建設業界でのキャリアアップを目指す方や転職活動中の方にとって、「建設業経理士」という資格は非常に有力な選択肢の一つです。しかし、中には「建設業経理士は意味がないのでは?」と疑問を抱く方もいるかもしれません。
本記事では、建設業経理士の概要や難易度、日商簿記との違いについて解説しならが、この資格の価値や取得のメリットについて考察します。
また、経理未経験の私が3カ月で2級に合格した際の勉強方法や、おすすめのテキストについても詳しくご紹介します。
この記事はこんな人におすすめ!
- 建設業経理士を受験するか迷っている人
- 建設業経理士は意味がないのでは?と思っている人
- 勉強方法・勉強時間・おすすめのテキストについて知りたい人
- 知識ゼロからどう勉強すればいいか知りたい人
- 建設業経理士の概要を知りたい人
目次
建設業経理士とは?取得する価値はあるのか?

建設業経理士は、建設業に特化した経理・財務の専門知識を証明する資格で、建設業経理検定試験(建設業経理士検定)に合格することで取得できます。この資格は、建設業界の経理業務に必要な知識やスキルを持つことを示すものであり、業界内での評価やキャリアアップに有利とされています。
一方で、「建設業経理士は意味がないのでは?」という意見も存在します。その主な理由と管理人の反論を記述します。
意味がないのではと言われる理由
- 汎用性の低い?:建設業に特化しているため、他業界では直接的な評価につながりにくい。
- 知名度の低い?:日商簿記に比べて知名度が低い。
- 実務経験ありき?:資格よりも実務経験や実績が重視される場合が多い。
汎用性が低い?実は建設業に特化した強みが光る資格
建設業経理士は建設業界に特化した資格であり、そのスキルや知識は他業界では評価されにくいという意見があります。日商簿記のように多くの業種で活用できる汎用性がないため、資格取得のメリットが限定的だと考える人も多いようです。
確かに建設業経理士は特定業界に特化していますが、その特化性がむしろ強みとなります。
特に、建設業の公共工事を受注する際に行われる経営事項審査(経営審)では、建設業経理士2級以上の有資格者が在籍していることで加点対象となり、企業の信頼性向上や受注機会の拡大に大きく貢献します。
この点は、他の汎用的な資格にはない特徴で、受験者と企業の双方に大きなメリットをもたらします。建設業界で働く場合、建設業特有の会計処理や原価計算の知識は実務で直接役立つため、即戦力としても高く評価される資格です。
検定 | 名称 | 経営事項審査との関係 |
建設業経理検定4級 | 建設業経理事務士 | |
建設業経理検定3級 | 建設業経理事務士 | |
建設業経理検定2級 | 建設業経理士 | |
建設業経理検定1級 | 建設業経理士 |

経営審に関係があるのは2級からなので、
2級以上を狙っていきたいです。
さらに、特化しているからといって、建設業経理士が基礎的な簿記の知識を無視するわけではありません。むしろ、日商簿記と共通する基本的な会計知識も必要であり、それらを学ぶ過程で経理の土台となる力を養うことができます。
建設業経理士は「日商簿記とは全く異なるもの」というわけではなく、簿記をベースにした上で建設業特有の知識を深める資格です。そのため、日商簿記のように、どの業界でも活用できる知識を学びつつ、建設業界で求められる専門性も身につけられる点で、非常に有益な資格といえます。
結果として、建設業経理士を勉強することは、建設業界に特化したスキルを身につけるだけでなく、経理の基礎力を高めることにもつながり、他分野でも応用可能な知識を得ることができます。このように、特化性と汎用性をバランス良く学べる資格である点が大きな魅力です。
知名度の低い?実は業界内で高評価の資格
日商簿記や税理士などと比較すると、建設業経理士の知名度は低く、転職市場や他業界では資格の価値が十分に認知されていないという指摘があります。
確かに日商簿記と比べると知名度は低いものの、建設業界内では広く認知されており、建設業界に関わる企業では非常に評価の高い資格です。建設業は専門性が求められる業界であるため、その業界に特化した資格である建設業経理士は、ニッチながら確固たる地位を持っています。また、上述した通り経営審での加点や建設業での必要性の高さから、企業の採用担当者や経営者にとってはその価値が十分に理解されています。
実務経験ありき?資格取得の価値と実務での強みをある
建設業界では、資格以上に実務経験や業績が重視されることが多いです。そのため、建設業経理士を取得しても、実務経験が不足していると評価が低いとされる場合があります。
実務経験が重視されるのはどの業界でも同じですが、資格を持つことで専門知識を体系的に学んでいる証明となり、実務での効率化や精度向上が期待されます。
また、資格取得はその人の努力や意欲を示すものであり、採用や昇進の際にプラスに働く場合が多いです。特に中小企業では、建設業経理士の資格があることで実務を任されやすくなるケースもあり、キャリアアップにつながります。



皆さんが思っている以上に、
建設業経理士は高い評価を受けている資格です。
ご理解いただけたと思うので、概要を説明します!
建設業経理士の概要


建設業経理士は、建設業経理検定試験(建設業経理士検定)に合格することで取得できる資格で、建設業における経理・財務の専門知識を証明します。試験は一般財団法人建設業振興基金が主催し、1級から4級までの等級があります。
経理検定 建設業 | 試験内容 | 試験日程 | 受験料 | (直近5回の平均値) 合格率 |
4級 | 簿記のしくみ 建設業の基礎的な経理知識 | 9月 | 4,720円 | 79.4% |
3級 | 建設業の簿記や原価計算 建設業の基礎的な経理知識 | 9月 | 5,820円 | 64.9% |
2級 | 建設業の簿記・原価計算・会社会計 建設業の経理実務に必要な知識 | 9月 3月 | 7,120円 | 39.1% |
1級 | 建設業原価計算・財務諸表・財務分析 上級の建設業簿記・会計学を修得し、 会社法の理解、経営分析が行える | 9月 3月 | 1科目:8,120円 2科目:11,420円 3科目:14,720円 | 28.6% ※全科目の平均 |
受験資格に制限はなく、誰でも受験可能です。
建設業経理士の合格率と難易度
表にも記載していますが、合格率は等級や年度によって異なります。
建設業経理士2級で約30~40%、1級では各科目20~30%程度とされており、一定の勉強時間を確保しないと合格は難しいのが現状です。
特に建設業経理士1級は「原価計算」「財務諸表」「財務分析」の3科目に分かれており、5年以内に全科目に合格する必要があります。一度ですべて受験することも可能ですし、1科目ずつの受験も可能です。いずれにせよ計画的な学習が求められます。
建設業経理検定2級と日商簿記2級の具体的な違い
日商簿記をまだ取得していない方にとって、建設業経理検定を受けるか日商簿記を受けるか迷う方も多いでしょう。
建設業経理検定2級と日商簿記2級はどちらも経理の知識を問う資格ですが、以下の点で違いがあります。
建設業経理検定2級と日商簿記2級の違い
- 勘定科目
- 収益の認識基準
勘定科目
勘定科目とは、お金の動きや経営状況を記録するための「名前」のことです。例えば、「物が売れたら『売上高』」「仕入れたものは『売上原価』」といったように、それぞれの取引内容に応じて分類します。
建設業では、工事に特化した特別な勘定科目が使われます。一般的な簿記でいう「売上高」は、工事が完成して得た収益を表す「完成工事高」に置き換えられ、「売上原価」は工事が完成するまでの費用を記録する「未成工事支出金」が使用されます。これらの科目は、工事の進捗や収益を正確に管理するために欠かせないものです。ただし、簿記の基本を理解していれば、特別難しいものではなく、スムーズに扱えるようになります。
収益の認識基準
建設業では、「工事進行基準」と「工事完成基準」という特別なルールで収益を計算します。日商簿記では、「商品が売れてお客さんに渡った時点」で収益を記録しますが、建設業ではこれとは異なる方法を用います。
工事進行基準は、工事の進捗率(出来高)に応じて段階的に収益と費用を計上する方法で、長期間にわたる工事に採用されます。一方、工事完成基準は、工事がすべて完了した時点で収益と費用を一括計上する方法で、短期間の工事に適しています。
試験では、どちらの基準も出題されます。特に工事進行基準では、進捗率を用いた計算問題が頻出です。実務でも、工期の長さに応じて適切な基準を選択するため、試験と実務の両方で重要な知識となります。



細かい違いはあるものの、
大きな簿記の仕組みはもちろん変わりませんのでご安心を。
日商簿記と建設業経理士どちらを勉強するべきか?



経理事務員にとって永遠の悩み
建設業界で働く予定がある場合
既に建設業界で働いている方、建設業界に興味があり転職を考えている方は、「建設業経理士2級」を取得することを強くお勧めします。上述した通り、建設業経理士は、個人のスキルの指標のみならず、企業にとっても大きなメリットがあり、採用に寄与する可能性が高いです。


建設業経理士2級は、日商簿記2級に比べて難易度が低い資格です。合格率は日商簿記2級が15~25%であるのに対し、建設業経理士2級は30~40%と高めです。
建設業経理士は、建設業界で広く認知されており企業にとっても有用性の高い資格です。難易度が日商簿記に比べて低い為、取得のコストパフォーマンスが良い点も魅力です。
求人数では日商簿記が優勢ですが、そもそも建設業経理士は取得者が少ないため、ライバルが少ないというメリットもあります。建設業界でのキャリアアップを目指す方には、非常に有効な資格といえるでしょう。
簿記の知識が全くない状態で建設業経理士2級に挑戦するのが不安な方は、まず日商簿記3級を受験し、簿記の基礎知識を身につけてからチャレンジするのも良いかもしれません。
建設業以外の業種で働く場合
建設業で働く予定がない方には、日商簿記の取得をおすすめします。日商簿記はオールマイティな資格で、知名度が高く、人事担当者にも評価されやすい点が魅力です。実際にハローワークの求人検索サイトで正社員の必要資格を調べたところ、建設業経理士2級は195件に対し、日商簿記2級は1,906件と、大きな差がありました。求人市場では、日商簿記が圧倒的に求められる資格であることがわかります。


ただし、日商簿記2級は建設業経理士2級に比べて難易度が高い資格です。日商簿記2級を目指してちんぷんかんぷんの場合は、まず3級から受験するのも一つの方法です。
日商簿記2級はやや難易度が高いですが、独学でも十分合格できる資格ですので、事務を目指している人はチャレンジする価値があります。
【ゼロから独学合格】建設業経理士2級の勉強時間と勉強方法


私が建設業経理士2級を取得した際の勉強方法をご紹介します。
業務に慣れてきた頃から本格的に勉強を開始し、昼休みや帰宅後の時間を利用して1日2~3時間、約3か月間集中して取り組みました。一切の予備知識がない状態からのスタートでしたが、計画的に勉強時間を確保することで、無事に合格することができました。
今回は、タイパ良く建設業経理士2級を合格した方法を紹介します。



Fラン大卒の私でも受かったので、
勉強時間さえ確保できれば受かります。
過去問をひたすら解く
まず購入したのは、市販のテキストと過去問題集です。
ただし、簿記がちんぷんかんぷんだからといって、テキストをだらだら読むことから始めると、頭に入らない挙句時間だけが途方にかかる状態になりますのでおすすめしません。
テキストは最初から読破しようとせず、過去問題集12年分を3回繰り返し解くことを中心に進めました。テキストは、問題集で答え合わせをする際にわからない単語や解説を調べるためだけに使い、内容をひたすら読む時間は省きました。一切の知識がない状態では、テキストを読み込むだけでも時間がかかるため、効率を重視した方法です。
これを買えば問題なし!
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「過去問3回繰り返しやれと言われても・・・」と、不安な方もいらっしゃいますよね。でもご安心を!
知識ゼロから取り組む場合、一巡目はさっぱり分からないです。問題を眺めて、答えを見て咀嚼するという流れを行うので過去問1回分を解くのに120分=2時間程度かかります。12回分やるとすると、24時間かかります。1日2時間勉強するとなると、かかる日数は12日間です。
二巡目になると答えを見なくても少し解けるようになります。第一問の仕訳問題、第二問の計算問題は少しずつ正答率があがりました。過去問1回分だいたい90分程度で解けるようになるので、12回分で18時間かかります。1日2時間勉強するとなると、かかる日数は9日間です。
三巡目ではほぼ解けるようになっており、自分の得意な問題苦手な問題もわかります。三巡目を取り組みつつ、苦手な問題を重点的に行うと正答率も上がってくるのでおすすめです。実際の試験だと思って、通しで問題を解いてみて、間違ったところの復習をしました。
三巡目は過去問1回分だいたい60分程度で解けるようになるので、12回分で12時間かかります。1日2時間勉強するとなると、かかる日数は6日間です
という塩梅で、毎日2時間ずつ勉強するとなると、過去問3巡するのにかかる日数は27日間となりました。「過去問3回もやる時間がない!」と思った方もいらっしゃると思いますが、時間にすると案外大したことないのです。毎日やれば1カ月もかからないで合格への道が切り開けるという計画です。
第1問の仕訳問題と第5問の精算表は特に重要!
特に重要なのは、第1問の仕訳問題と第5問の精算表問題。これらを繰り返し解き、満点が取れるレベルに仕上げることが鍵となります。
第1問の仕訳
まず問1の仕訳問題は、簿記の基礎とも呼べる基本問題です。基本問題ではあるものの、1問4点×全5問=20点という大きな得点源となる問題です。
仕訳問題の例
【問題】
ある材料を@1000円で600個掛けで仕入れ、保管した。なお、当該仕入れについては、3%の割戻を受けた。
【解答】
借方 貸方
材料 582,000 工事未払金 582,000
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まとめ
建設業経理士2級は、建設業界に特化した資格であり、日商簿記2級と比べて難易度が低く、取得のコストパフォーマンスが良い点が魅力です。特に、過去問題集を中心とした効率的な学習が合格への近道となります。簿記初心者の方は、テキストを活用して基礎を学びつつ、問題集で実践力を鍛えるのがおすすめです。一方で、簿記2級を持っている方やある程度知識がある方は、過去問題集のみでも十分対応可能です。
建設業経理士2級は、建設業界でのキャリアアップを目指す方にとって大きな武器となる資格です。過去問題集を繰り返し解き、効率的に学習を進めることで、合格を手にすることができます。ぜひ挑戦してみてください。