皆さんは「ご安全に!」というフレーズを耳にしたことはありますか?
建設業や製造業などでは定番の挨拶ですが、初めて聞いた人の中には「意味がよくわからない」「おかしくない?」と感じることもあるかもしれません。
本記事では、「ご安全に」という言葉に疑問を抱いている人へ、言葉の意味や起源・違和感の正体、目上の人への適切な使い方、そしてこの挨拶に込められた想いについて詳しく解説します。
記事のポイント
- ご安全に!とは
- 「ご安全に!」という日本語はおかしい?
- ご安全にのポーズやハンドサインとは
- 目上の人にご安全に!は使ってよい?
この記事を書いた人

事務員たなか(@tanaka_kodozimu)
建設業事務員のたなか(@tanaka_kodozimu)です。
元SEで安全書類作成をメインに、経理・総務・人事・IT土方なんでもやっています。
子ども二人の限界主婦。事務作業や子育てが少しでも楽になる情報を発信しています。
目次
「ご安全に」という挨拶はおかしいのか

- 「ご安全に」とは?その意味と起源・元ネタは?
- 「ご安全に」が広まった理由
- 「ご安全に」はどんなときに使用される?
- 「ご安全に」はおかしい?違和感を感じる理由
- 「ご安全に」のハンドサインやポーズとは?
- 「ご安全に!」は業界用語だから目上・目下の区別なし!
「ご安全に」とは?その意味と起源・元ネタは?
「ご安全に!」とは、主に危険を伴う作業現場で使われる挨拶で、「安全に作業を行いましょう」という願いが込められています。この言葉には、事故防止の意識を高めるとともに、相手の無事を願う思いやりの気持ちが含まれています。
このフレーズの起源は、ドイツの炭鉱夫たちが使っていた「Glückauf(グリュックアウフ)」という挨拶に由来しているといいます。「ご無事で」という意味を持ち、危険な坑内作業に従事する仲間の安全を願う言葉でした。
日本では、1951年、住友金属工業株式会社(現・日本製鉄)の大中副長が海外でこの言葉を知り、帰国後、社内での安全啓発策として導入しました。この挨拶は鉄鋼業界から建設業界や製造業、自衛隊、トヨタ自動車など大企業でも使われるようになりました。
このシンプルな6文字の挨拶には、「事故を防ぐための注意喚起」「相手を思いやる気持ち」「自分自身の安全意識の向上」といった大切なメッセージが込められており、現場で働く人々の安全文化の一環として定着しています。
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「ご安全に」が広まった理由
上述の通り、「ご安全に!」という挨拶は、住友金属工業の製鋼所で従業員の安全意識を高めるための啓発策として導入されました。その後、鉄鋼業界を中心に広がり、次第に建設業や製造業などの危険を伴う職場でも使用されるようになり、日本全国へと定着していきました。
近年、この挨拶が一般にも浸透してきた背景には、インターネット上で人気を博しているキャラクター「電話猫」・「現場猫」や「仕事猫」の存在が挙げられます。これらのキャラクターは、工事用ヘルメットをかぶった猫が「ヨシ!」と指差し確認をする姿を基本とし、建設現場あるあるネタで2018年頃からSNSなどで広まりました。 これらのキャラクターの普及により、建設業界などで使われていた「ご安全に!」という挨拶が一般の人々にも知られるようになったと考えられます。

か、かわ~~!
アラ還の社長も知っていたので、現場猫の影響力すごいです。



ちなみに、電話猫・仕事猫・現場猫とあり、元ネタと二次創作に分かれているそうです。詳しくは作者くまみねさんが解説してます!
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「ご安全に」はどんなときに使用される?


「ご安全に!」は、製造業や建設業等の危険を伴う作業現場で使われる挨拶ですが、具体的にどのような場面で使われるのでしょうか?
ご安全に!が使われる場面
- 作業開始前や朝礼時
- 安全教育終了時
- 退勤時や作業終了時
- 安全大会等のイベントでの唱和
工場や建設現場では、作業開始前の朝礼やミーティングで「ご安全に!」という挨拶が交わされます。これは、一日の作業を安全に進めるための意識を高める役割を果たし、作業員同士が互いに注意喚起し合う文化の一環となっています。



送り出し教育や新規入場者教育の最後に
全員で唱和する場合もありますね。
また、作業終了後や退勤時にも「ご安全に!」が使われることがあります。「お疲れ様でした、ご安全に!」と交わすことで、労いの気持ちを込める場合や、深い意味を意識せずとも建設業界では日常的な挨拶として定着しています。
安全大会などの場では、スローガンの唱和とともに「ご安全に!」を全員で唱和するケースもあります。こうした取り組みにより、安全意識の向上が図られ、職場全体の安全文化の定着にも貢献しています。
「ご安全に」はおかしい?違和感を感じる理由


一方、製造業・建設業に関わりのない方にとっては、「ご安全に!」という表現に、違和感を覚える方も少なくありません。耳慣れない言葉であるということはもちろん、敬語としての使われ方についても着目します。



私も最初に聞いたときは、違和感を感じました…
「安全」という言葉の使われ方・敬語の使い方から見る違和感
一般的な敬語のルールでは、 自分が行う「相談」や「提案」などには「ご」を付けない一方で、「案内」「説明」「紹介」など、相手に向かって一方的に伝える動作には「ご」を付けても問題ないとされています。このルールに当てはめると、「ご安全に!」という表現が一般的な敬語の使い方とは異なるのでは?と感じる方もいるのではないでしょうか。



とはいえ、「ご相談がございます」や「ご提案がございます」のように、謙譲語として「ご」をつけて用いられる場合もありますから、
日本語って難しい。
日本語の敬語表現では、 音読みの熟語には「ご」、訓読みの言葉には「お」 を接頭辞として付けるのが基本です。例えば、「ご案内」「ご承知」は音読みの熟語に「ご」を付けた例であり、「お考え」「お知らせ」は訓読みの言葉に「お」を付けた例です。「安全」は音読みの熟語であるため、「ご」を付けること自体は問題がないように思えます。 しかし「ご安全に!」という言葉にどこか違和感を覚えるのは、「安全」という言葉が人の行動ではなく、状態や環境を指すものだからではないでしょうか。敬語の「ご」や「お」は、通常、人に関わる行為や性質に使われることが多く、「ご活躍」「ご健勝」「ご成功」などの表現が一般的です。一方、「安全」は、人ではなく、状況を示す言葉であるため、「ご安全に!」が一般的な日本語の使い方とは異なると感じる人がいるのでしょう。
業界特有の挨拶としての「ご安全に!」
「ご安全に!」は、製造業や建設業などの危険を伴う作業現場で長年使われてきた挨拶であり、いわば 「業界用語」や「固有のフレーズ」 として定着したものです。これは、作業員同士が互いの安全を願い、注意喚起を行う目的で使用されてきました。そのため、一般的な日常会話ではあまり馴染みがなく、初めて聞く人にとっては違和感を覚える表現となっています。
「ご安全に!」を文法的に違和感があるからと否定するのではなく、「業界の文化として確立された言葉」として受け入れるのが最も納得のいく考え方かもしれません。方言のように、特定の環境では自然な表現として通じるものだと考えれば、不自然さも感じにくくなるでしょう。
ご安全に!のハンドサインやポーズとは?


「ご安全に!」は、言葉だけでなくハンドサインやポーズとともに使われることがあり、建設業や製造業では視覚的な合図としても活用されています。ジェスチャーを組み合わせることで安全確認の意識を共有する役割を果たします。
ハンドサインは 企業や業界によって異なるのが特徴です。例えば、 軍隊式の敬礼 を行う会社もあれば、 親指と人差し指を丸くつなげるOKサインを用いるところもあります。ピースサイン(Vサイン)を軽く掲げるスタイルを取り入れている企業もあり、それぞれの職場で独自の「ご安全に!」の表現方法が確立されています。
また、安全大会や朝礼などの場面では、全員で「ご安全に!」の掛け声とともに、指定されたハンドサインを取ることもあります。こうしたジェスチャーは、単なる挨拶にとどまらず、 職場の安全文化を浸透させ、従業員同士が常に安全意識を持つための仕組みとして機能しているのです。
「ご安全に!」は業界用語だから目上・目下の区別なし!


「ご安全に!」は、建設業や製造業などで使われる業界特有の挨拶 であり、目上・目下の区別なく使用されるのが特徴です。これは単なる敬語ではなく、 スローガンのような決まり文句として定着しているためです。
「ご安全に!」は、朝でも夜でも、作業開始時でも退勤時でも、状況を問わず同じ言葉が使えます。これは、「おはようございます」や「お疲れ様です」のように時間帯や相手の立場によって変化する一般的な挨拶とは異なり、 常に一貫した表現で安全意識を共有するための言葉だからです。そのため、 上司や先輩に対しても「ご安全に!」とそのまま返して問題ありません。逆に、「ご」を外して「安全に!」と言うことはなく、目下の人に対しても同様に使われます。
職場によっては、「ご安全に!」を朝礼や安全大会で唱和することもあり、スローガンとしての側面も強いのが特徴です。このように、「ご安全に!」は 業界内での文化として確立された表現 であり、 目上・目下の概念を気にせず、そのまま使うことが正しいマナー となっています。
総括:【業界常識】「ご安全に!」って本当はおかしい?違和感の正体や意味・由来まで徹底解説!
「ご安全に!」は、もともと鉄鋼業界の安全啓発策として生まれ、建設業や製造業などの危険を伴う職場で広がり、今では業界の安全文化の一部となっています。この言葉には、 「お互いに気をつけよう」という注意喚起 や 「無事を願う思いやり」 が込められており、単なる挨拶を超えた意味を持っています。
一方で、文法的な違和感を覚える人もいますが、「ご安全に!」は業界特有のスローガンのようなものであり、敬語のルールに厳密に従う必要はありません。指差し呼称の「ヨシ!」と同様に、安全意識を高める決まり文句として使われています。
さらに、近年では「現場猫」や「仕事猫」の影響で、一般の人々にも「ご安全に!」が知られるようになりました。これからも、安全文化を支える大切な言葉として、さまざまな場面で使われ続けていくでしょう。
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