安全衛生責任者を選任した事業者は、元方安全衛生管理者も選任しなければなりません。統括安全衛生責任者のサポート・補佐を行いながら、下請企業との連絡・調整も担います。
(元方安全衛生管理者)労働安全衛生法「第十五条の二」
第十五条の二 前条第一項又は第三項の規定により統括安全衛生責任者を選任した事業者で、建設業その他政令で定める業種に属する事業を行うものは、厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、元方安全衛生管理者を選任し、その者に第三十条第一項各号の事項のうち技術的事項を管理させなければならない。
2 第十一条第二項の規定は、元方安全衛生管理者について準用する。この場合において、同項中「事業者」とあるのは、「当該元方安全衛生管理者を選任した事業者」と読み替えるものとする。
主な仕事内容は、作業場における労働災害を防止するための総合的な安全管理です。その役割は、安全協議会の設置・運営を通じた関係者間の連携強化や、作業間の調整、作業場所の巡視を行うことで、現場の安全性を確保することにあります。
また、労働者の安全衛生教育を指導・援助するほか、工程計画や機械設備の配置計画を作成し、法律違反がないよう関係者に適切な指導を行います。さらに、これら以外にも労働災害防止に必要な措置を講じることが求められます。
元方安全衛生管理者の仕事内容
- 安全協議会の設置・運営
- 作業間の連絡・調整
- 作業場所の巡視
- 安全衛生教育の指導・援助
- 工程・配置計画の作成と指導
- その他の労災防止活動
リンク
元方安全衛生管理者の資格要件


元方安全衛生管理者として選任されるためには、一定の資格を有していることが求められます。この資格は、労働安全衛生法第18条に基づき定められています。基本的に、学歴を基にした安全衛生分野での実務経験が条件となります。
元方安全衛生管理者の資格を得るためには、一定の教育を受けるだけでなく、実務経験が求められるため、簡単に取得できるものではありません。例えば、大学や高等専門学校で理科系統の課程を修めた場合、卒業後3年以上の建設工事における安全衛生実務経験が必要です。
学歴 | 建設工事の施工における 安全衛生の実務に従事した経験 |
大学又は高等専門学校における理科系統の正規の課程を修めて卒業した者 | 3年以上 |
高等学校又は中等教育学校において理科系統の正規の学科を修めて卒業した者 | 5年以上 |
大学又は高等専門学校における理科系統以外の正規の課程を修めて卒業した者 | 5年以上 |
高等学校又は中等教育学校において理科系統の学科以外の 正規の学科を修めて卒業した者 | 8年以上 |
普通職業訓練を修了した者 | 5年以上 |
高度職業訓練を修了した者 | 3年以上 |
規定する専修訓練課程の普通職業訓練を修了した者 | 6年以上 |
その他 | 10年以上 |
また、元方安全衛生管理者として初めて業務に従事することとなった場合、一定期間経過後(概ね5年ごと)、機械設備等に大幅な変更があった場合は、当該業務に関する能力の向上を図るための教育、講習等を受けるよう求められています。
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元方安全衛生管理者が不要なケースは?
元方安全衛生管理者の設置は、統括安全衛生責任者の設置が必要な現場で付随的に求められます。そのため、統括安全衛生責任者の条件を理解することが、元方安全衛生管理者が不要となるケースを把握する上で重要です。
統括安全衛生責任者は、建設業または造船業の特定事業の現場において、一定規模以上の混在作業が発生する場合に配置が必要となります。ずい道・圧気・一定の場所での橋梁工事等の場合は常時30人以上、その他工事の場合は常時50人以上の労働者が働く現場で配置が必要です。
小・中規模の工事で労働者が少ない場合は、統括安全衛生責任者の配置義務がなく、元方安全衛生管理者も不要となります。
統括安全衛生責任者についてくわしくはコチラ!
【わかりやすく】統括安全衛生責任者について


統括安全衛生責任者とは
統括安全衛生責任者は、建設業または造船業の特定事業の現場において、一定規模以上の混在作業が発生する場合に元請企業より選任する者を指します。労働安全衛生法第15条では、一定規模以上の混在作業においては、労働災害防止のため、元方事業者が統括安全衛生責任者を、関係請負人が安全衛生責任者をそれぞれ選任する必要があると定められています。


統括安全衛生責任者の役割は、元方安全衛生管理者を指揮しながら、協議組織の運営や作業間の連絡等、現場全体の安全衛生体制を統括的に管理することです。



統括安全衛生責任者については、下記の記事で詳しくまとめています。
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元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者の違い


- 元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者は何が違う?
- 元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者は兼任が可能?
元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者は何が違う?
元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者は、どちらも現場の安全を確保するために欠かせない役割を果たしますが、その職務内容や責任範囲・資格要件等には明確な違いがあります。
元方安全衛生管理者は現場で具体的な安全対策を実施する実務担当者であり、作業場所の巡視や危険箇所の改善、安全教育の指導、下請け業者との連絡・調整等、現場の細部にわたる安全管理を担当します。
一方、統括安全衛生責任者は、元方安全衛生管理者に指示を出しながら、現場全体の安全衛生体制を監督・調整する役割を担います。統括安全衛生責任者は全体を俯瞰し、各関係者が統一した基準で安全対策を実施できるよう調整する責任があります。
項目 | 統括安全衛生責任者 | 元方安全衛生管理者 |
役割 | 元方安全衛生管理者を指揮 現場全体の安全衛生体制を監督・監理 | 具体的な安全対策を実施する実務担当者 |
主な仕事内容 | 現場全体の安全衛生を統括的に管理し、 協議組織の運営や計画立案など広範な責任を持つ | 統括安全衛生責任者と関連請負人の間に入り、連絡・調整を行うことが中心 |
配置要件 | 建設業または造船業の特定事業の現場において、一定規模以上の混在作業が発生する場合 ※詳しくは下記に記載 | 統括安全衛生責任者を配置する場合必要 |
資格要件 | 特になし 管理経験や安全衛生に関する知識が求められる場合もある | 所定の教育課程修了と一定期間の実務経験が必要 |
この表を見ると、統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者の役割や責任範囲、配置基準の違いが明確にわかります。特に資格要件では、統括安全衛生責任者に基準がない一方、元方安全衛生管理者には学歴や実務経験が求められる点が大きな違いです。
現場に応じた適任者を選定する際には、元方安全衛生管理者の要件を事前に確認することが重要です。配置基準の違いを理解し、必要に応じて適切な人員を配置することで、安全衛生管理体制を強化することができます。
元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者は兼任が可能?
元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者の兼任について、明確な規定は見当たりませんでした。しかし、両者は現場に常駐し、それぞれ異なる役割と目的を持つため、兼任は避けた方が望ましいと考えられます。
統括安全衛生責任者は現場全体の安全衛生管理を統括し、元方安全衛生管理者は現場の具体的な安全対策を実施します。これらの役割は相互に補完し合うものであり、兼任することで業務負担が増大し、適切な安全管理が困難になるでしょう。
そのため、現場の安全衛生管理体制を効果的に機能させるためには、元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者を別々に選任し、それぞれの役割を分担することが必要です。
総括:元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者の違いを徹底解説!
元方安全衛生管理者と統括安全衛生責任者は、それぞれ現場の安全管理を担う重要な役職であり、異なる役割を持ちながら相互に連携して機能します。
本記事では、仕事内容や配置要件、資格要件の違いを明確にし、それぞれが現場全体の安全性を確保するために不可欠であることを解説しました。適切な配置と役割分担を理解し、安全衛生管理を効果的に行うことで、事故を未然に防ぎ、安心して働ける現場環境を築く一助となることを目指しています。
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